大阪都構想についての一考察

大阪都構想の目指すものとは何か? 地方分権、地方財政、地域経済、税制などの面から、かなりざっくりした考察です
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バレット @Barrettm95sp

まず大前提として、私は大阪市のみを特別区に置き換える大阪都構想ではなく、大都市地域特別区設置法に則り大阪市の周辺10市も参画する大阪都構想を想定しています 法の規定では、大阪市に隣接する周辺10市は市域の分割が無い限りは、住民投票を経ず市議会の議決のみで都構想に参画が可能です

2017-11-02 09:54:34
バレット @Barrettm95sp

【地方財政論1】 都構想は、基礎自治→分権・広域行政→集権の均衡を企図しています 地域ごとに住民のニーズが異なる公共サービスの供給においては、国よりも自治体の方が情報の面で比較優位であり(オーツの分権化定理)、基礎的住民サービスは権限と財源を移譲された自治体が行うのが効率的です

2017-11-02 09:54:55
バレット @Barrettm95sp

地域において、主権者たる住民をプリンシパル、その委託を受けた行政をエージェントと見做すと、住民が行政活動の高度な専門性から正しく評価・監視できないことに乗じ、時として行政が住民利益でなく自己の利益拡大や組織防衛に走るモラルハザードの問題(エージェンシースラック)が起こりえます

2017-11-02 09:55:14
バレット @Barrettm95sp

エージェンシースラックの原因としては、住民と行政が所有する情報の格差(情報の非対称性)、また行政が開示した情報に基づく合理的な判断を住民が下せないこと(限定合理性)が考えられます さらに行政は時に、企業のロビイング(レントシーキング)におもねり、非効率な公共政策を行います

2017-11-02 09:56:08
バレット @Barrettm95sp

つまり、規模の大き過ぎる自治体では住民の監視が困難となり、所有する情報も膨大であるため、住民への情報開示が進み難く、また住民が評価するのもやはり困難であることから、行政のモラルハザードや非効率を招きやすい これらのことから、行政・住民いずれの側からみても分権が望ましいと考えます

2017-11-02 09:57:26
バレット @Barrettm95sp

基礎自治の分権の後、特別区間では“切磋琢磨”が起こると維新は説明しています 現住の特別区における公共サービスに不満があり、それを選挙での投票行動(手による投票)で解消できなかった住民は、自身にとってより便益をもたらす他地域に転出することで意思を示す(チボー仮説「足による投票」)

2017-11-02 09:57:46
バレット @Barrettm95sp

人口減少社会において、「足による投票」は自治体間に住民獲得を巡る競争をもたらし、結果自治体には住民への奉仕を規律付けます それはまた、行政の効率的な財政運営への圧力となり、自治体は住民がどのような選好を持っているか情報収集に努めると同時に、情報開示にも積極的になると考えられます

2017-11-02 09:58:05
バレット @Barrettm95sp

また、従来の“手による投票”においても、住民が近隣自治体と現住自治体の施政を比較して良否を判断し、それを基準に選挙によって首長・議員への評価を下すことで規律づけ、政治家は自ずと近隣自治体の優良政策を模倣し、結果住民の便益が向上する(ヤードスティック競争)という効果も期待されます

2017-11-02 09:58:24
バレット @Barrettm95sp

東京都の都区財政調整制度をみると、人口が各区への配分に与える影響が大きい傾向があり、よって自治体は住民の選好を強く意識することに繋がると考えられます ただし、足による投票やヤードスティック競争が財政錯覚(政治家によるバラマキ政策)を招き公共支出が過大にならないよう留意も必要です

2017-11-02 09:58:43
バレット @Barrettm95sp

なお、米国の効率的分権化論を例に足による投票が地方を疲弊させる、また特別区間の切磋琢磨は格差を拡大させ、“負け組”区で住民の厚生が低下するとの反論もみられますが、米国と違いナショナルミニマムの再配分が機能する日本においては、あくまで基礎的サービスの上のインセンティブ競争と捉えます

2017-11-02 09:58:59
バレット @Barrettm95sp

【地方財政論2】 各地域は経済的に相互依存関係にあり、人・財・物・サービスは自治体の境界を跨いで移動します(地域経済の開放性) それは大阪のように人口の集中する都市部で特に顕著であり、自治体の行う政策は地域住民だけではなく、他の自治体の住民にも影響を及ぼします(財政の外部性)

2017-11-02 16:50:49
バレット @Barrettm95sp

「財政の外部性」には租税競争・租税輸出・スピルオーバー効果があります 第一に、租税競争とは減税(或いは補助金の支給)による企業の誘致合戦であり、海外からの誘致やベンチャー育成などを除けば、単なる税のダンピング競争に陥る可能性があり、減税分だけ住民サービスに充てる財源を費消します

2017-11-02 16:51:38
バレット @Barrettm95sp

例)大阪市にあるA社を堺市が誘致 大阪市で1億円の法人税を納めていたA社に、堺市は5千万の補助金を約束、堺市が新たに得る収入は5千万 A社の転入は雇用をもたらすが、従業者が堺市民とは限らない。またA社が浮いた5千万を使って商品を値下げしても、恩恵を受ける顧客が堺市民とは限らない

