夜恋*丸山

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まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

*夜恋 [この後飲みに行く人〜!] [はーい!] [あっ、私も〜] 盛り上がる後輩たちを横目に、私は帰り支度を始めた。 長い会議の後。 今日は金曜日だから、皆んな浮かれてる。 [先輩行かないんですかぁ?] 後輩が口を尖らせて言った。 『うん。今日は。』

2017-07-17 01:40:22
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

2 こうして、社交辞令でも誘ってくれる事を嬉しく思う。 本当は、少し行きたい気持ちもあるけど… でも、私が行ったら皆んなが気を遣うから。 親しみやすい先輩… だけど、若者に混じるにはちょっと気が引ける微妙な立場。 こういうのは、慣れっこだ。

2017-07-17 01:40:37
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3 まとめた書類をカバンに詰め込んで、会議室を出る。 『お疲れ様。』 [先輩、今度は行きましょーね!お疲れ様でしたー!] 『はーい。』 バタンッ ドアが閉まって、一呼吸。 私、笑顔を絶やさなかった。 偉い、偉い。 こうやって、自分を褒めないとやってらんない。

2017-07-17 01:41:01
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

4 この歳になって、彼氏なし。 周りはバリバリ働くキャリアウーマンと言うけれど… 歳の数が増えているだけで、本当は普通の女の子なんだけどな… 女の子、なんてもう言えないか。 --- エレベーターが来るのをボーッと待っていると、誰かの走って来る音が聞こえた。 「先輩」

2017-07-17 01:41:25
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

5 『丸山くん。』 「忘れ物ですっ。」 息を切らしながら、私のスマホを渡す。 鳴らないスマホなんて、持っていても意味が無いんだけどね。 『あ…ごめんごめん、ありがとう。』 受け取ってカバンにしまった。 「あれ…先輩、打ち上げ行かないんですか?」

2017-07-17 01:41:57
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

6 『うん。私は大丈夫。 皆んなで楽しんでおいで。』 「えー…残念やなぁ。 先輩と飲みたかったのに。」 丸山くんが肩を落とした。 『ふふっ、気にかけてくれてありがとうね。』 そう言った時、ちょうどエレベーターが階に辿り着いた事を知らせる音が鳴った。

2017-07-17 01:42:20
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7 『じゃあ、また。』 お得意の笑顔を彼に向け、エレベーターに乗ろうとした時、 「あ、待って!」 と、彼が突然私の腕を掴んだ。 『…?どしたの?』 「…」 聞いても何も答えない。 しばらく止まっている間に、エレベーターは下の階へと行ってしまった。

2017-07-17 01:42:47
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8 それを確認すると、丸山くんは言った。 「…先輩が行かないなら、俺も行くんやめようかなぁ。」 『え、どうして? 行ってきなよ。』 「う〜〜ん…… やっぱやめた!先輩、ちょっと待っててくださいね。」 と、また会議室の方に走って行ってしまった。 …どういう事よ。

2017-07-17 01:43:19
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9 少しの間待っていると、帰り支度を済ませた彼が戻ってきた。 「お待たせしました! さ、行きましょか!」 『どこへ?』 「いいから。いいから。」 2人を乗せたエレベーターが動き出す。 --- 気付くと、私は丸山くんの横に並んで歩いていた。

2017-07-17 01:43:36
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10 彼は、他愛もない話をベラベラ私にしてくる。 これって…どういう状況? 『丸山くん、どうして打ち上げ行かなかったの?』 「… たまにはいいじゃないですかぁ。先輩と話したかったんですよ。」 通勤リュックを子どもみたいに両手で持ちながら、彼が答えた。 『そっか。』

2017-07-17 01:44:01
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11 「先輩この後予定あるんですか?」 『特にないけど…』 「なら、飲みに行きません?それか、ご飯でも!」 嬉しそうに笑顔で言う丸山くんに、私なんかとで楽しいのかと疑問に思いつつ… 『お腹空いてるから… ご飯がいいかなぁ。』 「よっしゃ! かしこまりましたっ。」

