最近「愛着」という言葉をよく聞くが

最近、お子さんの問題行動や、障害について「愛着」という言葉からで納得しようとする方が多いように見受けます。一種の流行のようになっています。非常に疑問に感じるので、ちょうどよいツィートが流れて来たので、まとめを作ってみました。
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工藤晋平 @shimpei_kudo

岡田氏の件ですが、私も岡田氏の本は避けて通っているのであまり知りませんが、少なくとも愛着障害で問題を論じること、愛着で問題を論じすぎること、については指摘できると思います。(以下、アタッチメントも愛着もattachmentを指しています)

2017-11-22 21:15:32
工藤晋平 @shimpei_kudo

対人関係上の問題、精神疾患、非行・犯罪、そして子どもから大人まで、どの精神衛生上の問題を取り上げてもたいていアタッチメントの問題が指摘できます。調査を行えば不安定型のアタッチメントが優勢となるでしょう。しかし、このことは必ずしもアタッチメントが問題の原因であることを意味しません。

2017-11-22 21:15:37
工藤晋平 @shimpei_kudo

それだけ異なる精神衛生上の問題にアタッチメントの不安定性が指摘されるということは、逆にアタッチメントだけではそれらを説明できないことを意味しています。アタッチメントは精神衛生上の問題に広く関わる因子なのでしょう。けれどもそれだけが問題の要因であるわけではありません。

2017-11-22 21:15:38
工藤晋平 @shimpei_kudo

ある人があるパーソナリティ障害に至るのは、ある人がある対人関係上の問題を持つのは、ある人がある情緒的な問題を持つのは、ある人がある犯罪を行うのは、それぞれに固有の因子が働いているのです。アタッチメントが共通する因子であるとしても、それだけが共通する因子というわけではありません。

2017-11-22 21:15:39
工藤晋平 @shimpei_kudo

先頃書いた論文をもとに説明すると、非行・犯罪の発達には、子ども自身の問題(気質、パーソナリティの問題など)、親自身の問題(犯罪歴、精神障害など)、親の養育(虐待、監督など)、子のアタッチメント、家庭環境(夫婦の不和、経済的状況など)、近隣環境(犯罪受容性など)、

2017-11-22 21:15:41
工藤晋平 @shimpei_kudo

友人関係(非行仲間など)、学校関係(学業未達成など)の複数の要因が関わっています。アタッチメントはこの1つであり、また発達段階によってもその重要性が異なります。非行少年や犯罪者のアタッチメントを調査すれば不安定が他が多数を占めます。けれどもそれだけでは非行・犯罪を説明できません。

2017-11-22 21:15:42
工藤晋平 @shimpei_kudo

また、ここに含まれる虐待、経済的状況などはアタッチメントと同じく様々な精神衛生上の問題に関与しています。時折虐待経験があることとアタッチメントが不安定であることを同じに考える人がいますが、アタッチメントは子どものある状態です。虐待は養育者側の行動です。それぞれ別の概念です。

2017-11-22 21:15:43
工藤晋平 @shimpei_kudo

そのようのことが一般的な対人関係上の問題にしても、精神疾患にしても言えるわけです。アタッチメントは精神衛生上の問題の発生の「リスク」を高めます。けれどもそれが「原因」ではありません。また、唯一の「リスク」因子でもありません。愛着で説明することの問題とはそういうことです。

2017-11-22 21:15:43
工藤晋平 @shimpei_kudo

さらに岡田氏始め修復的愛着療法の人達は、こうした時に取り上げられるアタッチメントの不安定性を意図的にか理解が足りないのか、愛着障害と混同させます。両者は全く異なる概念です。日本には愛着障害者はいない、と言っても良いくらいだと個人的には思っています(もちろんこれは言いすぎです)。

2017-11-22 21:15:45
工藤晋平 @shimpei_kudo

愛着障害の乱用については(児童)精神科医、児童福祉領域の従事者、心理士等にも見られるので、解決には時間のかかる問題です。けれども愛着障害とはアタッチメントシステムが作動しない状態であり、アタッチメントの不安定性は防衛的に作動するものです。両者は全く異なります。

2017-11-22 21:15:46
工藤晋平 @shimpei_kudo

例えるなら、愛の反対は憎しみか無関心かぐらい違います。例え憎しみを向けているとしても、それはもともと希望があるからです。そこにすでにアタッチメントシステムの作用を見て取れます。対してアタッチメントシステムが沈黙した状態においては、養育者(というものがいれば)の価値はゼロです。

2017-11-22 21:15:47
工藤晋平 @shimpei_kudo

そうした全く異なる概念を自分たちの治療法のために混同させて使用し、専門知識のない現に今困っている人を引き込むのが彼らの問題です。それは糾弾されるべきことです。これが愛着障害で説明することの問題です。

2017-11-22 21:15:48
afcp @afcp_01

確かに反応性愛着障害は極めて少ないと言っていいような気がするけど、脱抑制型対人交流障害はそこそこいるような気がするなあ。これも個人的にそう思うというレベルでしかないけど。 twitter.com/shimpei_kudo/s…

2017-11-22 22:04:45
afcp @afcp_01

(児童)精神科医を含む専門家が愛着障害という用語を乱用しているという現状は、残念ながらその通りかな、とは思うな。狭義の反応性愛着障害と不安定型愛着の概念の使い分けとかは、専門家であれば期待してもよいと思うのだけれど。

2017-11-22 22:13:35
ヒヨコ【ポムポムサニー】 @hiyokoharumaki

愛着の話、流行ってるよね。個人的にちょっとなあって思うのは、学校で困った行動をする子たちを「愛着が」と言ってしまって、だからここで出来ることはありませんよって話に持っていく人が、保護者にも先生にもいるってこと。なにげに排除のための理論として使われがちよね

2017-11-23 08:17:51
阿部 利彦 @zubattored

小・中学校でのケース会議で「愛着」という言葉が出たら「他の視点で検討しませんか?」とお願いする。学校での具体的支援を検討する場で「愛着」を語り出すと「だから支援は難しいよね」という方向に向かいやすい。他に検討すべきこと、やれることがある。

2017-11-23 18:36:54