2017-11-02 16:51:55
バレット @Barrettm95sp

つまり、隣り合わせの大阪市と堺市を同じ大阪都市圏としてみた場合、都市圏内で単に5千万の実入りが減り、自圏内の公共サービスに充当できうる財源が他地域に拡散しただけということになります ナッシュ均衡の結果パレート最適が実現しない、協調の失敗と捉えられます

2017-11-02 16:52:14
バレット @Barrettm95sp

第二に、租税輸出とは地域外に税負担を転嫁することです 地方税は、受けた公共サービスに応じて負担する税の要素が強く(応益原則)、住民税もその一つ ただ、例えば自治体が過大な公共支出により財政難となり、増税を行う場合、住民税の超過税率を用いると有権者の反発を招く政治的リスクがあります

2017-11-02 16:53:21
バレット @Barrettm95sp

一方、増税のターゲットとして法人課税を用いた場合、法人は増税分を商品の価格に転嫁し、間接的に地域外の顧客もその税負担を負うことになります このような「租税輸出」による公共サービスの受益者と税の負担者の乖離は、政治的リスクを負わなくて済む自治体の財政規律を緩ませる原因ともなります

2017-11-02 16:53:40
バレット @Barrettm95sp

第三に、ここでいう「スピルオーバー効果」とは、自治体の公共支出の便益が、その行政区域を超えて費用負担していない他の自治体に及ぶこと スピルオーバー効果は様々な公共支出で発生します。ある自治体が道路や河川を整備すれば、その道路延長線上或いは下流の自治体は時に無償で便益を得られます

2017-11-02 16:53:56
バレット @Barrettm95sp

ここでいうスピルオーバー効果は地域外に正の外部性(便益)をもたらし、先ほどの租税輸出は地域外に負の外部性(税負担)をもたらします そして自治体の公共支出は 地域外に正の外部性をもたらす時 → 過少になる 地域外に負の外部性をもたらす時 → 過大になる ことが知られています

2017-11-02 16:54:17
バレット @Barrettm95sp

このような地域経済の開放性による自治体財政の外部性は、狭小で人口が集中する大阪のような地域で顕在化しやすく、それは前述の分権化の妨げとなります よって「財政の外部性」を無視した大阪自民の「大阪府廃止・政令市化案」や、大阪市の分市といった案は、極めて稚拙であると言わざるを得ません

2017-11-02 16:54:37
バレット @Barrettm95sp

つまり、【地方財政論1】で述べた分権化の必要性に対し、財政の外部性は分権化によって受益と負担の関係を一層複雑にし、自治体の財政規律を緩ませることを示唆します しかしその解は、経済的に相互依存関係にある自治体同士が同じ財布を持つ、大阪都構想の特別区財政調整制度にあると私は考えます

2017-11-02 16:55:10
バレット @Barrettm95sp

財政の外部性に係る問題を、異なる経済主体である自治体同士のの広域連携で解決するには、取引費用があまりにも掛かりすぎます これまで既に地方財政論の文脈において、財政の外部性が及ぶ広域の範囲で地方政府を一体化させることが解決策の一つと語られており、私はその論が援用できると考えています

2017-11-02 16:55:33
バレット @Barrettm95sp

【地域経済論】 地域経済の活性化と雇用の創出には、地域の経済構造と特徴に合わせた合理的な政策が求められます 地域経済を大きく分けると、地域外が主な市場となる「域外市場産業(製造業や観光業等)」と、地域内が主な市場となる「域内市場産業(小売業やサービス業等)」の2つがあります

2017-11-04 09:51:10
バレット @Barrettm95sp

これをお金の流れでみると 例) 1製造業の会社が地域外に製品を販売し売上を得る 2会社が従業員に給料を支払う 3従業員が地域内の商店で買い物をする 4商店が従業員に給料を支払う 5その後34が繰り返されることで域内需要が拡大 これが近年国も推進する「地域経済循環」モデルです pic.twitter.com/i2R0JQwBG4

2017-11-04 09:52:05
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バレット @Barrettm95sp

お金の流れをさらに整理すると 1産業が付加価値を生み出す(生産) 2生産された付加価値が労働者の所得になる(分配) 3分配された所得が消費に回る(支出) 国レベルでは常にこの3つの金額は等しくなる(三面等価原則)が、地域レベルでは前節の「経済の開放性」により等しくなりません

2017-11-04 09:52:57
バレット @Barrettm95sp

以下は、私のフォロワーさんには堺市長選時の経済分析でおなじみ「地域経済循環図」の大阪府域版です 図は先ほどの生産→分配→支出を表しており、左上の地域経済循環率は108.4%。つまり大阪府は経済的に自立していると言えます(ちなみに兵庫県は92.8で残念ながら自立できていません) pic.twitter.com/dpZo86IMyt

2017-11-04 09:53:48
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