- sweetblue818
- 1401
- 0
- 0
- 0
・・秋の音符・・ 【1】 「んはぁぁぁぁん…。」 僕の口から出続ける奇妙な音。 「っんやねん!さっきからうっとうしい!」 うわわ、ごめん。亮ちゃん怒らんといて。 「冷たい秋風が僕の切なさをあおってきて。」 「お前、きっしょ。」 きっしょ…。
2017-12-23 07:44:49【2】 そりゃさ?そんなに日焼けして?夏を満喫しました!ってな顔して?すれ違う女性たちが振り返るほどの?そんな男前やったら僕だって…。 「はぁ…。」 好きな人を海に誘うどころか話しかけることも、いや、そもそも僕の存在自体認知されてんのさえわからへんまま、2015夏が終わった。
2017-12-23 07:46:21【3】 「お前のハートをつかんだる!」的セリフ、僕の人生無縁やねん。 「グスン…、」 「ちょっ!お前何やねん。マルっ、おい、マルて!!言いすぎたて、ごめんて!泣くなボケ!」 謝るか怒鳴るかどっちかにして。 「お前ここで待っとけ!ええか?そのまま帰んな!おれよ!」 「亮ちゃん…」
2017-12-23 07:47:51【4】 チッ、露骨に嫌な顔して遠ざかってく。あ、電話かけとる。女のコかぁ。 何人泣かしてきたんやろ。いや、僕が女のコならそれもひと夏の思い出。本望やな。 だって僕も、 「りょうちゃんのこと好きやもん…グスッ」 「!!」 「あ、」 「お前…マジか、」
2017-12-23 07:48:27【5】 *** (マルのこと…、もうほっとかれへん) 近づいてくるりょうちゃんの顔。あぁきれいなまつ毛…。 って! 「ちゃぁぁぁうっ!!!ぐがっっΣΣ」 ほお骨メガヒットで落ちてきたのがイランイランの小瓶だとわかるのにしばらくかかった。 痛い。いろんなところが痛い。頭が痛い。
2017-12-23 07:49:28【6】 そして何より気持ちが悪い。 何とか身体を起こす。 テーブルの上。 (マル、覚えとけ) ……やってもた。 お前ヤバい、と女のコとの約束ドタキャンして飲みに誘ってくれた亮ちゃん。ほどなく潰れた僕に放送禁止レベルの毒を浴びせつつ介抱してくれた亮ちゃん。
2017-12-23 07:51:15【7】 それはそれでアカン。惚れる。いや…もうそれはそれでええかな。りょーちゃん優しい。女のコ、アカン。無理。怖い。 はぁ…。 情けない。
2017-12-23 07:52:13【8】 *** とりあえず。 ベッドに転がったアロマボトルを適当によけて寝転ぶ。カーテンの隙間から光の線がさしてキラキラ流れる。ええねん、僕に光が当たることなんて…。 フワッ、 やから眩しいて。 カーテンをシャッと引っ張って合わせる。 キラキラキラ☆*~☆****~
2017-12-23 07:53:45【9】 遮光カーテンって高いねんなぁ。 部屋の中を何度も行き来する光の帯。 もう…。 スッと何かが頬に触れた。 …。 ……。 ………、 !! なっ?! オレンジ・青・黄色…いろんな色が淡く光る。 (えぇぇぇぇ…) アカンやつや。僕は見てへん!いや、見えてへん!!
2017-12-23 07:54:50【10】 「ひゃっ!!」 耳に何か乗ったと思うと耳たぶまでスルリと落ちる。 その勢いのまま鼻先に見える影。 「ぎゃぁぁぁぁっ!」 僕の水晶どこ?塩は?何か祟られるようなことした?助けて亮ちゃん昨日何があったの?! 「ホンマ成仏してください。ナムアミアーメンワンシャンロンビン…」
2017-12-23 07:55:57【11】 ** …… …… どのくらいそうしてたんやろ。 部屋の空気が変わった気がして、被った布団から目だけ出した。 いーひん? ホンマ? 実は後ろにおるってパターン? どうしよ、どないしよ。 (うぅぅぅ…(涙)) これが最期?こんな最期?エエのか、僕!いや、俺!!
