ハスヌマの修士論文の超ダイジェスト版(前編)

省エネルギーと地域冷暖房をテーマに修士論文を書いたのが○○年前。あの時の熱い思いが今よみがえる!(後編のダイジェストをTweetすることは、今のところ予定していません)
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Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

まず、日本の発電はすごく大雑把に言って、火力5:原子力3:水力他2の比率。これには地域差が結構あって、例えば関東(東京電力)では原子力とLNG火力の比率が高くなっている。

2011-03-27 02:27:41
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

火力発電は効率が悪く環境負荷も大きいとされている。例えば化石燃料を燃やしてお湯を沸かすと、発生した熱の約8割が使われる。発電の場合では約3分の1の熱量が電気に変換され、残りは熱のまま捨てられる。

2011-03-27 02:32:24
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

ただし、近年の火力発電所は高効率化が進み、例えば東京電力管内の火力発電所は多くが40%以上の熱効率を誇る。中でもガスタービンを使ったダブルコンバインドサイクル発電を行っている横浜・品川・富津(一部のみ)は熱効率50%を突破し、最新の川崎火力では熱効率53%に到達している。

2011-03-27 02:35:04
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

ダブルコンバインドサイクル発電とは、1100~1500℃の高温ガスでガスタービン発電を行い、余った熱量でさらに蒸気タービンを回して発電するというもの。2段階で発電することで、使える熱は徹底的に使うという発想だ。

2011-03-27 02:37:45
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

火力発電は、それでも無視できないロスが発生する。たとえ最新の火力発電所でも50%前後のエネルギーを捨てていることには違いがない。

2011-03-27 02:41:02
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

さて、エネルギーの分野では、一次エネルギー効率と二次エネルギー効率という考え方がある。一次エネルギーとは主に化石燃料、二次エネルギーは電力だが、一次エネルギー→二次エネルギーにおけるロスが地球環境に負荷をかけている、と考えられている。

2011-03-27 02:43:17
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

少なくとも東京電力管内では火力発電所の高効率化は進められている。他の地域は知らない。それでも火力中心では京都議定書のお約束を守れない。いわゆる自然エネルギーは商用レベルでは熱効率が低すぎて使えない。特に自然エネルギー中心の発電なんて決してやってはいけない選択。

2011-03-27 02:46:31
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

まあ、生活の何から何まで電気が必要なわけではなく、例えば冷暖房と給湯は一次エネルギーから作れる。よくあるパターンでは、7℃の冷水で冷房、43℃の温水で暖房、60℃の温水で給湯するというもの。このときの冷水・温水を作るための熱効率は、少なくとも発電してその電気で作りよりは良い。

2011-03-27 02:53:56
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

冷暖房・給湯用の冷水・温水はそのまま建物や各部屋に送り、冷水または温水にファンを当てて冷風・温風を作り出すタイプのエアコンに使用する。ちなみに給湯は実用的見地から60℃供給が多いが、1980年代の家庭向け設備では80℃の温水を供給していた。

2011-03-27 02:56:36
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

このシステムは東京ガスがTESやHEATSという製品で実用化しており、我が家にもTES(全自動風呂つき)と温水式ファンヒーターがある。これらは発電というステップがない分、電気式冷暖房・給湯設備より効率がよい(というのはわかるよね?)。

2011-03-27 03:06:03
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

冷水を供給する場合、ボイラーで作った高温水から冷凍機を用いて冷水を作るという過程が必要。ビル単位で設置する吸収式冷凍機は性能悪いが、地域冷暖房プラントで使っている大型の二重効用吸収式冷凍機は結構な性能を誇る。もっとも、新宿新都心ではそれでも足りずターボ冷凍機を使っているけど。

2011-03-27 03:11:59
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

全国の一定規模以上の複合施設には、計画時に地域冷暖房導入の検討が義務づけられている。もちろん諸事情により地域冷暖房を導入できない施設も多いのだけど、それでも頑張って今では150弱の施設・地区に地域冷暖房が導入されている。 http://bit.ly/hMVzZi

2011-03-27 11:23:30
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

地域冷暖房のメリットは熱さえ作れればその手段は何でもいいこと。個別の建物では採算に合わない方式でも、中央のプラントでスケールメリットを生かせば採算が取れる場合もある。だから地域冷暖房にはいろいろな方式がある。

