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バイオテック・イズ・チュパカブラ #1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
第1巻「ネオサイタマ炎上」より 「バイオテック・イズ・チュパカブラ 」#1 #NJSLYR
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
中国地方の五割を覆う、広大なタマチャン・ジャングル。ここは重金属酸性雨耐性を獲得したバイオバンブーとバイオパインから形作られる、陰鬱でサツバツとした密林だ。時刻は昼下がり。見えない太陽が傾き出した頃。どこか遠くから、オツヤじみた物悲しい水牛の鳴き声が聞こえてきた。モウン、と。
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極彩色のLANケーブルと猥雑なネオンサインに彩られる灰色のメガロシティ、ネオサイタマ……そこから遥か北に広がるこの密林を、トーフのごとく無機質な一台の車が駆け抜けてゆく。錆びたワイパーが重金属酸性雨を切り刻む。運転席にはスーツを着た金髪の女性。助手席にはニンジャ。
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「この一帯はまだ電波塔が生きてるわ」とナンシー。右耳の後ろにインプラントされたバイオLAN端子には、白いアンテナ付きのトランスミッターが挿入されている「地域マップにアクセス。この先三百メートル地点に農場」。助手席に座るニンジャスレイヤーは腕を組み、呼吸を整え、周囲を警戒していた。
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今にも朽ち果てそうな小さな橋を渡り、「雇用の問題」と書かれたコケシ・トーテムの脇を抜けて走ると、不意に密林が開けた。旧世紀の郊外型スーパーマーケットと思しき空間が二人の前に広がる。アスファルトの大半はバンブー・スプラウトによって地下から突き破られ、ビルディングは廃墟と化していた。
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「ブッダ……! まただわ」静かにブレーキを踏みながら、ナンシーが吐き捨てるように言う「数十頭は殺されているかしら」。「調べてみよう」ニンジャスレイヤーはシートベルトを外し、ドアを開ける。民間人との接触を考慮に入れ、その赤黒いニンジャ装束をダスターコートとハンチング帽で隠した。
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「酷すぎるわ」赤い傘をさして車を降りたナンシーは、頭を横に振りながら溜息を漏らした。おお、ナムアミダブツ! 何たる光景か! 現在は農場として使われていると思しきその駐車場跡一帯には、40頭余りの水牛たちが、打ち上げられたマグロのように横たわっていたのだ。ツキジめいた凄惨さである。
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「手口は同じだ」ニンジャスレイヤーはアスファルトに方膝をつき、そのうち3頭の死体に特徴的な傷痕を発見した。この3頭だけは腹がさばかれ内臓が抜かれている。血は一滴も残されていない。「狂ったイタマエの仕業だろうか? とてもそうは思えない。こんな事ができるのは……ニンジャだけだ」。
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ニンジャスレイヤーとナンシーは目を合わせ、同時に呟く。「「チュパカブラ……」」と。チュパカブラとは、メキシコの伝説的な獣の名だ。そしてそれは、タマチャン・ジャングル界隈で水牛ミューティレーション行為を繰り返す正体不明のニンジャに対して、二人が与えたコードネームでもあった。
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「ザッケンナコラー!!」「スッゾコラー!!」不意に怒声が飛んだ。編笠を被った三人の農民が建物から駆け出してきて、タケヤリとカービン銃を組み合わせた恐るべき武器を構えるところだった。ニンジャスレイヤーは反射的にスリケンを投擲しようとしたがこらえ、ナンシーをガードする立ち位置を取る。
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(親愛なる読者の皆さんへ:津波警報が発令されていることを考慮し、リアルタイム連載を一時中断しております)
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「ドーモ! 私たちはネオサイタマ新聞社の特派員です!」ナンシーは首から下げたジャーナリスト・パスをかざし、身分を証明する。NSNWのロゴが輝かしい。ハッキングによって作成した偽造品だ。「どうか興奮しないでください! 私たちは反ブッダの運動家ではありません!」
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「アイエエエエエ……」「安心した」「アンタイ・ブディストじゃないのか」農民たちは銃口を下ろし、ナンシーたちに近づいてきた。緊張に引きつっていた顔が、わずかに緩む。「特派員=サン、ご覧の通りの有様です。オーガニック水牛たちが次々に残酷な殺され方をしているんです」
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「ドーモ、特派員のイチロー・モリタです」ニンジャスレイヤーが偽名を名乗る「これは一体、誰の仕業なのです?」。「ドーモ、タバキ・トヨタです」眼帯をつけた農民のリーダー的存在が返す「建物の中で話しましょう」。姿の見えない敵を威嚇しているかのように、鋭い眼光を松林の中に向けながら。
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同日同時刻。そこから数十キロ離れた、タマチャン・ジャングル南端部。
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小高い丘に建つ古風な温泉宿「ニルヴァーナ」の前に、ものものしい雰囲気で3台の車が止まった。見事な松の木の下で、2台の覆面SPパトカーに前後を守られた防弾高級車のドアが開く。思っていたよりも肌寒い風が、暖房の効いた車内に忍び込んできた。「寒いね!」と少女の声が漏れる。
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「ありがとうございました」運転席から降りた若い男が、覆面SPパトカーの精鋭デッカーたちに対して、奥ゆかしいオジギを行う「ここまでくれば、私たちだけで大丈夫です」。「お気をつけて」「ごゆっくり骨休めを」私服で正体を隠したネオサイタマ市警のデッカーたちは110度の最敬礼で返した。
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続いて助手席から彼の妻が、左の後部座席からはペットのミニバイオ水牛を抱いた幼いムギコが、最後に右の後部座席からは和服を着てカタナを腰に吊った老人が姿を現す。数々の修羅場を生き抜いた男だけが持つことを許されるタツジンめいたオーラを、老人は静かに発散させていた。
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「……ムギコや、はしゃぎすぎて転ばぬようにな」 娘を優しく諭す彼こそは、かつてニンジャスレイヤーに命を救われたネオサイタマ市警の重鎮、ノボセ老であった。彼らは日本人ならば誰しもが持つワビサビ的な想いに駆られ、ネオサイタマの喧騒を離れて、一家で温泉宿を訪れていたのだ。
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「転ばないよ!」ムギコは少々ムッとしたような調子で言うと、重金属酸性雨避けの厚底ブーツで砂利道を蹴り、フロントへと駆けていった。そしてミニバイオ水牛を両手で高く抱き上げてクルクルと回りながらネコネコカワイイ・ジャンプを繰り返し、楽しげに語りかけるのだった「一緒に温泉に入ろうね!」
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もしかするとこの時、彼は自分の身にただならぬ脅威が迫っていることを、動物的な第六感によって感じ取っていたのかもしれない。あるいは単に、ネコネコカワイイ・ジャンプに驚いて目が回っただけなのかもしれない。彼は喉の奥から搾り出すようにか細く、モウン、と鳴いてから、静かに失禁したのだ。

コメント

オスツ🍣 @alohakun 2011-04-16 12:36:15
バイオテック・イズ・チュパカブラ #2 http://togetter.com/li/122095
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