図書館大戦争 同人誌版告知

【完結】図書館大戦争(仮) - Togetter https://togetter.com/li/1076168 こちらで連載した文アルバトル小説の同人誌版告知ツイートをまとめました。
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シロ @siro_xx

◆告◆ 【完結】図書館大戦争(仮) - Togetter togetter.com/li/1076168 ◆知◆

2018-02-12 14:11:05
シロ @siro_xx

◆告◆ たびたびツイート等でおしらせをしておりましたが、 来たる2/25 或る図書館にて3 で昨年Twitter連載した「図書館大戦争」の同人文庫版を頒布することになりました。 本日はその書き下ろしシーンの一部を告知として流します。 1~2時間ほどTLを埋めますので、よろしくお願いします。 ◆知◆

2018-02-12 14:14:01
シロ @siro_xx

◆告◆ 白秋は落ちてきた花びらを掌で受け止めた。それの正体が「赤」「白」「青」「赤」「白」「青」と文字が混在した紛い物であることを白秋はすぐに認識する。 「造花だって、今時もう少し繊細に作られているだろうに」 手に力を籠めて握れば、文字の花びらは砕けていった。 ◆知◆

2018-02-12 14:14:45
シロ @siro_xx

◆告◆ そして再び手を開くと、そこには紫色がかった桐の花が現れた。こちらもよく見れば文字で作られた紛い物だ。だが、その描写の繊細さは先程とは比べ物にならない。 ◆知◆

2018-02-12 14:18:35
シロ @siro_xx

◆告◆ 「……遊んでいないで、この森を抜けなければね。全く、潜書させるならさせるで一言声くらいかけてくれればいいもの……を……」 白秋は足を止めた。正面の岩に、うつくしい女が座っていた。見覚えのある女だった。 ◆知◆

2018-02-12 14:22:02
シロ @siro_xx

◆告◆ だが、名前が出てこない。確かに知っている顔なのに、肝心の名前が少しも思い出されない。懐かしさと、漠然と広がる胸の痛みを手がかりに白秋はその女の名前を頭の中に探した。その時だった。 ◆知◆

2018-02-12 14:26:51
シロ @siro_xx

◆告◆ 「ぐあっ……!?」 背後からの銃声。左の腕に焼けるような熱が広がった。白秋はすぐさま振り返り、己の銃を構えて茂みの中に撃ち込んだ。手応えはない。敵の位置が掌握できないことを悟ると白秋は駆け出した。 ◆知◆

2018-02-12 14:32:45
シロ @siro_xx

◆告◆ 「どうした、そこにいるのは誰だ?」 「――!僕です!武者小路実篤です!敵に追われています!」 「敵だって!?」 春夫は慌てて曲がり角を覗き込んだ。「理想郷」という文字の組み合わせで構成された巨大な岩のような敵が、廊下を転がりながら実篤を追いかけていた。◆知◆

2018-02-12 14:39:42
シロ @siro_xx

◆告◆ ――こっちに向かって来る! 「なっ……」 春夫は絶句すると同時に己が何をすべきかを理解した。全く身に覚えはないが、とにかくここは有碍書の中で、まずは実篤を助けなければならない! ◆知◆

2018-02-12 14:43:05
シロ @siro_xx

◆告◆ 実篤を追う敵は普段の潜書で見る不調の獣に見た目こそ似ていたものの、その強さは桁違いのように思われた。あれに潰されたらひとたまりもないだろう。春夫は武器を構えて飛び出した。 ◆知◆

2018-02-12 14:48:11
シロ @siro_xx

◆告◆ 「佐藤先生!?」 「うおおおおっ!」 春夫の武器が、巨大な敵の表面を突き破った。想定していたよりも軽い感触に春夫は違和感を覚える。まるで風船を破ったような――。 「佐藤先生!危ない!」 ◆知◆

2018-02-12 14:55:23
シロ @siro_xx

◆告◆ 「ど、どうしよう。追いつかないよ……!」 「諦めてはだめだ、矢を番えた一瞬に当てればいいだけの話……!」 弱音を吐く南吉を励ましながら、荷風は周囲を警戒していた。 ◆知◆

2018-02-12 15:03:29
シロ @siro_xx

◆告◆ 偽物の荷風の戦法はヒットアンドアウェイ。つまり、攻撃を仕掛ける一瞬のみ姿を現して、こちらからの反撃を受ける前に再び姿を洋墨の中に消してしまうというものだった。そして荷風の気のせいでなければ、偽物は明らかに南吉のほうを狙っている。 ◆知◆

2018-02-12 15:07:34
シロ @siro_xx

◆告◆ 南吉が負っている傷はまだかすり傷程度だが、死角から攻撃され続けて南吉は疲弊していた。 「……あ、うぅ……」 「新美君!」 何度目かの攻撃でついに床に倒れた南吉を庇うように立ち、荷風は偽物へと矢を放った。 ◆知◆

2018-02-12 15:11:43
シロ @siro_xx

◆告◆ しかしその矢が届く寸前で偽物の荷風は姿を消す。そして再び、荷風の背後に現れた。 「僕は騒がしい子供は嫌いでね。先に倒させてもらったよ。次は君の番だ」 「しまっ……」 ◆知◆

2018-02-12 15:16:56
シロ @siro_xx

◆告◆ 荷風は辛うじて致命傷を避ける。逃げ遅れた長い髪を矢が貫いていく。そして再び偽物は姿を消す。それを何度も繰り返す。このままでは時間の問題だと荷風は思った。いずれ自分も、南吉と同じように少しずつ体力と集中力を削られて、負けるのだと。 「……っ、だが、私は……!」 ◆知◆

2018-02-12 15:21:08
シロ @siro_xx

◆告◆ 荷風は唇を噛む。自らの偽物に負けるという屈辱は耐え難かった。しかしどうこの戦況を覆すべきか。偽の光太郎も偽の白秋もまだ生きている。他の者の力は借りられない。一人であることも、一人で戦うことも、決して初めてではないというのに胸が痛んだ。 ◆知◆

2018-02-12 15:26:21
シロ @siro_xx

◆告◆ 「さあ、そろそろ終わりにしよう」 再び偽物の荷風が姿を見せた。矢を番える。荷風も敵より一秒でも早く矢を放たんと動く。だが、索敵の時間分荷風のほうが出遅れている。敵のほうが早い。間に合わない――。 ◆知◆

2018-02-12 15:32:51
シロ @siro_xx

◆告◆ ――侵蝕者が何者なのか。その問いに答えられる者はいないだろう。 ◆知◆

2018-02-12 15:36:34
シロ @siro_xx

◆告◆ 何者でもないのだ。何者にもなることができなかったのだ。この特殊な有碍書の中では文豪の皮を被って生きていられるけれど、決して彼ら本人になったわけではないのだ。いくら模倣したところで、彼らの得た毀誉褒貶は自分達のものにはならないのだ。 ◆知◆

2018-02-12 15:36:59
シロ @siro_xx

◆告◆ だから、わかり合えない。どんなに文豪が己の経験した辛苦を語ろうとも、富める者の贅沢な悩みにしか聞こえない。わからない、わかるものか。名前のあるものに、名前のないものの気持ちなどわかるものか。 ◆知◆

2018-02-12 15:39:35
シロ @siro_xx

◆告◆ 文豪でいるのが辛いのなら、こちらに来い。忘れ去られ、無数の「何者でもないものたち」の中に溶けて混ざれ。個を失え。 こちらがそちらに行くことなど、もうできないのだから。 ◆知◆

2018-02-12 15:40:33