エリミネイト・アナイアレイター ＃４

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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【エリミネイト・アナイアレイター】#4

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（DZと共にアナイアレイター排除のミッションに臨むスーサイドは、旧知のニンジャであるルイナーとフィルギアに再会し、ともにサキモノシティに向かった。果たして、自給自足都市はアナイアレイターのジツであるスリケン鉄条網によってドーム状に覆い尽くされていたのである）

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（スーサイドのジツによって鉄条網を突破した一行は、鉄条網ゾンビーとでもいうべき装甲機械の手厚い歓迎を受ける。カラテで退ける一行。フィルギアは都市内の生き残りとおぼしき子供を連れてきた。子供は他にも生存者がいると話す……）

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ギギイ……ギギギイ。頭上から降ってくる不穏な軋み音にフィルギアは顔をしかめる。「ゾッとしない」「鉄条網のワイヤーが立てる音だな」DZは言った。「地上には機械、上には鉄条網か」「もうすぐだよ」子供が指さした。「はやく。危ないから」　1

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表通りには鉄条網を絡ませた二足歩行のボットが蠢いている。彼らは不要な戦闘を避けた。「アルコロジー都市ってのは…」スーサイドは見渡した。コンクリートの集合住宅の密度は高く、プラスチックな四角い緑が道の脇に配されている。「せまっ苦しいな」「そのぶん衣食住は保証されている」と、DZ。2

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「デクタ社がこの街の9割の株を所持している。自給自足の実験モデル都市だ。デジタル蛋白を摂取し、生産活動を行い、集合住宅に帰る。このまま宇宙に飛ばしても事足りるようになっている。いずれこの手のアルコロジーが火星やらに行くんだろう。俺には知った事ではないが」「詳しいな」「学習だ」3

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「クール」フィルギアがあまりクールではなさそうに呟いた。「ポスト磁気嵐は力の時代だ」DZはフィルギアを振り返って言った。「アンタらのようなニンジャならいざ知らず、暴力や貧困から逃れる為に、喜んで集まる市民はいるのさ」「それも台無しってわけだな」ギギイ……頭上で鉄条網が軋んだ。　4

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「こっち」子供がマンホールを指さした。「ハ！地下か」スーサイドは笑った。「昔もやったな。下水をよ」「ヒヒヒヒ、思い出したくもない……」フィルギアも笑顔になった。DZが周囲を警戒する中、ルイナーがマンホールの蓋に手をかけ、ゆっくりと動かした。　5

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ハシゴを降りてゆくと、そこは広がる地下世界……否……さして広くもない、下水道の一角だ。一方は鉄条網で塞がれているが、もう一方にはある程度の奥行きがある。「倉庫・用具」と書かれたノレンが壁沿いに見えてくると、子供は息を弾ませて走っていった。一行もその後に続いた。　6

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ノレンの奥は、鉄製ラックで仕切られた倉庫空間だ。奥に身を寄せ合う人々の姿がある。彼らは身じろぎし、スーサイド達を見て狼狽した。「アイエッ……」「アイエ！？ミチ＝サン？誰ですか、そいつらは」「人、連れてきた……！」子供が言った。「外の人たちだって！」　7

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「外……！？」大人たちは手近の鉄パイプやスパナを手に取り、警戒した。DZは一同に目配せして制してから、ホールドアップ姿勢で前に出た。「我々はアンタがたを救助しにやって来た。もう大丈夫だ」「救助……？」大人たちは目を見交わした。人数は十人にも満たない。「どういう事です？」　8

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「我々はネオサイタマの人権団体に雇われている。悪く言えば傭兵だが……害意はない。雇用主の意図も善良なものだ。多分な」DZは言った。スーサイドは訝しんだ。DZはその後もデクタ・サキモノ社の名を出さずに説明した。「ニンジャの暴走に巻き込まれたアンタらを救出し、街を正常化したい」9

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「ニンジャ！そうだ。奴がこの街をメチャクチャに」「あいつのせいだ！」「だ、だからワシは最初から反対したのだ！」「どうしてこんな事に……」避難市民がざわついた。スーサイド達は顔を見合わせる。「大人気じゃないか」フィルギアは呟いた。ミチは震え、泣き出した。「……ちがうもん」　10

