ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル ＃３

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル】#3

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

（あらすじ：アマゾンで行き倒れたコトブキが運ばれたのはサワタリ・カンパニーという集団の砦、フォート・サワタリであった。そこで彼女はサワタリ社長を始めとする戦闘社員たちと出会った。コトブキの脚の損傷ではジャングルを越えてマナウスの都に辿り着くことは到底不可能だ）

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（一週間ほど待てば、サワタリ・カンパニーはマナウスに買い出しに行く。その際に必要なパーツ類を調達してくれるという。コトブキは感謝の気持ちで胸をいっぱいにした……）

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ジャングルから平たい頭を突き出した茶色い禿山に、灰色の石壁で囲われた、謎めいた場所がある。石壁は赤いグラフィティで彩られていたが、そのモチーフは皮剥ぎ拷問や火あぶり、斬首などで、遠くからでも相当に不穏な眺めだ。赤く錆びた鉄のゲートにはカタカナで「セメンテリオ」と書かれていた。　1

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近隣の住人はこの地を恐れ、決して付近を通過しようとはしない。ウアカリ猿やゴールデンライオンタマリン猿ですらも、その危険を察知して、生息域に選ばない。ゲートに吊るされているのは、長く吊るされてミイラ状になった企業警官隊の首だ。セメンテリオは、麻薬犯罪組織エル・キケンの砦である。　2

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死体ディスプレイと、これ見よがしなガトリング・ガン、ミサイルランチャーの装備は、企業や周辺地域への強烈なメッセージである。「ナメるなよ」という事だ。これまでの彼らの凶行は数えきれない。地域の治安に苦言を呈した政治家を拉致し、オブツダンに入れて燃やした。企業兵をピラニアの餌に。3

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偵察部隊の隊長はそのピラニアのスシを食わされて生きながらえさせられ、最終的にはスシにされて犬がそれを食べた。構成員の間で、生首ボーリング、生首クリケット、生首バレーボールなどが考案され、試された。ルール考案者は必死だ。生首スポーツのアイデアが尽きれば自分がボールにされる。4

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偵察兵の救出を試みたマナウス民兵のヘリは、付近の樹木が伐採された平地に、何らかの文字を目にする。SOSではない。「エル・キケン」のカタカナだ。それは犠牲者の体を並べた地上文字であった。ヘリは5秒後にRPG攻撃を受けて墜落し、凄惨な空撮映像は破損機体から回収されたものである。　5

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彼らは何故そのような横暴を？それは彼らのボスがデッドマンだからだ。デッドマンは恐るべき男である。上半身裸、筋骨隆々、スキンヘッドの男で、父はネオサイタマ出身、母は地元民である。両腕はタトゥーが彫られている。フジサンと鯉、アマゾン川とピラルクー。メンポは錆びた鉄。ニンジャなのだ。6

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彼らが取り扱う麻薬はひどく危険なものばかりである。使用者を手っ取り早くイグゾーストさせ、廃人と化し、その短期間で財産を搾り取る。エメツを原料とする危険なブラックベルトも特に粗悪で強力な代物を流通させていた。周辺住民は借金を負い、奴隷化し、エメツ鉱脈の採掘に送り込まれた。　7

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マナウスを分割統治するメガコーポ数社は当然この危険組織を問題視していた。しかしセメンテリオに手を出すのは難しかった。カネや残虐行為目当てで南米各地から集まった兵隊は増え続けている。下手に手を出せば到底利益に見合わないレベルの反撃を受ける事になる。人文字事件は重い教訓である。　8

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この日、彼らの砦は騒がしかった。奴隷を満載したトラック部隊が帰還したのである。「アイエエエ」「アイエエエ！」哀れな者たちは「コカイン」の黒Tシャツを着たエル・キケン兵にボーで追い立てられ、広場に集められた。セメンテリオは軍事基地、娼館、酒場、市場を兼ねた不穏な複合施設である。　9

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泣き疲れたオイランに扇で風を送らせ、黄金の椅子にふんぞり返る男が、デッドマンである。トラックが到着するまで彼が愉しんでいたのは、無意味な筋肉トレーニングだ。無作為抽出した部下にオスモウ筋肉トレーニングを行わせ、指のシルバーアクセサリーをジャラつかせながら、そのさまを見ていた。10