2011-03-27 11:28:36
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

地域冷暖房の方式が何でも良い例として、河川水の熱を使用する方法がある。これは外気温に比べて河川水の温度があまり変わらないことに目をつけて、河川水の熱をヒートポンプでくみ上げて使用するというもの。実際に東京の箱崎(日本IBMのビルの周辺)でやっている。ちなみに東京電力の施設だ。

2011-03-27 11:32:43
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

地域冷暖房は発電やゴミ焼却の排熱を使ってでもできる。東京の光が丘団地と品川八潮団地では、隣接するゴミ焼却施設の排熱を使って住宅へ暖房・給湯用の温水を供給している。

2011-03-27 11:35:04
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

ただし光が丘や品川八潮のような、ほぼ住宅専門の地域冷暖房は普及しなかった。住宅で使う熱エネルギーはたかが知れていて通常はペイしない。マンモス団地の光が丘と品川八潮だからできたこと。臨海副都心の団地が地域冷暖房の対象から外されたのも、その規模ではコストがかかりすぎるからだ。

2011-03-27 11:42:14
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

地域冷暖房の熱需要を見ると、どこも似たような傾向にある。オフィスビル(主な供給先)は昼間こそ熱需要は大きいけれど夜になると一気に下がる。住宅は1日を通して熱需要は一定だけどいかんせん量が小さい。ホテルは1日を通じて熱需要があってしかも相当量に達する。

2011-03-27 11:47:06
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

僕は大学時代に都内の地域冷暖房を十数地区調査したけれど、黒字化して順風満帆の地域冷暖房に見られた特徴は、(1)供給先にホテルが含まれている、(2)住宅はあってもなくても大差ない、の2点であった。

2011-03-27 11:48:38
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

さて話は少し戻り、地域冷暖房の熱源として発電の排熱が使えることの紹介を。複合施設のいくつかは自家発電用のガスタービンを持っていて、これの排熱で冷水と温水を作り冷暖房・給湯用の熱として供給している。

2011-03-27 11:51:41
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

自家発電の排熱を使っている例として、恵比寿ガーデンプレイスがある。ここには1500kW級のガスタービンが4基設置されていて、施設で使用する約半分の電力をまかなっている。その排熱を使って、施設内のほぼすべての建物―オフィスビル、ホテル、文化施設、超高層住宅―に熱を供給している。

2011-03-27 11:54:28
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

先に住宅専門の地域冷暖房は普及しなかったことに言及したが、住宅への地域冷暖房導入事例は増えている。都心区では住宅付置義務というのがあって、新しくオフィスビルを建てるときには一緒に住宅を作らなければいけないことになっている。この付置義務で作られた住宅に熱が供給されるというケースだ。

2011-03-27 12:04:11
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

恵比寿ガーデンプレイスよりもっとすごい例が六本木ヒルズだ。すべての電力は自家発電、その排熱で全域に熱を供給するという徹底ぶり。これは森ビル社長の信念がそのまま形になったものだが、燃料(ガス?)から徹底的に熱を取り出そうという意志が伝わってくる。

2011-03-27 11:59:54
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

住宅付置義務で建てられた住宅はオフィスビルに隣接しているから、熱供給時のロスはあまり考えなくていい。熱供給事業法では基本的に対象地区内の全建物への供給が義務づけられるのだが、付置義務住宅は相応の規模のものもあるし、デメリットも小さいから供給対象になっているケースが多い。

2011-03-27 12:11:42
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

では付置義務住宅の居住者は地域冷暖房をどう思っているの?というのが僕の学位論文+修士論文のテーマ。余談だけど、この研究、途中から科研費が付いたおかげでお金の不自由なく存分に研究できました。他の卒論では学部生にボランティアを募るところを、僕のはアルバイトとして募集できたくらい。

2011-03-27 12:16:23
Kenji HASUNUMA "btnrouge" @btnrouge

僕の研究成果からのメッセージ:電気だけがエネルギーのすべてじゃない。エネルギーにだって適材適所はある。例えば冷暖房や給湯は電気でやる必要はなくて、効率化のために地域冷暖房という選択肢もある。エネルギーの効率的な利用こそが省エネルギーにつながる。

2011-03-27 12:21:42