【すれ違うモノ】

りえこ @eighter_rieko83

76 《なぁ…信ちゃんがなんであんなにも仕事しまくっとるか知っとる？》 『えっ…理由があるの…？』 《悔しいから言いたくなかってんけどなぁ…。》 『な、に…？』 《…早よキミと結婚したいからやで？》 『えっっ…？！』 《あーあ…言うてもぉたぁ…ふふ…。》

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77 知らなかった…ちゃんと考えてくれてたんだ…。 《さっ！行こか！実は信ちゃんから俺にもメール来ててん！いつもちゃんと返す俺が返事してへんから、きっと疑ってるで！(笑)》 黙って頷いて、マルちゃんの後について、部屋を出た…。

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78 マンションを出て、駅に向かおうとすると、その方向から真っ直ぐこちらに向かう彼が見えた。 『信ちゃん…。』 「やっぱり…マルんとこやったか…。」 《言うときますけど、何もしてませんよ！お預かりしていただけです！》

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79 「…当たり前や！…いや…当たり前やないけど…でも、例えなんかあっても…大事なもんは取り返す！」 あれから…探してくれてたのかな…スーツ…昨日のまんま…。 〈あんたが“信ちゃん”？〉 信ちゃんの正面に急にカワイイ女の子が現れた。 「はぁっ？」

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80 《えぇっ？！おまえっ！なんでおるんっ？！》 …マルちゃんの…知り合い…？ 〈どぉなの？“信ちゃん”なの？！〉 「はぁ…、」 ばっちーん！！ えっ！！！！！ その子が信ちゃんにビンタ…。 《うわぁぁぁぁ！！！何してんねーん！！》

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81 マルちゃんが慌てて彼女に駆け寄り、後ろから取り押さえる。 信ちゃんはボーゼンとしてる。 〈何やってんのよ！あなたがしっかり彼女を捕まえてないから、りゅーちゃんがいつまでたってもフラフラしてんのよ！！忘れらんないの！！〉 《こらぁっ！何言うてんねん！！》

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82 〈しっかりしなさいよ！！女はねっ、仕事で頑張られるよりも、傍に居てもらう方が何倍も嬉しいものなのっ！幸せなものなの！そんなこともわかんないのっ？バッカじゃないのっ？！〉 《えぇ加減にせぇよー！！ごめん、信ちゃん！コイツ連れてくから、後はしっかり頼むで？ほら、来いっ！》

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83 〈何すんのよー！りゅーちゃんっ！〉 《えぇから、早よコッチ！！》 暴れる彼女を引きずるように、マルちゃんはマンションに帰って行く…。 最後にわたしにごめんって口をパクパクしたのが見えた。 な…何が起きたの…？

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84 ２人が消えた場所を見て立ち尽くしてたから、目の前に来るまで信ちゃんが近付いてたのに気付かなかった。 やっと気配に気付いて顔を見ようと思ったら、もう彼の腕の中だった。 「ホンマに…ホンマにごめん…。」 『…もういいよ…。』 「えぇわけないやん…最低や俺…。」

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85 『…わたしもごめんね…はっきり言えば良かったのに…あんな高いお店に信ちゃん置いてきちゃうし…。』 「そんなもんこそ、どーでもえぇねん。最近…一緒に居てやれてへんかったし…前みたいに話を聞いてやることもできてへんかった…ちゃんと話できてたら、こんなことになってへんねん。」

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86 『もう…ホントにいいから…。』 「俺は知ってんのに…おまえが喧嘩できんとか、言いたいことうまく言われへんのとか…。」 『もういいってば…。』 彼の身体をギュッと押して、顔を見上げた。 信ちゃんが…泣きそうな顔…。 左頬が赤くなってる。 その頬にそっと手を伸ばした。

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87 『痛い…？』 「こんなもん…痛くもなんともないわ…。それよりちゃんと怒ってや。おまえも殴ってえぇで？言いたいこと、ゆっくりでもえぇからちゃんと言うて？」 『ううん…いい…。彼女が全部言ってくれたから…ふふ…。』

