少女人形本編再演・永久に撫子の咲く庭

瑠花 @kirisakiflower

梨花は何かを考えているようだし、詩苑は部屋から出てこない。魅苑もそれにつられてかあまり喋らず居間でじっとしているし、真夜は家を留守にしている。いつもと違う家の空気に居たたまれなくなったのか紫苑も今は兄さんたちのところにいる。…この空気、あまり気持ちがいいものではないね【瑠】

瑠花 @kirisakiflower

……【梨】 あんたも酷い顔してるわね。……隣、座っていいかしら【魅】 魅苑姉上……【梨】 ……【魅】 …………【梨】

瑠花 @kirisakiflower

……聞き流してたもれ。生きておったころの姉上様が、わらわが恋しておった方がいま生きていると…言っておったのじゃ。わらわは梨花じゃ、六の宮ではない。じゃが、心をときめかせてしもうておることも事実じゃ。わらわは、もうどうしてよいか…わからぬ……【梨】

瑠花 @kirisakiflower

姉上様って、少女人形になるときに記憶を全部消したっていう…？【魅】 そうじゃ【梨】 ……おかしいわ。あたしはずっとハカセのとこにいたから知ってるけど、消した記憶は何をやっても戻らないはずよ【魅】 ……？【梨】

瑠花 @kirisakiflower

ハカセは生きていた頃の記憶を消去するときは念入りにやるもの。あんたに会ったことであんたのことを思い出す、なんてありえない。 ただの少女人形の意思程度じゃ蘇らないわ。ハカセの権限で操作しない限りは……ねえ梨花。その人は本当にあなたの姉なの？【魅】 ……姉上様に会うてくるのじゃ【梨】

瑠花 @kirisakiflower

梨花【魅】 心配せずともよい。ちょうど今日は姉上様と会う日じゃ。そろそろ行かねばと思うたところよ。真偽を問い、わらわの心に裁定を下さねばの【梨】

瑠花 @kirisakiflower

姉上様【梨】 あら梨花、久しぶりね。思ったより早かったけれど……ふふ、また色んなお話しましょ【楓子】 ……姉上様、聞きたきことがあるのじゃ【梨】 何かしら？【楓子】

瑠花 @kirisakiflower

姉上様の名についてじゃ【梨】 ……ごめんなさい、言わなかったかしら。私は生きていた頃の記憶をハカセに消してもらったの。だから…【楓子】 偶然に思い出したわらわとの記憶しかない、であろう？【梨】 ええ【楓子】

瑠花 @kirisakiflower

懐かしいのぅ。二人きりのとき、わらわは姉上様をいつも名で呼んでおった。姉上様も言うておったであろ？「二人きりで話をするなんて久しぶりでとっても懐かしいわ」と【梨】 梨花、もしかしてあなたは私を疑っているの？……酷いわ、私はあなたの姉なのに【楓子】

瑠花 @kirisakiflower

……すまぬ姉上様、じゃが疑いを晴らすためじゃ、教えてたもれ【梨】 そう……確かに二人きりのとき、あなたに名前で呼ばれては訂正をしていたわね。けれど、それでも……残念だわ、私は私自身の名も思い出せないの【楓子】 ……そうかぇ【梨】

瑠花 @kirisakiflower

やはり、じゃな。わらわは姉上様と二人きりのときも姉上様を名で呼びはせぬ。美しき姉上様を名で呼ぶなど畏れ多いからのぅ【梨】 ……！【楓子】 さて……姉上様によく似た顔と、姉上様についてやわらわについてよく知っておるということは女房の誰かじゃな、名乗れ。ぬしは誰じゃ？【梨】

瑠花 @kirisakiflower

……ふふ。やはり三の宮に成り代わるなんて私には出来なかったわね。この容姿だって、マスターに頼んでこうしてもらったのに。ああ、残念。もうすこしあなたと『姉妹』でいたかったわ【楓子】 なぜじゃ、なぜおぬしは姉上様を騙ったのじゃ！！【梨】

瑠花 @kirisakiflower

その前に聞かせて？あなたは今世の松風さまにお会いして幸せになるのか、それとも身を引くのか。……気持ちの整理は出来た？【楓子】 ……わらわは、…わらわは、松風様とは幸せになれぬ【梨】 ！！【楓子】

瑠花 @kirisakiflower

先の永い今生じゃ。会うこともあるかもしれぬ、じゃが……わらわは六の宮ではない。わらわは梨花じゃ。松風様にお会いできると聞いてときめかなかったといえば嘘になるが、……それは姉上様にお会いしたときのような親愛になっておった【梨】

瑠花 @kirisakiflower

あのときのような熱はもう、『わらわ』にはない。それは最早わらわが梨花である証じゃ【梨】 …………そう【楓子】 わらわは語った。次はおぬしじゃ【梨】

瑠花 @kirisakiflower

……暗い部屋の中で私はずっと『心残り』を抱いてじっとしていたわ。早く転生したい、とずっと思っていた。そんな時に青い女の子が来て、私をこの身体に入れてくれた。 まさかこんな形で転生できるなんてね。いいえ、前世の記憶も魂も持っているし厳密には転生とは言えないわね【楓子】

瑠花 @kirisakiflower

そしてほんの少しの間ハカセの所にいた時に……偶然知ってしまったの。あなたも少女人形になってる、って。だから私は容姿を三の宮と同じにして、ずっとあなたがどこにいるのかを探していた。……ようやく見つけたわ、私の常夏【楓子】 …っ！！その…呼び方は、まさか……【梨】

瑠花 @kirisakiflower

私の一番の心残りは生前あなたを愛していると伝えられなかったことと、貴方が生きているときにそれに気が付いて伝えられなかったこと。この身体に入るときには別の心残りを青い女の子たちに言ったけれど、あなたがいると分かってからは、今日この時まで一番の心残りを果たそうとしていたわ【楓子】

瑠花 @kirisakiflower

六の宮、私の撫子、常夏の姫。私はあなたを愛していたよ。私を兄上様と呼んで慕ってくれたあなたはとても可愛かった【楓子】 …ッ、寄、るな…寄るでないっ……！！【梨】 ほぉら、捕まえた。ふふ、細い腕ね。小さくて真っ白な手ね。あの頃と変わらない……【楓子】

瑠花 @kirisakiflower

松風様っ、離すのじゃ、わらわは六の宮ではっ…！【梨】 いいえ、いいえ。私の可愛い撫子。そうじゃないわ。私のことは兄上様と呼んで？松風卿だなんてよそよそしい言葉を並べないでちょうだい【楓子】 っあ！痛い、痛いのじゃ！！【梨】

瑠花 @kirisakiflower

あら、ごめんなさい。だって私の撫子がひどい呼び方するのだもの。思わず腕に爪を立ててしまったわ【楓子】 松…兄上様、先ほども言ったであろう？わらわはもう兄上様とは幸せになれぬ、どれだけ思われようと、わらわは梨花として幸せに……っああっ！【梨】

瑠花 @kirisakiflower

あなたが死んで初めて自分の恋心に気が付いてどれだけ後悔したか、死んでしまった撫子には分からないでしょうね。家のために妻を取り子を成してそして死んだ私は、その死の間際まであなたを忘れることはなかった。私の撫子、可愛い六の宮。私はあなたを想ってずっと生きてきたの【楓子】