2018年1月10日

古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 #5

第六鎮守府の艦娘や提督の雷に圧力をかけようとする岸本。その目的は。そして対する金剛の思惑は。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「先日のことだが、この泊地の市街地で傘もささずに三時間以上も雨の中立ち続けていた艦娘というのは君だね?」 岸本が古鷹ねーさんに言い放った。何か嫌なものを飲み込んだような鈍い痛みが走った。それは、私たちの踏み込まれたくない領域に遠慮会釈なしに踏み込んできた岸本への強烈な拒絶反応。

2018-01-09 22:47:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

それは同時になぜこの男はそんなことを知っているのか、そしてなぜ今この場でそれを持ち出したのかという得体の知れなさでもあった。 「はい、そうです」 一方で、古鷹ねーさんはそれが何でもないことであるかのように何の動揺も見せずに返事を返した。それを認めた岸本の唇が歪んだように見えた。

2018-01-09 22:51:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「結構。では、その光景を市街の人間に見られ、気味悪がられていたということは知っていたかい?」 「いいえ」 岸本の口角が一層上がる。これ以上この男と古鷹ねーさんを会話させてはいけない。その思いに突き動かされ、私が一歩踏み出そうとした時、部屋のドアが勢いよく開かれた。

2018-01-09 22:55:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「何をしているの!」 飛び込んできたのは雷ちゃん、それに金剛さんだった。 「勝手にフラフラされては困りますネー。それに艦娘とは言えレディーの部屋まで視察する必要がおありとは思えませんケド?」 「これは手厳しい。しかし彼女の了承は取ったし、表から眺めるだけではわからないこともある」

2018-01-09 22:59:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

その言を聞いて、やはり岸本は信用ならない、と改めて感じた。この男は私の部屋をノックした時も名乗りはしなかった。古鷹ねーさんだって外にいるのが岸本だとは知らずにドアを開けたはずだ。 「御用がお済ならとっとと出て行っていただきまショウカ。アナタが以前にこの鎮守府から消えた時のように」

2018-01-09 23:03:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「ははは! 相変わらずだな、金剛は」 岸本に呼ばれた金剛さんがあからさまに顔をしかめる。いつも笑顔で心中を読み取らせない金剛さんには珍しいことだった。 「しかし、残念ながらそういう訳にはいかないな。なにしろ、見たところこの鎮守府には少々問題があるようだからね」

2018-01-09 23:07:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

金剛さんが片眉を吊り上げる。それを意にも介さず、岸本は演説するかのように口を開いた。 「先月施行された法律は知ってるね? 小規模海上移動体の運用の円滑化の促進に関する法律、通称艦娘法だ。これによって鎮守府と艦娘は国の管轄下に置かれることになった。国には艦娘を律する義務があるんだ」

2018-01-09 23:11:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「艦娘の運用の基本は、文民統制ならぬ人間統制だ。深海棲艦と戦える強大な武力を持った艦娘に、野放図に暴れることを許しておける時代はすでに過ぎ去った。艦娘しかいない鎮守府には、艦娘の手綱を握れる人間の提督が必要なんだよ」 岸本が自らの言葉に酔っているかのように得意げにしゃべり続ける。

2018-01-09 23:15:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「何をバカなことを。艦娘を野放図に暴れ回らせるだけで深海棲艦と戦いになるとでも? トラック泊地でも指折りの戦果を挙げている第六鎮守府の体制をむやみに変える必要があるとは思えまセン」 金剛さんが反駁する。しかし、岸本はニヤニヤ笑いをやめはしない。

2018-01-09 23:19:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「だから君たち艦娘だけに任せてはおけないと言うんだ。艦娘の役割は戦場で深海棲艦を沈めるだけじゃあない。自らの姿を以って守るべき相手である人間に安心を与えることも重要な仕事だ。よく頭の回る金剛ならそのくらいのことは知っていると思ったけどねえ」 金剛さんが両拳に力を込める。

2018-01-09 23:23:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「……何が言いたいんデスカ?」 「傘もささずに雨の中に何時間も突っ立っていて平気な顔をして、人々に恐怖を抱かせるような艦娘は、艦娘失格だということさ」 瞬間、体中の血液が沸騰するような感覚がした。ふざけんじゃないわよ。古鷹ねーさんが艦娘失格なら、誰が合格だというのか。

2018-01-09 23:27:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

いついかなる時でも訓練を欠かさない勤勉さ。どんな戦況でも冷静さを失わない判断力。誰よりも先に死地に飛び込み、自分を犠牲にしてでも任務を果たそうとする責任感。艦娘のあるべき姿を体現したような、体現しすぎてしまっているような古鷹ねーさんに向かってよくもそんなことを。

2018-01-09 23:31:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

身体が衝動に突き動かされる。岸本との距離が詰まる。視界が真っ赤に染まる。岸本に向かって拳を振り上げる。それを。 「えっ……?」 私が振り上げた腕は、横合いから伸ばされた手にがっちりと掴まれ、微動だにできなかった。女の子とはいえ、艦娘の腕力を人間が抑え込めるはずもない。つまり。

2018-01-09 23:35:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

私の腕を掴んでいるのは、岸本に随行していた吹雪改二だった。私より一回り以上小さい駆逐艦の身体が、私がいくら力を込めても全く動かなかった。吹雪改二は一言も発さず、顔にも何の表情も浮かんでいなかったが、掴まれた腕からはそのすさまじい練度が感じ取れた。

2018-01-09 23:39:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

それに畏怖めいた感情を覚えていると。 「衣笠!」 金剛さんの声ではっと我に帰り、慌てて腕を引く。 「おやおや、早速これだ。人間に向かって暴力を振るうとは全く嘆かわしい! やはり上に立っているのが同じ艦娘では、部下の艦娘の規律も乱れるということだねえ」 岸本が大げさに頭を振る。

2018-01-09 23:43:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「見たところ、これ以外にも装備品の点検不良、マニュアルにない艤装の改造、訓練中の艦娘の態度の乱れなどなど、鎮守府内の規律違反は数えきれない! まことに遺憾だが、鎮守府を預かっている提督の責任問題は免れない」 岸本が勝手なことを言い続けているというのに、雷ちゃんは下を向いたまま。

2018-01-09 23:47:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

まさか、このままこの男の言いなりになるつもりなの。 「深海棲艦が現れ、得体の知れない艦娘などという戦力に頼ってでも人類が生き延びなければいけなかった時代は終わったんだよ。限定的ながら制海権は取り戻されつつあり、大陸間を結ぶ海上交通網の復旧も目覚ましい。艦娘の在り方も変わる時だ」

2018-01-09 23:51:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「海上輸送による資源確保は、日本の生命線だ。その護衛を担い、深海棲艦の脅威を排除する艦娘の運用は、艦娘法によって国家が一元的に管理する! これが来るべき新しい時代の海の姿だ!」 岸本が大きく手を広げた。遂行の人間たちの間には、それその通りと言わんばかりの空気が漂っている。

2018-01-09 23:55:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

吹雪改二は何の反応も見せなかったけれど、少なくとも岸本に反対しているようには見えなかった。このまま、このいけ好かない男にこの鎮守府は乗っ取られてしまうのか。そう思った時、金剛さんが口を開いた。 「ご高説はそれでフィニッシュ? 残念ながらアナタの思い通りにはなりまセンケドネ」

2018-01-09 23:59:00

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