- eighter_rieko83
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【すれ違うモノ】 1 怒ることが苦手だ。 言いたいこと、相手にぶつけるのも。 だから全部自分の中に溜めちゃう。 彼はそんなわたしのこと分かってくれてて、「なんでもえぇから、言いたいこと今言うて?ほら、あるやろ?」なんて、聞いてくれる時間を作ってくれた。
2017-07-05 19:51:302 水曜日 『信ちゃん!プレゼンの書類忘れてるよ!』 「うわぁ!ホンマや!ありがとぉ、助かったわ。」 感謝の言葉ちゃんと言ってくれるところは付き合った頃から変わらず…好きだな…。 「おまえは?忘れもんないか?」 『ん、大丈夫。』 「ほな、鍵締めるで。」
2017-07-05 19:51:333 わたしがモタモタと靴を履くのもちゃんと待ってくれる。 「それ、履きにくいんちゃうか?新しいの買ったらえぇのに。」 『気に入ってるの!』 カワイイって褒めてたくせに。 並んで駅へ、そして同じ電車に乗って、同じ会社に出勤する。 《相変わらず仲良しさんやなぁ~。》
2017-07-05 19:51:374 『マルちゃんおはよう!』 「おぉ、マルおはよ~。」 丸山くんは同期で仲良し。 《おっはよ~♪信ちゃん、どぉ?資料できたぁ?》 「当たり前やろ。寝ずに作ったがな!」 『ぜーんぜん寝てたけどねぇ(笑)』 「言わんでえぇねん。」 そう、彼は忙しい…仕事持って帰る程。
2017-07-05 19:51:405 だから、最近構ってくれなくても、文句は言えないのだ…わたしもいい大人だし…。 仕事が終わり帰ろうとすると、彼が机を片付けてるわたしの隣へ。 「行ける?」 『あれ?今日は残業なし?帰れるの?』 「たまには早よ帰りたいがな。おまえのメシも久しぶり食いたいし。」
2017-07-05 19:51:446 うわ…そんなこと言われたのいつぶりだろ…。 《あら~羨ましい~!》 近くで聞いてたマルちゃんが、チャチャ入れに来た。 「せやろ。えぇやろ。おまえも早よ彼女作れ。」 そういえば、ホント謎。 マルちゃん、社内でも人気あるのに…なんで彼女いないんだろう。
2017-07-05 19:51:477 3人並んで会社を出た。 2人の会話を聞きながら、何作ろかな…張り切らないと、って顔が緩むのを必死に抑える。 その時、課長から呼び止められる信ちゃん。 あ…もしかして…。 「すまんすまん、課長から飲み行こ言われてもーた。」 やっぱりね…。
2017-07-05 19:51:518 『ん、いってらっしゃい。』 「ホンマに…すまんな…。」 『いーからいーから!はい、行った行った!』 課長の元へ走ってく信ちゃんを、笑顔で見送る。 《えーのぉ?あーんなあっさり許してもーて。》 『当たり前でしょ?上司のお誘い断らせるわけにいかないじゃない。』
2017-07-05 19:51:559 《せやけどさぁ…。さっきも“久しぶりに”…みたいなこと言うてたやん。最近一緒にごはん食べてないんやないの?》 『ん…まぁね…残業続きだったし…この前のお休みは接待ゴルフに行ってたし…あまり一緒にいないかなぁ…。あ、朝は一緒ですけどね~(笑)』
2017-07-05 19:51:5910 《せっかく一緒に暮らしとんのに…。付き合ってどれくらいやっけ?》 『えっと…4年…かな…。』 《結婚せーへんの?》 『それは…信ちゃんに聞いてよ(笑)』 30過ぎて、わたしは正直結婚したいと思ってるけど…信ちゃんは結婚願望が無さそうだ…。
2017-07-05 19:52:0211 いつだったか、上司に聞かれて「結婚なんかまだまだですよぉ!(笑)」って笑い飛ばしてたもんね…。 《なっ、メシ行こか?奢るで♪》 『いいよぉ…信ちゃんに怒られちゃう(笑)』 《なんでよ。メシだけやで?ちゃんとタクシーにも乗せるから。》
2017-07-05 19:52:0612 …そうだよ…わたしだって、たまには…。 『…やっぱり…行こうかな…。』 別にマルちゃんと何かあるわけじゃないし…。 《よっしゃ!何食べたい?》 マルちゃんは、その後もずっと紳士で優しかった。 タクシーも拾ってくれて、タクシー代も渡されて…。
2017-07-05 19:52:0913 《ほんならまた明日、会社でな♪》 ほんとにちょっとだけ…、ちょっとだけ考えた…。 マルちゃんと付き合ったら、寂しくなくなるかな?って…。 ちがう。 そうじゃない。 付き合うとか、そういうのじゃない。 わたしは信ちゃんが好きで、だから付き合ってるし、一緒に暮らしてる。
