蛇神さまと宮司さまのお話５

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep お小夜、頂き物のわらび餅があるんだ、食べよう。歌仙、今ここに……あれ？ああ、いらしていたのか。気紛れな方でね。君にも出汁を取った鰹節があるのだがお口に合うだろうか。にゃあ！

長月笹良 @sasa_sep

@gude2hiro 神様なのに歌仙と話したりするの？ 時々ね、気楽に付き合っているさ。にゃあ、にゃあ。鰹節が待ちきれないといった様子のむーが盛んに鳴く。落ち着きたまえむー君、鰹節は逃げないよ。…なんだか前と少し変わったみたい。そうかな。いい方にだよ。

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep そうかい、自分ではよく分からないがね。柔らかくなった、気がする。人もまた変わるものだよ、さあわらび餅にはきな粉をかける？それとも黒蜜がいいかな。どっちも美味しそう。にゃあ！ああ、分かっているよ。さあ部屋で涼んで。

長月笹良 @sasa_sep

@gude2hiro 勢いをつけて上がり框に飛び乗ろうとお尻を振っているむーを捕まえて足を拭く。このまま上がって大丈夫かな。構わないよ、ご自由にどうぞ。 にゃあ！ かつては人を集めた祭祀も行われたであろう堂宇を、小さな仔猫が一匹とてとてと歩く。きちんと清掃されて花も飾られている。

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep 兄様達や数珠丸様はどうしているだろう。あんなに優しくしてもらったのに、恩を仇で返すような形になってしまった。にゃあ。走ったらいけないよ、静かにね。歌仙はいつも丁寧に仕事をしている。綺麗な花。そうだろう、季節を感じられて好きなんだ。

長月笹良 @sasa_sep

@gude2hiro 僕も花を見るのは好きだよ、薬研には食べられないって言われたけど。彼には風流を感じられる心が不足しているのだろうね、さあどうぞ召し上がれ。にゃあ！ 小皿に盛られた鰹節にむーは飛びつく。お小夜もどうぞ、外は暑いから冷たいお茶だよ。ありがとう、いただきます。

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep 暑さや寒さを以前よりしっかりと感じるようになった。疲労も比べものにならない。これが人の感覚かと最初は驚いた。美味しい、喉が渇いてたみたい。そう、良かった。それ故に喜びも大きい。美味しいもの、嬉しいもの、気持ちの良いもの。1つずつ染み込む様に味わう。

長月笹良 @sasa_sep

@gude2hiro 窓から抜けていく風、よく冷やされたわらび餅の食感。人間になる前からそこにあった筈なのに初めて知ったような気がする。にゃあ！ あっという間に皿を空にしたむーがおかわりをねだる。もう食べたのかい？ お気に召したのならよかった。

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep むーくんはどこから？薬研のお母さんが遊びに来てて、連れてきてくれたんだ。そうか、長旅だったね。にゃあ。電車とバスに乗ってきたの？僕はどっちも乗ったことないな、むーはすごいね。

長月笹良 @sasa_sep

@gude2hiro いくらでも乗ってみればいいさ、どこへでも行けるのだから。どこへでもって、わからない。にゃあ、にゃあ！ …うん、むーに会いに行きたいのはあるけど。僕は街は苦手だからねえ、お小夜が見てきたものを話してくれるのが楽しみだな。

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep 街が苦手なの？人が多いところは騒がしくて落ち着かないな。そう、歌仙は誰にでも優しいから人と接するのが好きなんだと思ってた。これは処世術というものでね。…そうなの？ああ誤解しないでくれよ、お小夜や村の人達と話すのは好きなんだよ。

長月笹良 @sasa_sep

@gude2hiro …歌仙がそうなら僕は大丈夫かな。ああ、一度経験してみなければわからないだろう、ずっと街で暮らせという訳ではないのだから。…もし彼が街に戻りたいと思ったら、僕は。何度もいうがお小夜はここに戻ってきていい、ひとりぼっちにしたりするものか。

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep ありがとう、歌仙。まあ、そうは言ってもあの強引な彼だから、君を引きずっていくんだろうね。そうかな。にゃあ！そう、むーは街も好きなの？楽しいんだね。

