【ミリマスSS】トルプリンノポス・アカネキア#3 アカネ探偵のプリプリプリティー大事件!
「ゆ、ゆび?」茜は困惑する。これがアイドルになるための試練なのだろうか。「人差し指だけでいい」「う、うむ」茜は人差し指を出した。探偵のように「犯人はあなただ」と言いたくなる欲求が湧いたが、こらえる。「静かにしてろよ」ごくり。誰かが唾を呑んだ音が、スタッフルームに響く。 19
2017-09-18 15:56:57エレナと歩は、互いに顔を見合わせた。これから何が起ころうとしているのか、二人にもわからないのだ。ブルフPは、指の骨を鳴らし、自らの人差し指をも突き出した。「何を……」「シーッ」エレナが歩を黙らせる。「きっと、何かとんでもないことが起こるヨ。……ワタシたちは見守るしかない」 20
2017-09-18 16:00:48ブルフPは、指を被り物の額に当て、目を閉じた(被り物の内部からは瞳の光が見え、目を閉じると光が消えるので、それとわかる)。口も固く閉じた(口は覆われているが、被り物と口の動きは連動しているので、それとわかる)。何かを思い出そうとしているようだ(なんとなく、それとわかる)。 21
2017-09-18 16:04:27「あれはきっと、プロデューサーの能力《タレント》!」「え、でも」「見て、動いたヨ!」ブルフPは目を開いた。茜は息を呑む。ブルフPはゆっくりと、人差し指を茜の人差し指の先端に合わせ、そして、口を開いた。「……『E.T.』」「チョイ!!!」エレナが声を荒げる。「時間返してヨ!」 22
2017-09-18 16:07:28「とまあ、冗談はここまでにして」目をぱちくりさせる茜の肩に手を置く。「面構え、スタイル、表情、メンタル、よし。運動・歌唱能力はまだ分からないが、レッスンでどうとでもなる」「それじゃあ……」「スクールへの入学を許可する!」「「「ヤッター!」」」茜歩エレナは勇壮に飛び上がる。 23
2017-09-18 16:13:26「と言いたいところだが」茜歩エレナは盛大にずっこける。「ちょっと考えさせてくれ」「エー!」「なんでだよ!」「大人の事情とか、いろいろあってな」「そんなのってないよ!」「すまん。今日中には結論を出すから、ちょっと待っててくれ」「昔はそんなのなかったじゃん!」「状況が違うんだ」 24
2017-09-18 16:19:13そういうわけで、茜たちはヒマを持て余すことになった。ブルフPはどこかへ出かけてしまい、スクールには茜歩エレナの三人だけが取り残されている。三人は、ふかふかのソファーに沈み込み、ぶうぶうと文句を垂れていた。「なんだかなー。Pらしくないよな」「ウン。どうしたんだろうネ?」 25
2017-09-18 16:23:12「茜ちゃんには何が何だか分かんないよ、もう」「なんかごめんな、茜」「マイハマンが謝ることじゃないよ」「あ、そうだ!」エレナがポンと手を叩く。「そういえば冷蔵庫にプリンあるヨ! アカネ、食べる?」「え! ほしいほしい!」「じゃあちょっと待っててネ~」 26
2017-09-18 16:26:00エレナはぷりぷりおしりを振りながら、奥の冷蔵庫へ向かう。それとほぼ同時に、スタッフルーム入口の扉が開いた。「おはようございます」そう言いながら入ってきたのは、ボーダーシャツの少女だった。「あれ、踏切」「あれ、志保」踏切志保と呼ばれたその少女は、憚ることなく眉をしかめた。 27
2017-09-18 16:30:19「誰ですか」「茜ちゃんの名前は野々原茜! 宇宙からやって来たぷりちー☆ウチュージンだよっ!」びしぃっとピースする。「……誰ですか」「茜だよ。スクールに入る……かもしれないし、入れないかも」「なんですかそれ」「アタシもよくわかんない」「へぇ。大変ですね」志保は興味なさげだ。 28
2017-09-18 16:35:44「志保はなんでスクールに? 可奈はいないけど」「前来たときに忘れ物をしたので」志保は髪をかきあげた。「マイハマン? この子は何者なの?」「765プロ劇場所属の『劇場星《シアターズ》』だよ。茜の先輩ってことになるね」「先輩かぁ」「言っとくけどアタシも先輩だからね」「うっす」 27
2017-09-18 16:44:35「……別に私は後輩なんて要りません」志保は鬱陶しそうに眼を細めた。「志保はすごいんだよ、茜。スクールに入ってから劇場に上がるまで一瞬だったし。能力《タレント》もかなりすごい」「タレント……。さっきも言ってたね、タレントがどうとか。それってなんなの?」 28
