ベイン・オブ・カトー #5

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
0
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シーズン2・第3話【ベイン・オブ・カトー】#5

2018-03-06 22:05:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:超自然オーロラが乱れ舞う夜のシトカに閉じ込められたニンジャスレイヤーは、命の恩があるシルバーキーとゾーイを助けるべく、スーサイドと共に、邪悪なロシアンヤクザニンジャ組織「過冬」の首領シンウインターへの挑戦を開始した。過冬のニンジャを次々に殺してゆくニンジャスレイヤー)

2018-03-06 22:07:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ニンジャからニンジャへ飛び火する殺戮の連鎖。ついには過冬のタツジン「ワイズマン」の一人、キンジャールすらも手にかけるが……)

2018-03-06 22:09:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ!アバババーッ!」血なまぐさい地下室に、ニンジャの悲鳴が響き渡る。焦げ臭いにおいと、回転する巨大な換気ファン。ヴァニティは壁際のパイプ椅子で脚を組み、インシネレイトによる拷問を冷たく見つめていた。苛まれているニンジャの名はハイフォート。過冬のニンジャだ。 1

2018-03-06 22:13:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なァおい……俺はこういうネチネチしたやり口にあんまり慣れちゃいねえんだよ。殺しちまうかもしれねえ。わかるか?」「アバーッ」「わかるかァー!?」「アババーッ!」ナムアミダブツ!両手足をワイヤーで縛られたハイフォートが床でのたうち回る。その身体には奇妙な炎が幾つも灯っている! 2

2018-03-06 22:15:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン……それは恐るべきカトン拷問!体内の脂を吸い上げ、体表でロウソクじみて燃やすという悪夢じみた行いである。慣れぬといいながら、インシネレイトの歪んだ口元は明らかに笑顔!「姉御……姉御もやらねえんですか?」「情報は引き出せた?」「まだですね」 3

2018-03-06 22:18:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なら休むんじゃない」「休んじゃいませんぜ……危うく俺はあのクソアマにブッ殺されるところだったんだ……!クソが!」「グワーッ!」脇腹を蹴りつける!「クソが!」「グワーッ!」脇腹を!「クソが!」「アバーッ!」「死んでしまうぞ」「だって替わりにコイツいたぶらなきゃ収まらねえ!」 4

2018-03-06 22:21:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザルニーツァ=サンはゴホッ、貴様らなど……アババーッ!」「姉御!ホローポイント=サンは何処ですか?」バーナーめいた手の炎でハイフォートの顔を炙りながらインシネレイトが尋ねた。「どこで合流するんですか?」「さあね」ヴァニティはやや苛立たし気に髪をかきあげた。「連絡が取れない」 5

2018-03-06 22:24:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それ大丈夫なんスかね?あのジツのせいッスか?」「そういう事になる……」ホローポイントのキリングフィールド・ジツは、敵と己をサップーケイ空間に引きずり込むジツ。入るのは二人、出るのは一人。だが、引きずり込む事に失敗すれば、どうなる?「マズイんじゃ?」「私のジツじゃない。知るか」6

2018-03-06 22:28:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あの人、最近結構ヤバくて、心配だったんだけどなあ。ブツブツ喋ってるしよ」「仕事を続けろ」「イヤーッ!」「アバババーッ!」「ほらほらァ!何か吐けェー!テメェら何か知ってンだろ?この天候、ジツなんだろ?なンでこんな夜中にテメェら忙しく街中を走り回ってンだ?」「アバーッ!」 7

2018-03-06 22:32:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

惨たらしい悲鳴をBGMに、ヴァニティは付近の店で買ってきた雑誌を手に取り、欠伸をかみ殺した。そこでIRC端末に通信コールがあった。「モシモシ。ヴァニティ。……そうなの?いや、丁度よかった。ホローポイント=サンがトラブっててね」ヴァニティは椅子を立ち、拷問を後ろに、階段を上に上がる。 8

2018-03-06 22:36:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ボロボロのショウジ戸を開けて通路の外へ出ると、そこは高い天井の廃ガレージ。蛍じみた青白い光が照明となり、ヴァニティの顔をユーレイじみて照らす。そして錆びて朽ちた数機のモータードクロ。その足元を、太い電気ケーブルが這いまわっている。ケーブルは光の源に通じている。 9