2017-07-17 01:44:25
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12 --- 私たちはラーメン屋に入った。 「先輩、いいんですか? ほんまにラーメンで。」 『うん!ずっと食べたかったの。』 「ならええけど…」 丸山くんの提案は、お洒落なレストランとかカフェとかだったけれど… 私が押し切ってラーメン屋にしてもらった。

2017-07-17 01:44:41
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13 テーブル席に向かい合って座る2人。 こんなまじまじと丸山くんの顔見るの初めてかも… 職場の女子皆んなから人気のある理由が分かる気がする。 私にはない、キラキラした感じ。 若いっていいなぁ。 「…?なんか顔についてます?」 お冷を片手に、上目遣いで聞く。

2017-07-17 01:45:04
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

14 『ううん。何でも。』 なんや〜、と、何もなかった事に残念そうな彼。 コロコロ変わる表情に、思わず笑顔になる。 なんか、子どもみたいで可愛いと思ってしまう。 「先輩って、彼氏いますか?」 突然の質問に、お冷を吹き出しそうになった。 「えっ、何で?笑」 『いや』

2017-07-17 01:45:22
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

15 『そんな質問久しぶりすぎて…』 皆んな気を遣って聞かない。 イコール、女として見られてないって事。 こんな事聞かれたの、いつぶりだろう。 「失礼でした?」 『いや、逆に嬉しいかも。笑 いないよ。』 「え、そうなんや! めっちゃいそうやけど。」

2017-07-17 01:45:44
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

16 社交辞令でもお世辞でも、そんな事言ってくれるなんて… 『丸山くんは優しいねぇ。 お世辞でも嬉しい。』 と微笑むと、 「…お世辞と違いますよ。」 と真剣な顔で答えた。 『え?』 「あ…いや、 先輩きれいやのに、勿体無いなぁと思って。」 pic.twitter.com/OxM0N8F4sQ

2017-07-17 01:46:34
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まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

17 10歳も歳が離れている後輩でも、こんな事を言われると普通に照れてしまう。 『…やめてよ。』 「…先輩、照れてる。 めっちゃ可愛い。」 『年上をからかわないでよ。 あ、ほら!ラーメン来た!』 ちょうど良いタイミングでラーメンが来て良かった。

2017-07-17 01:46:45
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

18 これ以上会話を続けていたら、勘違いしてしまいそうで。 恋愛にブランクがあり過ぎるってのも怖いな。 そんな事を思いながらラーメンを夢中ですすった。 --- 「はぁー!美味かった。」 『だね。』 ラーメン屋を出ると、空には月がきれいに浮かんでいた。 pic.twitter.com/qv0nkQ2Vfn

2017-07-17 01:47:06
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まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

19 少し歩き出したところで、丸山くんが静かに口を開いた。 「あー、もっとこうしてたいなぁ。」 『こうって?』 「先輩とご飯行ったり、話したり、って事です。」 …ほんと口が上手いなぁ。 同年代なら、危うく落ちてしまうところだわ。 「ねぇ先輩。」

2017-07-17 01:47:41
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

20 「年上の人を口説くのって、どうしたらいいんですかね?」 と言いながら、私の方を向いた。 なるほどね。 だから今日私に相談したかった訳だ。 『ん〜、そうだね… そのままでいいと思うけど。』 「えー?」 『だって、私でも落ちそうになるくらいだったよ。』

2017-07-17 01:47:55
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

21 『きっと丸山くんなら誰でも好きになってくれるよ。』 「今の言葉、ほんまですか?」 『うんっ!自信持って!』 良い先輩ぶって、彼の肩を叩いた。 「なら…」 『ん?』 「なら、好きになって。」 『…え?』 「それがほんまなら、 僕の事好きになってください。」

2017-07-17 01:48:25
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

22 …どういう事? いつもヘラヘラしてる丸山くんが、表情を変えずに真っ直ぐ私を見てくる。 「先輩の事が、 好き…です。」 そう小さな声で言った彼が俯いた。 私の中に、うわっと湧き上がる忘れかけていた気持ち。 心臓が飛び出しそうな、ある夜のことでした。 END pic.twitter.com/NfB0kceo0h

2017-07-17 01:48:47
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