艦隊これくしょん Re:World's End 第一話 叢雲と連装砲
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爆炎の向こうから、伸びてきた腕が私の顔面をがしりと掴んだ。 ――派手に爆炎を上げたのは失敗だった。私自身の視界を塞ぎ、リ級の行動を確認できなくなってしまったのだ。 #艦これReWE
2017-09-03 23:46:29リ級は私の頭をぎりぎりと締め上げてくる。ゆっくりと上に持ち上げられているため、つま先がついに地面から離れた。まるっきり宙づりの状態である。見れば、リ級の腕は大きく裂けているし、顔面は半分血塗れになっている。胴体も傷だらけだ。 #艦これReWE
2017-09-03 23:46:39だが、よもやまさか。リ級にも出血が見られるとはいえ――連装砲ちゃんよりも効果的だったとはいえ――その上で、あの距離で未だ行動可能なレベルのダメージに押さえ込まれるとは。 がこん、と捕まれた腕の側の艤装の口が開く。内部の砲は既に装填され、発射態勢だ。 #艦これReWE
2017-09-03 23:46:57「――っ!!」 本能が危険を察知する。背中に冷や汗が流れる。間違いなく、このままだと頭を吹き飛ばされて死ぬ。 #艦これReWE
2017-09-03 23:47:17「っ! この、このっ!!」 なんとか腕を振り解こうと暴れ、リ級にひたすら蹴りを入れるが、離れる気配すらない。 ――死にたくない。その言葉だけが頭を支配する。 #艦これReWE
2017-09-03 23:47:30生きることを諦めかけていたくせに。一度生きると決めてしまったら、こんなにも命が惜しい。 誰でもいい、助け――。 #艦これReWE
2017-09-03 23:47:45「叢雲ちゃんを離すのです!」 突然の振動と腹部への衝撃が私を襲い、私の頭からリ級の手が離れた。 何か、固いものがお腹にぶつかった。その勢いで弾き飛ばされたのだ。 その衝撃で私はリ級から解放され、重力に引かれて腰から着地する。 #艦これReWE
2017-09-03 23:47:59「な、何が――」 痛む腰をさすりながら起きあがった私の目に入ったのは、私のお腹の上に乗ったままの連装砲ちゃん。 どうやら、私のお腹に全力で突撃したのはこの子のようだ。 #艦これReWE
2017-09-03 23:48:16そして、リ級はと言えば。私とは逆方向に、あのときの声の主――電によって吹き飛ばされていた。 そのまま電はリ級に向かって馬乗りになり、砲を向ける。 #艦これReWE
2017-09-03 23:48:40「この……!」 そのまま至近砲撃。避けられるはずもなく弾はリ級に着弾し、舞い上がる爆風により、逆に電が宙を舞う。 ――つまり、このままでは電は地面に激突である。 #艦これReWE
2017-09-03 23:49:19「うわっと!」 急いで電が落ちてくるであろう場所まで走る。もはや重力に任せるしかない電の落下まであと10秒程度。辛うじて間に合った。 #艦これReWE
2017-09-03 23:49:33「連装砲ちゃん! 私の腰、支えて!」 連装砲ちゃんが指示通りに私の腰に張り付いて、支えになってくれる。これで、電と二人で地面に転がることは裂けられる。 そのまま、両腕を広げて電を抱き止めた。 #艦これReWE
2017-09-03 23:49:54「た、助かったのです!」 助かったはこちらの台詞だ。あのままであれば、間違いなく私は死んでいた。 「ありがとうね、電。さっきは危なかったわ」 私の言葉に、電はぱちぱちと瞬きをして。 「――叢雲ちゃんも、無事でよかったのです!」 花のように笑った。 #艦これReWE
2017-09-03 23:50:12私の手から地面に降りた電は、泣きはらした瞼をこすった。 #艦これReWE
2017-09-03 23:50:27どうして? とは聞かない。 そこにはきっと電だけの葛藤があり、電だけの決意があった。 あの瞬間ただ泣くだけしかできなかった少女が一人、立ち上がった理由があった。 それだけでいい。 #艦これReWE
2017-09-03 23:50:44そうして私たちは、再び炎に巻かれた重巡リ級に目を向ける。 「まあ――まだよね」 炎の向こう、ゆらりと立ち上がる影がある。 #艦これReWE
2017-09-03 23:51:00私と電、2名の至近砲撃を受けて、まだ動ける。さすがは重巡洋艦と言うべきか。 しかし。 その右手が、どさりと根本から千切れ落ちた。 足も引き摺っている。駆逐艦の砲とはいえ、2連砲撃は相応のダメージを与えたようだ。 #艦これReWE
2017-09-03 23:51:20「電!」 「分かっているのです!」 擦れる金属音と共に、私と電の砲がリ級を向いた。 「――照準、よし!」 電が照準を合わせる。今ならば、一斉砲撃で仕留め切れる。 #艦これReWE
2017-09-03 23:51:35――その前に、未だに爛々と輝くリ級の瞳が私たちを見据え、残った左手の砲をこちらへ向けた。 そして、放たれようとした砲弾はしかし、空中へ飛翔はせず。 リ級本人の左腕の中で弾け、その腕を吹き飛ばした。 ――もう、無理だろう。 #艦これReWE
2017-09-03 23:51:44「叢雲ちゃん」 「ええ」 楽にしてやるのが、きっと優しさなのだ。 #艦これReWE
2017-09-03 23:51:54「でも、電たちは、生きることを選んだのです」 「そうよ。だからこの選択と、その結果は――」 すべて、自分で背負って行かなければならない。 #艦これReWE
2017-09-03 23:52:52たとえ、この世界のすべてが艦娘の敵で。 私たちを生み、愛してくれた人類はもう居なくて。 #艦これReWE
2017-09-03 23:53:07歯車はどこかで狂ってしまって、行き着いたのがこの、絶望の果ての世界なのだとしても。 用意されていたはずの数多の未来に背を向けた、辿り着くべきではない終わりに辿り着いていたのだとしても。 #艦これReWE
2017-09-03 23:53:30