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88 「…気付いててん…マルがおまえに惚れとることも…でも妙な自信あって…。でも…簡単に壊れるもんなんやなって…大事にせんと…おまえは簡単に離れるって…、」 『全然簡単じゃないよ…連絡こなかったらどうしようって…怖くて携帯見れなかった…。』 「あほ…そんなわけないやろ…。」

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89 そう言って、またギュッと抱きしめられた。 『…帰ろ…？』 「…おん…。」 力は緩んだけど、腕の中でじっと見つめられる。 『顔忘れちゃってた？(笑)』 「あほか。痴呆症なってもこの顔だけは忘れへんがな。」 やっと笑った信ちゃんにキスされた。

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90 なんだか久しぶりの…優しいキス。 お互い少し照れちゃって…目線を外して笑った。 「よっしゃ、帰るか。」 『うん。』 自然と手を繋いだ。 「そこに車停めてんねん。どっか行くか？」 『…いい…早くウチに帰りたい。』 「そやな…。」

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91 『今日、安田さんとダイビングじゃなかったの？』 「そんなんいつでも行けるわ。」 『…うん…。』 「なぁ…ごめんやけど…なんかメシ作ってくれへんか？」 『もちろん、そのつもりだよ？』 「ホンマ？」 『この前食べたいって言ってくれたでしょ？』

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92 「おん…。じゃ…スーパーに寄るか？」 『うん！何が食べたい？』 「何でもえぇよ。」 『えー！なんでもいいが、いちばん困るんだよー？』 「やって、おまえの料理やったら、なんでもうまいもん。」 『んー…。何か安売りしてるかなぁ…？』 「高くてもえぇがな。」

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93 『だめだめ！切り詰められるとこは、ちゃんと切り詰めないと！』 「ふは…しっかり者の嫁さんになるな…。」 『えっ？！』 「ほいほい、車、乗った！」 助手席のドアを開けてくれた。 そして、自分も運転席に座るとすぐに発車させた。 「今度…旅行せぇへん？」

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94 『旅行？』 「おん…。」 『いいけど…どこに？』 「そのぉ…なんてーか…旅行ってゆーか…、」 モゴモゴしてる信ちゃん…珍しい。 「俺の地元やねんけど…。」 『地元…？』 まさか…。 それって…。 「旅行がてら…俺の親に…会うてくれへんか？」

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95 『…いいけど…。』 「そっか！よし、ほんなら今度な！」 これって…プロポーズなんだろうか…。 『信ちゃ…、』 「よっしゃ、着いたで！」 訊ねようとしたら、スーパーの駐車場に停まった。 降りて、なんだかご機嫌な信ちゃんと仲良く買い物をした。

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96 こんな普通の、当たり前のことも、すごく久しぶりで…彼にツラれてわたしもテンションが上がる。 『なんか、結構買っちゃったね(笑)』 「ええやん。余ったら明日のおかずにしたらえぇんやから。」 それって、明日家でごはんを食べるってことなのかな？ 『ん…そうだね。』

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97 程なく自宅の駐車場。 『１個持つよ？』 「えぇから、車の鍵閉めて？」 『うん…。』 「あと、エレベーターのボタン押して。」 『うん…。』 部屋の前に着く。 「鍵開けてー。」 『うん(笑)』 「…何笑ってんねん…。」 『別にー。』

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98 だって、なんかカワイイんだもん。 ニヤニヤしながら冷蔵庫に向かう。 食材を仕舞うにも側にいる彼。 『先に着替えてきたら？あっ、信ちゃん昨日お風呂入ってないんじゃない？わたし昼食の準備するから、入ってきたら？』 「…おん…せやな…。」 そう言うのに、じっと見てる。

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99 『………？何？』 「いや…ほな、入ってくるわ。」 『はーい。』 お休みの日に、信ちゃんの為にお昼も夜も食事を準備するなんて久しぶり。 野菜を切ってると、あっという間に信ちゃんがお風呂から出てくる。 『早くない？』 「そうか？いつも通りやろ。」

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100 そんなことないと思うけどな…。 『ねぇ？もう麺湯掻いていい？すぐ食べれる？』 「んー………。」 上半身裸のまま、後ろから抱きしめられる。 喧嘩の後とはいえ…今日の信ちゃんは…甘すぎる…。 「なぁ…メシ食う前に…せぇへん？」 『えっ…、な、何を…？』