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「ミチ！こっちに来なさい」母親とおぼしき女性がミチを抱き寄せた。ミチは嗚咽した。「ちがうもん……」「……」DZは沈思黙考の後、最年長の男に尋ねた。「詳しい状況を訊きたいが、よろしいか？」「ア……ハイ」「ここにいるのが、街の生き残りの全員？」「いや、まさか！散らばっとるよ」　11

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男はラックに並ぶ段ボール箱を示した。「ここはまだ食糧がある。他がどうなっとるかは、わからんよ。なにしろ外に出たら……あの状態だ」「ああ」「もはやこの街は終わり……ワシらもおしまいかと」憔悴した人々が互いに頷いた。「街をこんな風にしたニンジャの事は知っているのか」DZが問うた。12

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男は頷いた。「奴は外から来た。胡散臭い旅人だった。今にして思えば」「名前は？」スーサイドが口を挟んだ。「アナイアレイターで間違いないか」「アナイアレイター！そう！物騒な名前の男！」「目は金色？」フィルギアがジェスチャーしながら付け足した。「そうです！金色の目！恐ろしい！」　13

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「こりゃ参ったな」フィルギアは頭を掻いた。「ビンゴだ。アイツで間違いないぞ」「ある程度わかったが」DZは質問を続けた。「アンタらのその様子だと、当初はコミュニケーションが取れていたようだな？」「ええ、まあ」男は認めた。「色々と聞き込みをしておりましたから。ワシらも協力した」14

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「広くもない街ですから。他所から来た人間が、ここで起きてる問題を小耳に挟んで、動いてると。そういう噂はすぐに広まったよ。皆も協力した。彼がきっかけで、子供らが帰って来るかもと……」「問題を抱えていた？オイ、面白くなって来たじゃないか……」フィルギアがDZの肩に手を置いた。 15

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「子供がどうしたの？」フィルギアはミチを横目で見た。ミチは怯え、母親にしがみついた。男は答えた。「居なくなるんです。十二歳以下の子供が。それも決して少なくない数……」「ウチの子供が最初だ」「最初じゃないだろ」「ウチなんだよ！」「どこでもいいよ！それで？」「あのニンジャが来た」16

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「で……事件を探り始めたと。子供を助けるって？」「……そうです」「助ける！ハ！全く何やッてんだアイツは。ガラにもねえ」スーサイドはその場に座り込んで、呆れ果てた。「人助けかよ」「……あのイクサ以来、奴は黙って考え込むようになった」ルイナーは呟いた。「変わったんだろ」 17

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「くッだらねえ」スーサイドは呟き、直後、居心地悪そうに咳払いした。彼の行いを軽率に断じる事を自ら憚ったかのように。「若年者の失踪」DZは考えをまとめていく。「アナイアレイターは問題解決に乗り出し……そして……結果このカタストロフィに繋がった」彼は人々を見渡す。「不可解では」18

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「だが現にこんな事になったんだ。あいつの力だよ。あの鉄条網は」「まるでジゴクだった」「余所者の……それもあんなおそろしいニンジャに頼ったのが間違いだった」口々に畏怖の言葉。「ちがう……ちがうもん……！ちがう……！」食い下がったのはミチだった。母親が「スミマセン」と頭を下げた。19

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「アンタんとこは、そうやって帰って来られたから良かったよな。そりゃ恩にも着るだろうが」憔悴した様子の一人が辛辣な言葉を向けた。「ウチの子は帰って来ない。それどころか、街は壊滅だ」「スミマセン……！」「まあまあ。辛気臭い話をしに来たワケじゃないんだよ」フィルギアは割って入った。20

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「そういう姿を見せないでくれよ。頼むからさ」笑いの消えたフィルギアの表情には凄味があった。非難者は震え、失禁をこらえた。DZはミチと母親に向き直った。「帰って来た、と？」「その子も一度は居なくなったんだ」年長者が補足した。「カタストロフィの時に、思いがけず、帰って来た」 21