2017-09-18 16:47:39「そっか、それも知らないか。能力《タレント》っていうのは、つまりは、超能力なんだけど……志保の場合は」歩は、低い本棚の上に置かれていたメモ帳を取り、一番上のメモ用紙を破り捨てる。「紙に文字を書いて」二枚目のメモ用紙に何かを書き込む。「貼ると」用紙を志保の手の甲に貼りつける。 29
2017-09-18 16:50:47茜の視界が明滅する。「えっ!」否。明滅ではない。「白黒に!」茜の視界に映るものすべてが、モノクロになっていたのだ。「これも! これも!」本棚やソファーだけではなく、歩や志保すらも。「これ……は、違うね」むろん、志保の白黒ボーダーシャツだけは、何も変わっていない。 30
2017-09-18 16:54:22「えっ、なんなのこれ!?」「これが志保の能力だよ」「……格率認証《マキシム》。それが私の能力です」志保はため息をつく。見世物のようで、いい気分ではない。「かいつまんで言えば、『私に貼りついた常識を普遍化する能力』ですね」「……よくわかんないんだけど」「わからなくていいです」 31
2017-09-18 16:57:41志保はメモ用紙をはがした。視界に色が戻る。紙には『765プロスクールスタッフルーム内がモノクロの世界なのは常識!』と書いてある。「へぇー、面白いね」「面白くなんてないです」「茜ちゃんは能力とかないからな~」「能力もないのによくアイドルを志望する気になれましたね」「え?」 32
2017-09-18 17:03:32「アユムー!」エレナの呼び声が響いた。「チョット来てー!」「エレナさんもいたんですね」「どうしたんだろエレナちゃん」「行ってみよう、暇だし」「事件の香りがするぞ」歩と茜はソファーから立ち上がり、エレナに近づく。志保は忘れ物を探し始める。「何かあったの、エレナ?」 33
2017-09-18 17:05:51「それが……! 冷蔵庫に入ってたゴージャスセレブプリンが……なくなってるノ! プリンだけじゃなくて、他にもたくさん!」「な、ななァッ!?」野々原茜に雷走る!「これァ事件だよ……」茜はゆらりとうなだれ、手で顔を覆う。「超絶美少女探偵茜ちゃんの出番がやってきたようだね……!」 34
2017-09-18 17:09:24「アカネ、もしかして、犯人がわかるノ?」「もちもちのロンだよ!」「バカな!」「茜ちゃんは全てお見通しさ……! フフ……。冷蔵庫からプリンを奪った犯人はこの中にいる!」「エ!?」「な!?」「ちょっと静かにしてくれませんか」忘れ物を探す志保が頭だけこっちに向けて不平を漏らした。 35
2017-09-18 17:15:14茜はスルーして話を続ける。指を天に向け……ある人物に向かって振り下ろす!「犯人は……お前だ!」「アタシ!?」歩は激しく狼狽する! その狼狽は犯人の証明か!?「アユムは違うと思うヨ」「うん、マイハマンではないね」「ズコー!」歩は漫画のように転ぶ。「適当なこと言うなよっ!」 36
2017-09-18 17:18:56「誰かが食べちゃったんだろうネー」「それが誰なのか……これは超絶美少女探偵茜ちゃんの出番がやって来たようだね……!」「帰れ!」「さっきから何を騒いでるんですか」志保がイライラした様子で茜の後ろに立っていた。「暇だったら暇人らしく静かにしていてください、気が散ります」 37
2017-09-18 17:20:21「茜ちゃんは暇じゃないのだよフミキリン!」「フミキリン……?」「事件が発生したのだよ、これは事件だよ、間違いなく」「……冷蔵庫にメモ貼ってないんですか、『もらっていきます』とかなんとか」エレナがとっさに冷蔵庫の扉を見る。そのようなメモは見当たらない。 38
2017-09-18 17:22:10「ちっちっち、フミキリン……」茜は志保の鼻っ面に指を突き立てる。「これは事件なんだよ、メモなんて。途端に事件性がなくなっちゃうじゃないか。ナンセンス!」「あっ」歩が手をぽんと打つ。「さっき捨てたメモに何か書いてあったな」「えっ」「ちょっと待ってて」ソファー脇のゴミ箱を漁る。 39
2017-09-18 17:24:17「ああ、あったあった」「見せてマイハマン」そこには『おかし少しもらっていきます 可奈』と書いてあった。志保が「可奈じゃないですか」と眉を寄せる。「……説明してもらおうかマイハマン? このメモは?」「え? いや、それは……さっきのメモ帳の、一番上にあったメモだよ」 40
2017-09-18 17:28:21