2017-12-23 07:56:38【13】 *** (―――っっ!) もうひと叫びしようと息を吸い込んだ僕に“体当たり”して口を塞ぐその…なにか。 「もう!おっきなこえ出さないで!」 な、な、なに?浮遊霊?成仏できひんかったん?ちゃう、虫?虫の霊?さ、さ、 殺虫剤! ベッドから飛び出て〝光る虫“めがけて噴…
2017-12-23 14:21:17【14】 「…。」 まんまるくて大きな瞳。ふわりふわりと揺れながら僕の目をじーっと見つめる。 「えぇぇぇ」 とてもじゃないけど…。
2017-12-23 14:21:43【15】 *** 「虫じゃない!」 金色の粉を舞わせながら女の…コ?が頬をふくらませる。 「すいません。ちゃいますよね。その…霊的な?」 「ちがう!」 金色の粉が赤く光る。怒らせてもうた。 「ごめんなさい!あの…じゃ貴方は?」 「わかんない?」 「はぁ…。あ、」 「わかった?!」
2017-12-23 14:23:06【16】 「お迎えにきた、とか?」 ふがいない僕をこの世も見捨てたか。 「だから!そういうんじゃないってば!」 んんもう!と手足をばたつかせる。…かわいい。死神には見えへん。 「何…なの?」 「ようせい。」 「…要請。はぁ…。で僕何したら?」
2017-12-23 14:23:36【17】 「ようせいだよ?」 「あ、養成か。」 なるほど。僕を育てに。 「ありがとうございます。お世話になります。」 「よ・う・せ・い!!」 ちゃう?あ…陽性?幼生?どれ? ……。
2017-12-23 14:24:01【18】 「―っ、妖精っっ?!」 「ずぅーーーっと言ってる!」 2015年夏の終わり。 僕は一匹(やばっ)、一人(でええの?)の妖精と出逢った。
2017-12-23 14:24:21【19】 *** 右、左、上、下、ななめ… 早1時間。 目に入るものすべてがめずらしいのか、うれしそうに飛び回る妖精さん。 「あのぉ?」 「ん?」 「少し、休みません?」 「うん。」 ふわっと降りてくる。
2017-12-23 14:25:05【20】 「あ、ここ良かったら。」 シャケの切り身ストラップ。ベンチ代わりになるかななんて。 「でも…たべものの上…」 意外とおりこうさんなんや。 「ええんです。これ、腰掛けにもなる切り身ってうたい文句で。」 妖精って出まかせ見抜けるんやろか?
2017-12-23 14:25:44【21】 「ほんと?」 一応、身の部分を避けて皮の部分に座る妖精。 「で、妖精さん。あの…、」 「ぽっぷ。」 「ぽっぷさん?」 こくっと頷く。 「ぽっぷ。おともだちことばでいいよ。」 「じゃあ、ぽっぷ。なんでここに?」 僕のところに来たのはたまたま?
2017-12-23 14:26:30【22】 「まるるのこいびとになりにきた。」 ………。 「へ?!」 「まちがえた。まるるのこいびとになる…人をさがす…おてつだいにきた。」 「あぁ…。っえ!」 「きゅうぴっど!」 「はぁ…、」 「まるるっ!あそぼう!」 pic.twitter.com/HswWd1qJLC
2017-12-23 14:27:07【23】 *** 「まるる!女の人!」 半ば強引に外に連れ出された休日。 『性別:女』を見つけると手当たり次第に勧めてくる。 「ぽっぷ、その人はおばあちゃん。」 「あっちは?」 「女の“子”。」 「じゃ、あの人!」 「…多分女の人ではないなぁ。」 「!!」
2017-12-24 16:38:17【24】 なんとなく、予感はしてたけど。ぽっぷは誰にも見えてへん。声も聞こえてへん。 せやから。 「もうっ!俺が求めてるんのは黒髪ロングのポニーテールで、袖をこうやってギュッとしてる女のコなんやて!!女ならええわけちゃうの!」 「…、」「…、」「…、」 ザワっとしたあと
2017-12-24 16:39:14