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トレーニング者はお互い向かい合い、片足を高く上げた姿勢で静止している。汗が流れ落ち、しかめ面が苦痛に歪む。ナムサン……これは実際危険なオスモウ・トレーニング、シコである。「シンボ！」「シンボしろ！」見物するキケン兵は面白がって囃し立てる。シンボとは忍耐をあらわす言葉だ。　11

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「美しさを保てよお前たち。苦しむ筋肉が美しいのだ」デッドマンはブラック・ガムを噛みながら早口に言った。「ンーッ……」「ンンーッ……」トレーニングの二人は顔を紅潮させ、絶対に先に足を下ろさぬよう必死だった。なぜか。答えは彼らをじっと見ているバイオドーベルマンにある。　12

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エル・キケンの構成員は増え続ける。カネと暴力を目当てにならず者は集まる。そして出ていく事はない。出ていけないのだ。それゆえ、人は余っていた。デッドマンは遊び放題であった。ハチコは狂おしい目を見開き、トレーニング者に熱っぽい目線を送っていた。「ウ……」「ウウ……」両者とも限界！13

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「グワーッ！」ついに一方が、一秒先に足を下ろしてしまった。シコを踏んでしまった！デッドマンは息を吐き、玉座から立ち上がった。手にしたカタナを向けて合図した。「ヤメテ……」見物人は異様な興奮をもって凝視した。ハチコが……襲い掛かった！「アイエエエ！アバーッ！」ナムアミダブツ！」14

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歓声と悲鳴が上がる中、彼は正座させられて待つ奴隷たちの列に向かって歩いていく。「オスモウはいい。故郷の風に吹かれるようだ」デッドマンは呟いた。「こんな暑苦しいジャングルに俺が居続ける理由など、あるか？」「ドラッグです」傍らに歩いてきた洒落た伊達男が即答した。ニンジャである。15

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「その通りだ。ドラッグだ。だが、搾り尽くすのもそう遠い未来ではない」「左様でございますな」「そうしたら次はまた戦争だ」「素晴らしい」ニンジャは褒めたたえた。胡散臭いハイブランド・スーツに身を固め、両腕に複数の金時計を嵌め、メンポをしている。彼の名はファッショニスタ。　16

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彼はデッドマンの言葉に逐一頷いていたが、おべんちゃらではなく、本心からの同意であった。無慈悲な簒奪者としての血が彼らには流れていたのだ。「どうぞ、お確かめください」ファッショニスタは奴隷たちを示した。女子供も含まれていた。デッドマンは彼らの列を悠然と値踏みして歩く。　17

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「ンンーそうか、そうか……よし……そうか」ガチガチと歯を鳴らして震える者たちの顔を間近で一人一人覗き込み、品定めしてゆく。「コレと、コレと、コレは……オオクだ」「アイエエエ！」選ばれた者たちは悲鳴を上げた。たちまちキケン兵がその数人を引きずってゆく。個人的なハレム行きである。18

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「残りは？」「半分はカニ漁、半分は採掘に回せ。適当で構わん」「かしこまりました」ファッショニスタはかしこまったオジギをした。キケン兵が奴隷たちを追い立てる。「貴様ら！そこからここまでは左のトラック！他は右のトラックに乗り直せ！」「アイエエエエ！」何たる無残光景か！　19

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採掘グループのトラックはほとんどUターンの勢いで砦を出発した。一方、カニグループのトラックはセメンテリオ内を移動し、劣悪な収容建物に駐車した。彼らは大部屋に集められ、労働力の買い手がつくたびに、ここから買い手のものへ送り出される。「歩け！入れ！」「アイエエエ……」従順！　20

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そして読者諸氏よ、胸に手を当てて祈るのは決定的人物を見てからにしていただきたい！促されるまま、俯いて大部屋に入っていく少年は……然り、エンゾではないか！彼はギングロ襲撃のあと、トボトボと周囲をさ迷い、エル・キケンの奴隷狩りに遭ってしまったのである！　21