専門記者が育たない理由

@hirougaya 烏賀陽弘道
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烏賀陽 弘道 @hirougaya

日本の報道に必要だったのは、学者や研究者といった「権威」と同じ知識を持っているかどうかではなかった。「権威」に疑問を投げかけ、その信憑性を判断する「知識」だった。それさえないから右往左往している。根本的に戦略を間違えていたのはそこだ。

2011-03-27 02:42:59
烏賀陽 弘道 @hirougaya

なぜこうした「学者」「教授」「研究者」といった「権威」に疑問を投げかける程度の知識や思考が記者に育っていなかったのか。そうした思考の枠組みや知識を積み上げるには、時間がかかるからだ。

2011-03-27 02:44:37
烏賀陽 弘道 @hirougaya

毎日、やれ外国人ホステス殺人の容疑者が捕まった、歌舞伎役者がけんかして殴られた、とか「日々の発生もの」を夜のニュース、朝刊にぶち込むだけの仕事を繰り返すのが「報道」だと勘違いしたマネージャーたちの組織運営が今日の報道の惨状を招いている。

2011-03-27 02:46:24
烏賀陽 弘道 @hirougaya

「記者は勉強不足だ」とよく言う。事実はそのとおり。しかしその内部にいた人間として言うが「まとまった時間をとって専門を勉強したい。自分のカネでいいから時間だけくれたら、報道の仕事に貢献する」と言って留学を申し出た人間に「退社しろ」と言い放つような新聞社が日本の「クオリティ紙」

2011-03-27 02:48:06
烏賀陽 弘道 @hirougaya

そういう「思考の枠組みと知識を積み上げた」「専門的な記者」を育成するのは5年(勉強2年+実地取材3年で十分)はかかる。そんなことすら怠り、そういう意欲のある記者を忌み嫌って追い出してきた管理職たちがいる限り、絶望だと思って私は新聞社を辞めた。

2011-03-27 02:49:49
烏賀陽 弘道 @hirougaya

私が「この新聞社はダメだ」と絶望したのは、まさにそういうところだった。そして今日、その杞憂であってほしいと思った劣化が、この3.11クライシスで連日現実になっている。

2011-03-27 02:50:46
烏賀陽 弘道 @hirougaya

私が最終的に「この新聞社は人材を育てる意思も能力もない」と絶望したのは35歳のとき、1998年だ。あれから13年。状況はひどくなっている、とかつての同僚たちは言っていた。そして2011年3月11日を迎えたわけだ。

2011-03-27 02:52:10
烏賀陽 弘道 @hirougaya

私は「退社しなければよかった」とは2003年5月31日以降、ただの1秒も思ったことはないです。笑 こんなに自由で清々しいのに後悔なんかするわけがないです。

2011-03-27 03:50:50
烏賀陽 弘道 @hirougaya

あの「歌舞伎役者の酔って殴られたけんか」だとか「シャブ中のストリッパー兼グラビアアイドルの逃避行」とか「落ち目の耐えんと夫婦のシャブ中逮捕と裁判」だとか、あんなことしているヒマあったら記者に時間を与えて勉強してもらえば、今みたいな惨状にはなってないんだけど。あ、直近すぎるか。笑

2011-03-27 03:55:54
烏賀陽 弘道 @hirougaya

訂正/「歌舞伎役者の酔って殴られたけんか」だとか「シャブ中のストリッパー兼グラビアアイドルの逃避行」とか「落ち目のタレント夫婦のシャブ中逮捕と裁判」だとか、あんなことしているヒマあったら記者に時間を与えて勉強してもらえば、今みたいな惨状にはなってないんだけど。あ、直近すぎるか。笑

2011-03-27 03:57:38
烏賀陽 弘道 @hirougaya

いずれにせよ、報道のいまの惨状を招いたのはきのうきょうの怠業が原因ではなく、20年以上放置した問題が集積した「複合劣化」であることは間違いないです。

2011-03-27 03:58:48
烏賀陽 弘道 @hirougaya

1986年入社である私の同期入社(いまは県庁所在地支局長、本社次長くらい?)でも「銀行と商社と新聞社と受けて、朝日新聞社に入りました」って人は多いですよ。そういう人は別に記者がどうしてもやりたかったんじゃないんでしょう。あるいは記者って何するのか勘違いしたのかも。

2011-03-27 04:04:27
烏賀陽 弘道 @hirougaya

そういえば、朝日で原発問題に熱心でよく勉強していた先輩記者は東京本社政治部に出世して配属されました。その後、その先輩が書いた原発の記事は見ません。お元気ですか? http://togetter.com/li/116675

2011-03-28 01:54:55
烏賀陽 弘道 @hirougaya

「何かひとつの体系だった知識を習得する」ことは「言語」の習得に例えると理解しやすいと思います。 http://togetter.com/li/116569

2011-03-28 20:28:27
烏賀陽 弘道 @hirougaya

「文法」を知ること、語彙を増やすことは言語の習得の二大柱です。これを「まとまった体系的知識」に置き換えると「思考様式」(文法はそのうち規則性のあるもの)と「知識」の習得といえまう。 http://togetter.com/li/116569

2011-03-28 20:53:50
烏賀陽 弘道 @hirougaya

知識=語彙は暗記でも大丈夫ですが、思考様式の習得はまとまった時間が必要です。 http://togetter.com/li/116569

2011-03-28 20:55:36
烏賀陽 弘道 @hirougaya

私がコロンビアの大学院で学習した経験でいうと、非日本的思考、価値観、知識、国際政治に特有の知識、概念、思考、価値観、行動様式などをたどって、ミニマムの要求を満たすのに2年かかりました。その間に3ヶ月ワシントンの連邦議.. http://togetter.com/li/116569

2011-03-28 20:58:19
烏賀陽 弘道 @hirougaya

記者の仕事から2年切り離されて学校のような場所に行くだけでも、ミニマムの体系的な知識は学習できます。 http://togetter.com/li/116569

2011-03-28 20:59:19
烏賀陽 弘道 @hirougaya

理想をいえば、そのまま見習い的に1年ほど実務の場で研修できればいうことなしです。 http://togetter.com/li/116569

2011-03-28 21:00:19
烏賀陽 弘道 @hirougaya

経験でいうと、2年学習、1年は実際に取材して記事を書く、という3年の経験でも、「専門家」の話す言葉を理解できる程度にまでは「不勉強でない記者」を育成できます。5年かければ十分でしょう。 http://togetter.com/li/116569

2011-03-28 21:02:00
烏賀陽 弘道 @hirougaya

私が勤務した朝日新聞社では、そのような人材の育て方は、死滅しました。90年代前半の話です。 http://togetter.com/li/116569

2011-03-28 21:03:01
烏賀陽 弘道 @hirougaya

「専門家の話す言葉を理解できる記者」の必要なジャンルは増えています。原子力、原発だけではありません。日米関係、軍事、医療、など。 http://togetter.com/li/116569

2011-03-28 21:04:55
烏賀陽 弘道 @hirougaya

「体系だった勉強がしたいので、2年間留学したい」と上司に申し出て「辞表を書け」と迫られ退社した後輩もいます。自分のお金をつかって勉強して仕事に還元したいとまでいう士気の高い記者はこうして追い出されました。 http://togetter.com/li/116569

2011-03-28 21:13:27
烏賀陽 弘道 @hirougaya

そうした記者たちの士気をへし折るのは、愚鈍な管理職だけではなく、「不公平だ」とピーピー嫉妬で騒ぐ同僚や後輩でもあることは、拙著「朝日ともあろうものが」に書きました。 http://togetter.com/li/116569

2011-03-28 21:15:09