たゆさいのお話。「アリクル砂漠サルモール秘密基地の戦い」その2

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たゆさい @tayusai

たゆさいのお話。 「アリクル砂漠サルモール秘密基地の戦い」その2 pic.twitter.com/u8uHnl2DFh

2017-08-30 11:52:49
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たゆさい @tayusai

「こ、殺せぇッ!この女を殺すんだッ!」 サルモール戦士達は殺気を漲らせオタマ・ブランシェに殺到した。戦士達は右手に剣、左手に魔法を構える。サルモール精鋭達特有の魔術戦士スタイルである。1

2017-08-30 11:56:32
たゆさい @tayusai

「うおらぁッ!」サルモール戦士は左手から炎を放ちつつ右手の剣でオタマを両断せんとする。しかしオタマはそれを難なく回避し、ほぼ同時に右手から超自然の緋色に輝く剣を産み出す!2 pic.twitter.com/xSZmrZHebr

2017-08-30 12:06:06
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たゆさい @tayusai

それはオタマが誇る秘儀の一つ。相手の魂ごと焼き滅ぼすマジカの剣。魂滅魔刃「レッドバイパー」だ!「らぁあッ!」オタマは右手の魔剣を振るいサルモール戦士を切り裂く!「グボェラババァッ!」サルモール戦士、デッドランドにも劣らぬ炎獄に焼かれ死ぬ!3 pic.twitter.com/ylAEvabP9Z

2017-08-30 12:10:47
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たゆさい @tayusai

更にオタマ、左手に持つ獄滅魔杖「レッドフラワー」から破滅的威力の魔法弾を発射!周囲のサルモール戦士を悉く焼き払っていく!「ぶろぼばばーッ!」「がばればーッ!」瞬く間に砦の内庭は火に染まり、戦士達の肉骨臓腑が四散していく!4 pic.twitter.com/HJHmjIN8dU

2017-08-30 12:23:46
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たゆさい @tayusai

「アアアアーッ!強いッ!」「怯むなッ!それでもアルドメリの戦士か!」多くの同胞が原型すら留めず弾け飛ぶ様を見て尚サルモール戦士達は怪物に挑む。だが怪物は容赦なく戦士を滅ぼしていく。5 pic.twitter.com/31DlcVdgaX

2017-08-30 12:31:42
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たゆさい @tayusai

「た、助けて」「いやだあ」「熱い…熱いーッ!」次第に戦士達は苦しみの声を上げる。オタマが放つ火は只の火では無い。彼女の内部に宿る無限のマジカ炉は相手の肉も、魂も、精神も、全てを焼き尽くす獄炎だ。強靭な精神訓練が施されたサルモール戦士達も心そのものを焼かれては敵わぬ。6

2017-08-30 12:34:50
たゆさい @tayusai

エミルはサマーセット島出身の一般的なハイエルフだ。彼は今まで平凡な農夫の家に産まれ、ごく普通の農夫として一生を送るはずであった。だが第三紀の終了に伴い誕生した組織、サルモールがそれを覆した。7

2017-08-30 12:38:52
たゆさい @tayusai

エミルは徴兵によってアルドメリ自治領の戦士団に組み込まれた。彼は望まぬ訓練を強いられ、人間憎悪の感情を植えつけられた。それはサマーセットの多くのエルフ達に行われた事と同じであった。8

2017-08-30 12:40:56
たゆさい @tayusai

エミルは多くの戦場を戦った。帝都攻略戦、赤輪の戦い。今まで生きてこれたのは奇跡だったのかもしれない。その間に多くの仲間を得た。同じ志を持つ同胞達だ。人間を滅ぼす。エルフの世界を築く。この大志を抱く者達だ。ここハンマーフェルでも仲間達と共にサルモールの為戦うつもりだった。9

2017-08-30 12:43:49
たゆさい @tayusai

だが今、衝撃波によって吹き飛ばされ、暫し気絶していたエミルが目覚めた時に見た物は、明らかに尋常の物では無い死の炎と、それに焼かれ焦げゆく仲間達の亡骸であった。つい先ほどまで雑談を交わし、故郷に残した家族や想い人を語り合った友が、今は無惨に爛れていた。10

2017-08-30 12:47:35
たゆさい @tayusai

「あ、ああ……」エミルは言葉を失った。何故?俺達は何をした?エミルは呆然としたまま自問する。火の先には赤く燃え盛る魔女の姿がある。いや、怪物という呼び方の方が正しいか? 怪物はエミルを見つけた。その赤い瞳は獲物を捕らえた蛇の様だ。11

2017-08-30 12:52:18
たゆさい @tayusai

燃える怪物はエミルの首根っこを掴んだ。瞬間エミルの脳が業火に苛まれた。「アババッ」「おい、楽に死にたきゃ教えな。ここにはサルモールのハンマーフェルでの活動記録と予定表、連絡手段の取り方とかがたっぷり詰まった資料がある筈よ。さもなきゃ、お前は死よりも辛い苦痛を味わう」12 pic.twitter.com/lKQ6coJ67G

2017-08-30 13:01:56
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たゆさい @tayusai

「し、知らない……俺は只の下っ端だよぉ、そんなの知らねぇよぉ」エミルが涙を流しながら言うと、怪物は首を掴む手の力を更に強めた。流れる涙が蒸発した。「あぁあぁッ」「知らねぇのかおいコラ。だったら知ってそうなヤツを教えろや」13

2017-08-30 13:06:14
たゆさい @tayusai

「あぁ……あぁ……か、カルシラス指揮官が……」エミルは朦朧とした声で言った。「あっそう。アリガト。じゃあ死ねや」オタマはエミルに更にマジカを注入しようとした。「た、助けてください……」エミルは懇願した。「故郷に、恋人がいるんです」エミルはまだ農家だった頃、愛した女がいた。14

2017-08-30 13:09:10
たゆさい @tayusai

サルモールに徴兵されてからは、その恋人とは離れ離れになってしまったが、今でも手紙を送りあっていた。「いつか帰ります。その時は、戦役の中、タムリエルで見た色々なもののお話をします。」「ありがとう。それまで、どうかご無事でいてください。ずっと待ってます」15

2017-08-30 13:13:04
たゆさい @tayusai

「……だから助けてください。また会いたいんです。いっぱいお話聞かせたいんです。あの顔をまた見たいんです。だから助けてください……」エミルの眼は既に焼け爛れている。それでも瞼からはとめどなく涙が溢れる。16

2017-08-30 13:16:26
たゆさい @tayusai

「だから?」オタマは言い捨てた。人を遥か超越した怪物の残酷なまでに赤い瞳がエミルの焼ける眼に写った。「あ……あば……」エミルの身体はマジカの獄炎に包まれた。オタマは言った通り、エミルを楽に死なせてやった。17 pic.twitter.com/nqjN0IbFkJ

2017-08-30 13:29:23
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たゆさい @tayusai

「よし、ゲロさせる相手も分かった。さっさと始末しますか」焼けるサルモール戦士達の中をオタマは進んだ。もはや戦士達は呻き声一つ上げない。思い出も、約束も、全て魂ごと焼き払われたのだ。マジカの怪物は進んでいく。今そこへ、サルモール最高峰の魔術師が接近している事も知らず。18 pic.twitter.com/8oFRGuqzPJ

2017-08-30 13:39:17
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