長月笹良 @sasa_sep

@gude2hiro にゃあ、にゃあ。だいすきなひとがいればはっぴい。きっとそう歌ってくるくると踊っている仔猫に笑みがこぼれる。こんなに小さなむーが飛び込んでいくのだから僕も勇気が持てる気がする。むーみたいにとはいかなくても恐れずに軽やかに。こんちはあ、小夜、むー？ にゃあ！

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep 皿洗い終わった、遊ぼう。にゃあ！よう歌仙。冷たいお茶があるが飲むかい？あー欲しい、暑い。お、いいもの食べてるな？わらび餅だよ。食べるかい？大好き。薬研はいつも明快だ。にゃあ。いいとこだろ？小夜が前にいたんだぜ。

長月笹良 @sasa_sep

@gude2hiro にゃあ。別宅にしてやってもいいって？ にゃあ！ むーは薬研の膝に飛び乗ってころりとお腹を見せる。こんなに丸くして、また何か食ったのか、ご馳走が入らなくなっても知らないぞ？ にゃあ！ まるで対等な友達のように話しているのがおかしい。ほら君の分だ、お小夜もおかわりはどうだい。にゃあ！

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep ありがとう、じゃあ少し。にゃあ。君はこんな小さなお腹にどれだけ入れるつもりだい？にゃあ！いくらでも、と言いたげな鳴き声に思わず笑う。歌仙のとこに来るとうまいものにありつけるな。頂き物が多いんだよ。

長月笹良 @sasa_sep

@gude2hiro ごちそうさま、さあ遊ぶか。にゃあ！ さっきはボールで遊んでたんだけど。にゃあ、にゃあ。またボールがいいのか、飽きないのか？ にゃあ！ よし、たっぷり付き合ってやるからな。僕はお皿を洗うね。ああいいんだ、置いておいてくれ。

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep ぽん。ボールが跳ねてむーが跳ねる。命そのものを見ている気分だ。むーだかボールだか分からねえな？薬研は笑う。僕の神社で鬼ごっこをしていた時と同じ笑顔。昔も今も眩しくて、でも今は手の届くところにある。

長月笹良 @sasa_sep

@gude2hiro この為に人になったのだと思える。まさか自分だけに向けられる日が来るなんて今でも夢みたいだ。うん？ 横顔に見惚れてぼんやりしているのを見つかる。そのまま近付いてきて額に柔らかく触れる。にゃあ！ むーが瞳をきらめかせる。…恥ずかしいよ、外で。したいのかなって。

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep そんなこと言ってない。俺もしたかったんだよ、駄目？……恥ずかしい。にゃあ。らぶらぶ。言われてさらに恥ずかしくなる。家じゃ出来ないだろ。なあ、小夜もして？

長月笹良 @sasa_sep

@gude2hiro 悪戯っぽく笑われて頭がくらくらする。…恥ずかしいから嫌だ。恥ずかしくてもしたいのが人情だろ？ にゃあ！ ボールを放り出したむーが飛んでくる。日差しを浴びた匂いがするふわふわの額に口づけてから薬研に押しつける。にゃ。おお、むーが届けてくれるのか。にゃあ！

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep ……これで精一杯、だから。へへ、可愛いな。むーは可愛いよ。むーだけじゃなくて、小夜も。よく分からない。……君達、ここは神様の住まいだから。咳払いと共に歌仙に睨まれる。あーごめん。謝罪が軽いね？別に悪いことはしてねえだろ。仲良くしてるんだから。

長月笹良 @sasa_sep

@gude2hiro だって小夜があんまり可愛い顔してるからさあ。お小夜が可愛いのは自明のことだろう、自制心がなさすぎる。…恥ずかしい、ごめんなさい。頬が熱くなってむーで顔を隠す。にゃ！ いくらむー君に免じても今のを見なかったことにする位だよ。そうしてほしい。にゃあ！

gude2hiro @gude2hiro

@sasa_sep ひとしきり遊ぶとむーの動きは緩慢になる。疲れたのかな。家に帰って休もう。…薬研のお母さん一人にしちゃったけど大丈夫だったかな。多分昼寝してるよ。あの人、隙あれば寝てる。隙あればって、まるでむーみたい。そうなんだよな、あんまり寝過ぎてると父さんが叩き起こしてた、戻れないって。