2017-07-05 19:52:1314 今が寂しいだけで…そんなこと考えてしまうなんて…。 ゆっくりとお風呂に入り、今日も2人の部屋で1人先に眠りにつく…。 でも、彼の身体の重みで目が覚める。 あ…信ちゃん帰って来たんだ…。 『しんちゃ…、』 お帰りって言おうとしたら、口を塞がれた。
2017-07-05 19:52:1615 そのまま舌が入って来て、イヤらしくキスされながら、着ているものもあっという間に脱がされた。 信ちゃん…酔ってるんだな…、なんて、どこか冷静に考えてる自分。 求められるのは嬉しい。 無理矢理意識を戻された身体も、敏感に彼を感じ取ってる。
2017-07-05 19:52:2016 普段よりも早くひとつになって…でも、普段よりも激しい彼にわたしの身体は従順に応えて…。 『んっ…あ…だめ…っ、』 「ん…俺も…もぉアカン…っ。」 信ちゃん…酔っていても…冷静なとこあるんだなぁ…。 お腹の上に広がるのを感じて…そんなこと考えるわたしもおかしい…。
2017-07-05 19:52:2517 一緒に住む時、ベッドはひとつか、ふたつにするのか、少し喧嘩した。 わたしは一緒に寝たくて…信ちゃんは嫌がったけど、今ではこうやって2人で寝るのがとても自然。 ベタベタするのが苦手な信ちゃんが、わたしを背中から抱きしめて寝てること…目覚めた時とても幸せを感じる。
2017-07-06 21:10:0418 木曜日 今日はわたしの誕生日…。 彼はきっと忘れているけど、今日は一緒にごはんくらい食べたいなぁ…。 「ほれ、おまえこっち来い。」 いつものように電車の中で、わたしを前に立たせると、わたしを守るように後ろに立つ。 『ねぇ、信ちゃん?』 「んーなんや?」
2017-07-06 21:10:0719 首を捻って彼の顔を見る。 『今日、早く帰れそう?』 「今日は大丈夫やろ。なんでや?」 『んー…今日は一緒にごはん食べたいなって…。』 「おん、全然えぇよ?…どっか食いに行くか?」 『えっ!いいのっ?!』 「えぇよ。なんや、外食したかったんかいな?」
2017-07-06 21:10:1020 『いや…まぁ…最近一緒にごはんどころか…どこにも行ってないし…。』 誕生日だし…。 「あ~そやなぁ~うん、すまんな…よし、今日は行こな!なんや食いたいもん考えとき。」 『うんっ!』 やったぁ~♪ すごい嬉しいなぁ…! 「ニヤニヤすなよ(笑)」
2017-07-06 21:10:1321 そんなの無理だよ~ニヤニヤしちゃう! 仕事中もどこ連れてってもらおっかなぁって、緩む顔を抑えながら考えた。 お昼休憩から戻ると、マルちゃんから指摘を受けてしまった。 《なぁに、ニヤニヤしとんの~(笑)》 『えっ!し、してないよ!』 《あ、今日えぇことあるんやぁ?》
2017-07-06 21:10:1622 『べっ、別にっ?』 《ふふ、そりゃそーやんなぁ…今日はお誕生日やもんなぁ?おめでとさん♪》 『マルちゃん…!覚えててくれたのっ?!』 《覚えてるよぉ♪俺女の子のお誕生日は聞いたら忘れへんねん♪》 『あはは!マルちゃんらしい!ありがとう!!』
2017-07-06 21:10:1923 《信ちゃんにお祝いしてもらうんやろ?良かったなぁ~。》 『お祝いってゆーか…食事に連れてってもらうだけなんだけどね…きっと誕生日ってことは忘れてるから…。』 《忘れてるっ?!アカンやん!ちゃんとお祝いしてもらわな!俺言うたろかぁっ?》 『いっ、いい!や、やめて!』
2017-07-06 21:10:2324 慌ててしまい、つい声が大きくなる。 『あっ…いや…わたしももういい大人だし、そんなお祝いするような歳でもないし…食事ぐらいできれば、それで幸せってことで…。』 《まぁ…俺が言うたらややこしいことなるか…。でも…いくつになってもお誕生日はお祝いするもんやで?》
2017-07-06 21:10:2725 『う…うん…ありがとう…。』 《これから信ちゃんと取引先行くねん。早よ終わらして上がらせたるからなっ?》 マルちゃんはそう言って、にっこりと優しく笑った。 そして、仕事が終わり、会社の入口近くで信ちゃんを待つ。 仕事長引いてるのかな…連絡ないけど…。
2017-07-06 21:10:30