怪談乱舞 #kaidan_rnb 2夏目　第一回　まとめ。

数寄屋＠鈍色スイッチ @suquiya

さてそれでは、次の語り手さんは@sa__za_n_ さんです。よろしくお願いいたしますー。 #kaidan_rnb

数寄屋＠鈍色スイッチ @suquiya

なお語り手さんはまだまだ募集中ですぜ！ #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

怖い話か――。蜂須賀虎徹は浦島虎徹に乞われると、麗しい顔を少し困った顔にして首を傾げた。 「蜂須賀兄ちゃんはこの本丸で一番長いんでしょ？ 一番出陣回数も多いし、なにか面白い話を知ってるかなって。この前、脇差のみんなで怪談話をしたんだ」 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

「そりゃあ、にっかり青江が一番だったんじゃあないのかい？」 　そういうと、浦島はむっとした顔で頷いた。 「すっごい怖かったよ。にっかりさんのお話！ でも、おれもみんなを怖がらせられるような話がしたくってさ！」 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

話を乞う浦島に、蜂須賀は少しの逡巡のあとで頷いた。 「おれだって虎徹の真作として長いもの。怪談話の一つや二つは聞いたことはあるよ。でも、そうだな……」 　おれが人の体をもってから経験した、変な話を離そうか。 　そういって、蜂須賀は話を始めた。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

あれは、まだこの本丸が出来てすぐのことだったと思う。 　浦島ももう何度も使っていると思うけど、あの時空移動の機械があるだろう。――そう、あの機械だよ。今は随分と　難しくてしっかりしたものになってるけど、本丸が出来たばかりのころはもっと杜撰なものだったんだ。#kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

時間を遡れるのは刀の二、三振りだけでね。主がどんなに精密にしようとしても、時間遡行の場所や時間を細かく指定することはできなかったんだ。時には遠征でもないのに一ヶ月以上、その時代に滞在することもあったし、十里は離れた場所に就いてしまうことだってあった。#kaidan_rnb

数寄屋＠鈍色スイッチ @suquiya

ほむ…。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

何度も何度も同じ時代でやり直しをしたりね……。この時代に戻るにも、決まった時間の決まった場所でないと戻れなかったりした。#kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

うん、今のシステムから考えると想像もつかないだろうね。あの頃を知ってるのは、古参の刀たちだけだろう。結構すぐに改善されたから。だから、きっと物珍しいんじゃないかなあ。あの頃を知ってるのは、脇差しだと堀川くらいだと思うから。 そういう頃の――変な話だよ。 #kaidan_rnb

数寄屋＠鈍色スイッチ @suquiya

すこし・ふしぎ…！ #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

時間遡行軍との始まったばかりの時、あの不便な時間遡行機械から、今のものに変わるまでの間にね。何回も奇妙なことが起こったんだ。あの時にいたのは……愛染国俊や燭台切光忠かな。彼らに聞いてもいろんな話が聞けると思うよ。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

もしかしたら、話したくない出来事もあったかもしれないけどね。 ああ、浦島そんな顔しなくても大丈夫。いまから話すのはそういう話じゃあないよ。 ただ、おれにはよくわからない、今思うと不思議な話さ。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

あの時に、おれは一人で出陣をしていた。なんとか遡行軍の本隊を叩いて、這々の体で帰還場所に辿り着いた。情けない話だけどね。本丸に帰るための装置に触れて、おれはほっと肩の力を抜いた。やっと帰れると思うと心底嬉しかったよ。あの時は、一週間はあちらにいたからね。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

戻って仕舞えば一瞬の話だし、おれたちに時間はあってないようなものだから人間のように老いることはないとはいえ、時は刀にも平等に訪れる。疲れていたよ。 デバイスにおれ自身を照合して、起動させた。体が溶けていくあの感覚がして、おれは目を閉じた。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

目を開ければ、元の本丸にもどっていると信じてやまなかった。 でも──、おれが目を開けて見たのは灰色の空だった。曇りだったのかって？ いいや……そういうわけじゃない。なんていうんだろう、色を塗る前の紙のような……そういうかんじなんだ。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

そこは確かにおれの本丸だったよ。柱の傷も、間取りもね。おれの部屋もあったし、おれの部屋には当時のおれのお守りもあった。 でも、空は灰色で、本丸には誰もいないんだ。畳の匂いも、木の匂いも、なんの匂いももしなかった。あれは……。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

なんといえばいいかな、あれはおれたちがずっと居た場所に似ていたよ。資料館や博物館の、よく整えられた心地の良い空間によく似ていた。おれはひどく混乱したよ。別の世界に迷い込んでしまったかと思った。確かにおれの本丸なのに、全く別の色と匂いもに満ちていた。 #kaidan_rnb

数寄屋＠鈍色スイッチ @suquiya

位相が違ったか…？ #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

おれは何はともあれ、主を呼んだ。本丸には基本的に主が宿直しているからね。主が本丸を出る時はちゃんとおれたちに伝えてくれているし、その時はそんな話をとんと聞いていなかったから。 でも主はどこにもいなかった。しんと静まり返って、音さえしなかった。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

心地のいい湿度に温度は、おれの恐怖心を和らげたけれど──浦島、おれだってそんな不思議なことが起こったらびっくりするし、怖くだってなるさ。──ああ、思い出した。あの空間は、あれに似ていたよ。ほら、よくおれたちの横に並べられていた小さなお屋敷だよ。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

おれがどうしようもなくて困っていたその時だった。 けたたましいサイレンが、本丸中に鳴り響いたんだ。ほら、よく主のいじっている端末から鳴る警戒音だよ。聞き覚えがあるだろう？ 彩度のない灰色の本丸に、サイレンが鳴り響いた。ビービービーって。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

ああそうなのかい？あれは主の端末のエラー音なんだね。浦島はよく知ってるねえ。 ──そう、それが響いた瞬間にね、おれの前に変な男が現れたんだ。主がでかけるときに着るような洋装で、あれよりもずっとくたびれていた。彼はおれを見て頭を抱えたよ。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

「なんてことだ！ 危なかった……。こっちに貴方が入り込むなんて、ああよかった気がついて……。このまま更新していたら貴方が消えてしまうところだった」 独り言みたいにぶつぶつと呟いて、腕についた端末をちらちら見ながら彼はおれに近づいてきた。 #kaidan_rnb

さうす @sa__za_n_

「君は誰だい？」 「そのうちお会いすることもあるでしょうが……私はまだしがない見習いなので貴方に名乗ることはできません。これは結構なバグですからね」 彼は自分で納得したようだった。 「貴方は備前支部第3基地……ええと備前の本の蜂須賀虎徹さんですよね」 #kaidan_rnb