Orange cafe

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まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

*Orange cafe 夕方の静かなカフェ。 『じゃあ…カフェラテで。』 今日もレポートをやるフリをして、あの人を見てる。 素敵な素敵な、 憧れのあの人。 --- そのカフェを知ったのは、もうずっとずっと前。 学校帰り、いつも降りるバス停のすぐ近く。 pic.twitter.com/fkGv0FqHgY

2017-07-31 21:22:31
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まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

2 なんとなく入って、その人の姿を見た時… 私の心は完全にその人のものになった。 --- 「いらっしゃいませ。」 いつでも笑顔を向けてくれる、私の大好きな人。 丸山さん。 「カフェラテですね。 少々お待ちくださいませ。」 『ありがとうございますっ』 pic.twitter.com/pDUxPrv3wO

2017-07-31 21:22:51
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3 オーダー表をポケットにしまって、会釈して去っていく後ろ姿。 テーブルを片付けている時の横顔。 カウンターにいる彼と目が合って、目尻を下げながらお辞儀してくれる時。 彼の一つ一つの仕草や表情が大好きで。 ずっと見ていたくて。 …でも、私は彼の事を何も知らない。 pic.twitter.com/0hDwt55rob

2017-07-31 21:23:58
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4 下の名前は何? 趣味は?年齢は? どんな女性がタイプなの? 彼女は…いるの? 好きな色や、匂い、音楽、 彼の事だったら何でも知りたい。 何時間でも聞きたい。 …そんな事聞く勇気なんか全然ないけど。 --- 「お待たせいたしました。 カフェラテです。」

2017-07-31 21:24:15
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

5 彼が丁寧にコルクのコースターの上に飲み物を置いた。 『ありがとうございます。』 「…大学生ですか?」 『えっ!あ、は、はいっ』 …話しかけてくれた。 「いつも来てくれてますよね? 勉強大変そうですねぇ。」 トレーを後ろに持ちながら、彼が言った。

2017-07-31 21:26:05
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

6 『そ、そんなことないですっ!』 「…そっかぁ。 僕は勉強苦手やったから(笑) 頑張ってくださいね! ごゆっくり。」 『…はい。』 そう言って微笑んでお辞儀をして、戻って行った。 …なにをやってんの!私。 せっかく丸山さんが話しかけてくれたのに。

2017-07-31 21:26:32
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

7 絶対、ぽかーんとして変な顔してたし、ろくでもない返事しか出来なかった…。 頭を抱えてテーブルに突っ伏した。 『…無念。』 その時、カウンターでくすくす笑う声が聞こえた気がしたけど、 それは気のせいかな。 --- 『ごちそうさまでした。』 pic.twitter.com/s2jJqHRPQl

2017-07-31 21:26:47
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8 肩を落として帰ろうとした時、 「ありがとうございました! …また来てくださいね?」 と、お釣りを返す彼の手が一瞬私の手に触れた。 ガチャッ… 『はぁぁぁ…っよし!』 外に出てから、小さくガッツポーズ。 だってだって、 また来てくださいね?なんて…

2017-07-31 21:26:50
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

9 なんだか不思議…。 彼に一言声をかけられただけで、 笑顔を向けられるだけで、 こんなにも舞い上がる。 好き好き好き! 想いがこぼれ落ちそなほど。 でも、 どうやったらこの想い伝わるんだろう。 どうやったら彼に届くだろう。

2017-07-31 21:26:59
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

10 --- 今日はカフェ近くの居酒屋で、女子会。 “最近どう?” メニューに目を通しながら、友達が聞いた。 『どうって?』 “好きな人とか出来たの?” 『ん〜…まぁ…。』 “えっ!誰!?” 『えー…言わなきゃだめ?』 “何?勿体ぶって〜…”

2017-08-03 20:48:50
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

11 だって、 この恋が実る可能性ゼロに近いし。 『…相手の下の名前も、年齢も、なーんも知らないのっ! 全然話した事もないし…』 でも…好きなの。 “え!益々気になる! 誰!?” 一度言い出したら、女子はしつこい。 『… Orange cafeの店員さん…』

2017-08-03 20:49:21
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

12 “えー!!! あの丸山って人!? マジで好きだったの!?” 『ちょっ…声でかい…』 “前から気になるって言ってたもんね〜!” 『う、うん…。』 女子会によくある会話。 頑張んなよ!なんて励まされて、この話はおしまい。 ホッと胸を撫で下ろした。 その時…