2018-03-06 22:39:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ここはフジミ・ストリートの外れのスクラップ場の一角で、過冬はもとより、浮浪者も近づかない場所だ。有害な化学物質が許容値を超えて垂れ流され、立ち入り禁止となっている。ゆえに……「オツカレサマデス」「ゴクロウサマデス」クローンヤクザ達がヤクザオジギをした。 10

2018-03-06 22:42:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その数、1ダース超。ヴァニティは腕組みして、このクローンヤクザを率いる増援の者を待った。機構が剥き出しの、今にも機能停止しそうなおぼつかないウキハシ・ポータルであるが、内通者の話では、全く使用に支障無いスペックが確保できているという。ミリタリーレベルだという。大嘘だろう。 11

2018-03-06 22:44:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その数呼吸の後。バシバシと青白い光が明滅し、ゆったりとした足取りで現れたのは、ヴァニティ同様、シックスゲイツのニンジャ……シガーカッターであった。「ドーモ。ヴァニティ=サン。シガーカッターです」「ドーモ。シガーカッター=サン。ヴァニティです」二者は厳かにアイサツした。 12

2018-03-06 22:46:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「長旅おつかれさま」ヴァニティは冗談を言った。シガーカッターは短く頷いた。(アバババババーッ!)明らかに断末魔と思われる絶叫が彼らの耳に届いた。「アーア。やったね。あれは」ヴァニティは呟いた。「どうした」「若気の至り。まあいい。何か譫言ぐらいは聞けているでしょ」 13

2018-03-06 22:48:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(シーッ!)リロイが立ち止まり、鬼気迫る様子でジェシに向かって指を立てた。ジェシは後ずさった。(喋ってない!)(違う!言葉じゃない)リロイはシリアスだった。(お前の精神波動が有意な周波数を発振させてしまっている!ちゃんとしろ!)(ちゃんと)(経験上、そういう時は親指の爪を噛め)15

2018-03-06 22:54:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジェシは逆らわず、爪を噛んだ。既に彼らはイクラ工場の中に忍び込んでいる。当然、中には誰もいない。ライトで照らされる破れかけたポスター「1日100グラムのイクラ」「天然素材を用いているので安全!他社は石油素材?」「すぐ励行」などのミンチョ文字もむなしい。 16

2018-03-06 23:00:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて彼らは金網の仕切りにぶつかった。扉には「カードキー必要」と書かれている。ジェシは頷いた。(さあ。これで終わりだ。多分、外から見えた明かりも、なにかの気のせいだよ。やっぱりここには誰もいない……何を!?)リロイはジェシに構わず、カードキー認証装置にスタンガンを当てていた。 17

2018-03-06 23:03:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ZAP!タンタンタン!「アイエエエ!」光と音が破裂した!「ヤバイよ!」「いい数値だ」リロイは呟いた。「物体残留妨害意志を洗浄した。ついて来て」そして扉を押すと……ひらいた。ジェシは息を呑んだ。だが、リロイに続いて扉をくぐるとき、なんとなくわかった。最初から鍵はかかっていないのだ。18

2018-03-06 23:06:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そうして入り込んだ一階部分、ライトで照らすのも躊躇われる、複数のベルトコンベア、計器類、水槽らしきもの。生臭いにおいがする。「こっちだ。ジェシ」リロイは壁沿いの階段を指さす。ジェシの背筋がぞっとした。確かに階段は二階の高さの機関室につながっていて……窓から見える室内の明るさ。 19

2018-03-06 23:10:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リロイの妄想がブルシットでも、あそこに誰かが居る事は紛れもない事実。もし、ヤバいヤクザがここで危険薬物のディールをしていたら……。「……!」ジェシは震える手で警棒をギュッと握った。リロイが戦えるとは思えない。頼れるのは自分だけだ。襲われたら身を守らねば。 20

2018-03-06 23:12:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

鉄板剥き出しの階段には手すりもない。リロイは憑かれたように勢いよく昇っていく。否、実際憑かれているのだ。ダグを失った悲しみ、寂しさ、そういう感情に。それはジェシも同じ事だ。この感情にケリをつけねばならない……。「モシモシ!」素っ頓狂な叫びをあげて、リロイが機関室に突入した。 21

2018-03-06 23:14:42