軽い気持ちで「自殺ゲーム」を始めてしまった男の、ちょっと奇妙な物語。
- ord_realdgame
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数時間後、俺は橋の上で逡巡していた。 (なんで俺はここにいる?どうしてこんなことになった?) 疑問符が頭を埋め尽くしていた。 実況…されている。 目ざといYoutuberが俺をネタにしているようだ。 『さあ、本当に彼は飛び込むのでしょうか!?』 逃げ場はない、らしい。
2017-10-11 23:37:20チクショウ。俺の人生ここまでかよ。 なんでネタのために命張らなきゃならないんだよ。 そんなつもりなかったんだよ。 ジョークなんだよ。 分かれよ。 『あれー?なかなか動きませんねえ。ここまで来てビビッたかなー?』
2017-10-11 23:37:41「ええい、もうどうにでもなれ!! 死んだら化けて出てやるからな!!」 『おっ!ついに動いた!飛ぶか?飛ぶか?飛べ!迷わず飛べよ!飛べば分かるさ!』 「うるせえ!!!だまれ!!!!」 欄干を乗り越え、俺は足場のない空間へ飛び出した。
2017-10-11 23:38:42「やった…やったぞ!!俺は生きてる!!勝ったんだ!!ゲームに勝った!!俺は!!生き残った!!やった!!ざまあみろ!!何が自殺ゲームだ!!誰が死んでなんかやるもんかよ!!勝ったぞ!!俺は勝った!!」 「病院ではお静かに!!!」 怖い看護師も、その時ばかりは天使に見えた。
2017-10-11 23:40:12たまたま近くをレジャーボートで通りがかった人が俺が飛び込むのを目撃して、すぐさま助けてくれたのだという。 その人が元救命士だったことも幸いし、俺は一命を取り留めたのだった。 ・ ・ ・ ・
2017-10-11 23:40:34========= 「警部、新しい『部品』が見つかったそうです。今度は多摩川で、『右腕』です」 警部と呼ばれた年配の男が検視報告書から顔を上げる。 机の上の灰皿はとっくに吸殻で溢れていた。 「タバコ、やめるって言ってませんでしたっけ」 「このヤマが片付いたら、って言ったろ」
2017-10-11 23:41:34「そういうことにしときますよ」 「ふん。これでほぼ揃ったな。後、見つかってないのは頭だけか」 若い刑事から『部品』の写真を受け取り、男は呻くように呟いた。 「何か目新しい情報は?」 「はい。『右腕』については、『左足』同様、目撃情報が」 男の目が鋭く光る。 「詳しく」
2017-10-11 23:42:07若い刑事は手帳をめくりながらスラスラと答える。 「3週間前、橋の上で若い男が何かぶつぶつと呟きながら段ボール箱を川へ投げ落とす様子を、近くの主婦が見ています。近所では見かけない顔だったと」 「…『左足』の時と状況は似てるな」 「はい。それだけを見れば同じです」
2017-10-11 23:42:22「ただ、『左足』の時はどうも女子高生らしいですから、『右腕』とは別人でしょう。共犯者ですかね」 「わからん…どちらもプロファイリングの犯人像と一致しない。一体どういうことなんだ?」 警部は薄い頭を掻きむしると、一つ溜息をつき、新しいタバコを取り出そうと内ポケットへ手を突っ込む。
2017-10-11 23:42:58取り出した最後の一本に火をつけると、警部は空になったタバコを放り投げた。 正確な狙いだったが、空箱は運悪くゴミ箱の縁に当たって軽い音を立てながら床へと転がる。
2017-10-11 23:43:21「…プロファイリングも、必ず当たるってわけじゃないですからね」 「そりゃそうだが…この事件の犯人には妙に矛盾した周到さを感じると思わんか。ほとんど何の証拠も掴ませていないのに、投棄する姿は目撃されたりしている。何かがおかしい」 「刑事の勘ですか」 「勘じゃない。経験だ」
2017-10-11 23:44:18「何にせよ、目撃情報を元に、『部品』を投棄した人物を地道に特定していくしかないですね」 「そうだな。そっちは任せる」 「はい。では」 若い刑事が去り、タバコを美味そうに吸い終えると警部は宙に視線を彷徨わせた。
2017-10-11 23:44:42「何のためにバラバラに…?投棄者が犯人や共犯者でないとするなら…?」 考えは当分まとまりそうになかった。 「…禁煙はだいぶ先になりそうだ」 ≪完≫
2017-10-11 23:45:09ヒント
【最寄のコンビニでガムテープを買う】 【100m以上の坂を全力で駆け上る】 【駅前公園のトイレにある段ボールを多摩川へ投げ捨てる】 【1日、水以外を口にしない】 【バーガーショップでスマイルを注文する】 【大声で歌いながら○○商店街を通り抜ける】 あなたは真相に気付けましたか?
2017-10-11 23:51:40