2017-08-03 20:49:42
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

13 “Orange cafeの丸山ならここにいますよぉ〜!” 「ちょっ!お前らっ! アホっ…やめとけっ…!」 酔った笑い声と、焦ったような声が聞こえて… …嫌な予感。 恐る恐る、通路を挟んだ隣の席を見てみると… ははっと苦笑いをした丸山さんが、小さく手を振った。

2017-08-03 20:50:59
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

14 嘘…。 今の会話、聞かれてた? “いたの気付かなかった… ほんとごめん…” 友達が小声で言ったその言葉も、私には届かなかった。 頭が真っ白になって、 恥ずかしくて、 身体中が一気に熱くなった。 『私… ちょ、ちょっと…トイレ!』 「あっ!待って…」

2017-08-03 20:51:15
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

15 ガタッ 私は居酒屋を出て、夢中で駆け出した。 終わった…。 私の恋。 こんな形で、彼に恋心を知られるなんて。 ほんとバカだなぁ…。 もうあの店にも行けない。 --- 私はあの店をめっきり避けるようになり、 こうして私の淡い恋は幕を閉じたのでした。

2017-08-03 20:52:10
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

16 なーんてね。 あれから数週間、カフェの前を通る度に、窓ガラスに目を向けて、 彼がいないかどうか確認するだけで、 店に入る勇気はなかった。 ただの客から好かれていたって、迷惑なだけだ。 いや…むしろ、 丸山さんはこんなの慣れっこで、私の恋心とかどーでも良くて、

2017-08-11 04:56:12
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

17 あー、あの子も俺のこと好きだったのか、俺ってモテるんだな、ふふふ くらいにしか思ってないかもしれない。 気にも留めていないのかも。 そうだとしたら… 『悲しすぎる…。 …はぁ。』 店の前で、溜め息をついてから家に帰る毎日。 もう、忘れなきゃ。

2017-08-11 04:56:46
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

18 --- 『…あれ?』 ある日カフェの前を通った時、丸山さんの姿は見当たらなかった。 お休みなのかな… 『…。』 ガチャッ 久しぶりにその扉を開ける。 すると、 「いらっしゃいま… あっ…。」 カウンターの下から、作業していたらしい丸山さんが出てきた。

2017-08-11 04:57:18
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

19 いたのかー…。 お互い動きが止まり、沈黙が流れる。 今、私…かなり気まずい顔してるはずだ。 「あっ!いらっしゃいませ! こちらどうぞっ…(ガタッ!) 『!!』 「ぅ…いってー…。」 テーブルの角に体をぶつける彼。 丸山さんも、なんか一人であわあわしてるし…

2017-08-11 04:58:01
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

20 「ご、ご注文は…」 『あ、じゃあ…カフェラテで。』 「少々お待ちください。」 今日の丸山さんは、表情が固い。 …無理ないか。 でもそれは、私のこと少しは気にかけてくれてたって事だよね? 少しは動揺してくれたんだよね? それだけで十分だ。

2017-08-11 04:58:24
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

21 「お待たせいたしました…。」 『あ…どうも。』 よく冷えたカフェラテを一口飲んだ。 …やっぱり、美味しい。 ここのカフェラテが好きだから、 …丸山さんの笑顔がもう見れなくなるなんて、嫌だから。 ちゃんと言おう。 この前のは間違いだったって。

2017-08-11 04:59:20
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

22 好きな人聞かれて、困って、苦し紛れについた嘘だって… そして、なかった事にしよう。 --- お会計の時、レジを打つ丸山さんに、タイミングを見計らって声をかける。 『あのっ… 「…なんでしばらく来てくれへんかったん?」 え?』 想像もしていなかった言葉。

2017-08-11 04:59:49
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

23 「あの日からずっと待ってたんやで? もしかして… 僕の聞き違いやったんかな… 君が…僕を好きって。」 彼の顔が赤く染まる。 聞き違いなんかじゃない。 私は、さっき言おうとしていた言葉も忘れ、首を大きく横に振った

2017-08-11 05:01:32
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

24 「何でか、あの日から君の事ばっか考えてしまって…」 そう言いながら彼が差し出した、レシートと一枚のメモ。 そして、しゃんと腰を伸ばしてから子どもみたいに言った。 「えっと… 僕の名前は丸山隆平です! 趣味は漫画、映画。 彼女はいません!」

2017-08-11 05:01:56
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

25 言い終えて、そのメモを私の手に握らせた。 「…良かったら。」 期待を胸にそっとメモを開くと そこには名前と電話番号、メールアドレスが書いてあった。 『これって…』 「お友達から、よろしくお願いしますっ!」 そして勢い良く手を差し出す。 …悩む必要なんかない。

2017-08-11 05:02:12