ツイッター小説・電脳魔術師・大十字神威「バーチャル・ファイト・フェイク」

電脳魔術師・大十字神威vsニセモノ!電子空間内で繰り広げられる魔術戦を見よ!
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ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

(これまでのあらすじ)電脳魔術師・大十字"ドンキホーテ"神威は、ある朝目覚めるととある電脳空間に閉じ込められていた。一辺が一〇〇メートルの立方体に定義されたその空間には、神威と、彼そっくりの"ニセモノ"だけが存在していた。混乱する神威をよそに、ニセモノが語り掛けてくる――。0

2017-12-12 23:37:28
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

「ドーモ、ドンキホーテ=サン。ドンキホーテです」「ドーモ、ドンキホーテです」暗黒空間に蛍光緑のワイヤーフレームだけが走る電脳空間の中で、二人の男が対峙する。二人のアバターは共に黒コートに黒のフルフェイスマスクという黒づくめであり、寸分違わず同じであった。1

2017-12-12 23:37:38
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

何者だ?何故こんな電脳空間に閉じ込められている?やったのは奴か?あれは何故僕"そのまま"の姿なんだ?数多の疑問が"ドンキホーテ"神威の胸によぎる。そんな神威の心中を見透かしたかのように、偽物が口を開く。「私は貴方のニセモノです。この電脳空間で貴方を殺し、貴方の身体を頂きます」2

2017-12-12 23:37:46
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

「僕の身体を乗っ取るつもりか。そうか、お前は最近噂の秘密結社・オルタナティブの魔術師だな!?」秘密結社オルタナティブ。電脳魔術師の意識体を電脳空間に拉致、その意識体を破壊する事で身体を奪い、勢力を拡大する。そんな連中に、神威は狙われたのだ。「その通り。死んで頂きます!」3

2017-12-12 23:37:55
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

「"穿て・グングニル"!」「"阻め・アイギス"!」ニセモノが放った魔術攻撃――槍状力場の突撃を、神威は防御力場を展開し受け止める。槍状力場と防御力場は相殺され、共に砕け散った。「"穿て・グングニル"!」ニセモノはそれに頓着することなく、第二撃を放ってくる!4

2017-12-12 23:38:03
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

「"阻め・アイギス"!」相殺!「"穿て・グングニル"!」「"阻め・アイギス"!」相殺!「"穿て・グングニル"!」「"阻め・アイギス"!」相殺!「"穿て・グングニル"!」「"阻め・アイギス"!」相殺!「"穿て・グングニル"!」「"阻め・アイギス"!」相殺!5

2017-12-12 23:38:15
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

魔術を放ちながら、ニセモノは胸中でほくそ笑む。自分のグングニルは神威のアイギスに阻まれ続けている。だが、それゆえに神威は攻撃に移れない。盾をいくら掲げようと、相手を倒すことは出来ない。勝機は攻撃を続ける自分にある。勝利を確信しながら、ニセモノは魔術を水平に発射し続ける。6

2017-12-12 23:38:23
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

――待て。水平に?ニセモノの思考に疑問が浮かぶ。自分はグングニルを神威に向けて、動くことなく発射し続けていた。受ける神威が真横に走っていたため、グングニルも水平に撃ち続けることになったのだ。神威は攻撃を阻みながら、こちらから見て左に走り続けている。――走り続けている?7

2017-12-12 23:38:32
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

一方に走れば、いずれこの閉鎖空間の端に着くはずだ。だというのに神威はどこかに辿り着くことなく、走り続けている。何故か。答えは一つ、ニセモノを中心に、時計回りに走り回っているのだ!――何故!?と驚愕の思考を浮かべたニセモノは、次の瞬間その答えを知った。8

2017-12-12 23:38:40
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

「ようやく近づけたな、ニセモノ!」いつの間にか、神威がニセモノの眼前に立っていた。神威は、ニセモノのグングニルを受けながら、時計回りに螺旋を描きながらジワジワとニセモノとの距離を詰めていたのだ!その行動は実を結び、ニセモノと神威との距離はほぼゼロ距離にある!9

2017-12-12 23:38:48
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

「く、グヌーッ!」唸りながら後方に逃げるニセモノを、神威が追いかける。「"決着を・セクエンス"!」短剣が神威の手元に召喚され、その手が閃く。「グワーッ!」ニセモノの悲鳴が、切り離された頭から放たれた。「サヨナラ!」末期の言葉だけを残し、ニセモノは爆発四散した。10

2017-12-12 23:38:56
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

「フゥー……」深く息をつきながら、神威は周囲に意識を向ける。ニセモノの仲間による不意打ちを警戒したためだ。しかしそのようなことはないようだ。暗黒空間に蛍光緑で敷かれたワイヤーフレーム以外は、この閉鎖空間には存在しないらしい。そのワイヤーフレームの直線が、歪み始める。11

2017-12-12 23:39:08
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

ワイヤーフレームが歪み、グルグルとネジ曲がり、一つの穴が出来る。「出口か」呟きながら、神威はその穴を目指す。穴を通れば、自分の意識は、自分の元の身体に戻るだろう。「秘密結社・オルタナティブ……か」電脳魔術師の身体の乗っ取りを企む組織。放置すれば危険だろう。12

2017-12-12 23:39:17
ホムラ ショウイチ @Negaposiwalker

「帰ったら調べよう。そして、制裁を」自分に敵対した組織への報復を宣言しながら、神威はワイヤーフレームの穴へと姿を消した。後に残った閉鎖空間も、中に誰もいなくなったことで意味を失い、電脳空間の虚ろへとデータ分解していく。後には何も残らず、ただ電脳空間の闇が広がっていた。13(終)

2017-12-12 23:39:27