大切な

❥❥年下の彼 @bluesweetie83

・・大切な・・ 【1】 「絶対彼氏だと思う！」 給湯室から聞こえてくる女子社員の声。 「だよね。もともとキレイだったけど最近すごく優しく笑うようになったし」 「そんな風に変えちゃう彼氏って素敵な人なんだろうなぁ」 「でも大変かも」 「ん？」

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【2】 「だって狙ってる男の人多いじゃん、栄斗先輩のこと」 へっ？！ 「栄斗先輩って無防備だもんね、自分の魅力わかってないっていうか」

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【3】 ＊＊＊ 「あ、今日村本くんが彰大のこと話してたよ」 夕飯後、洗い物する先輩。 「なんてぇ？」 付き合いだしてすぐ俺が別の部署に異動してからは、村本先輩と顔を合わせることも少なくなった。 「元気してんのかなぁって。そりゃあもう！って答えそうになった」 おかしそうに笑う。

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【4】 「なんだかんだで彰大のことかわいがってたもんね、村本くん」 「人使いも口もガラも悪い先輩やったけどなぁ」 「たまには連絡くれてもええのに、って寂しそうだったよ。栄斗、セッティングせぇだって。軽く流しといた」 「ハハ、村本先輩って彼女おらんの？」

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【5】 「どうだろ、そんな話はしたことない」 「ホンマは二人で食事したかったんちゃう？」 「まさか！わたしは彰大と違ってモテませんから。」 やっぱ、 わかってへんねんな。

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【6】 ＊＊ “栄斗先輩”。女子社員が言ってたように、人のことはわかるくせに自分自身のことには疎い。 （彰大は何でわたしみたいなのと付き合ってるんだろう） って今でも不思議そうに言う。厄介なんは先輩が自分を卑下してんのでも卑屈になってんのでもなく、

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【7】 冷静に自分のことを“なんもない”と分析しとるとこ。その自己評価の低さが腹立たしくて、言い合いになることもある。 （全然わかってへんねんなぁ） 「何が？」 手を拭きながら近づいてくる。 「エプロン姿がどエロいってこと…っ痛！」 ハタかれた。 「顔出してみたら？きっと喜ぶよ。」

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【8】 「…んぁ。今度部屋覗いてみる。」 「うん。…あ、明日フラちゃんたちと食事行って来る。」 「芙楽先輩っ！」 芙楽先輩も同じ部署やった先輩。優しくて清楚で、むっちゃかわいい先輩。 「彰大、その顔！」 「だぁってフラ先輩♡なぁ、俺も連れてっ…」 バシッ！ pic.twitter.com/lSa9kG6ddW

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【9】 ＊＊＊ 「そぉかぁ。良かったなぁ」 翌日、帰宅した先輩と電話で話す。 （うん。おいしかったし、雰囲気もいいお店だったよ。今度一緒に行こ？） 「芙楽先輩も？」 （フラちゃんは村本くんが好きなんだって） 「うそっ！マジでっ？！」 （うそ。声かけとくね）

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【10】 「え、冗談やって！俺は、」 フワ～っ、あくびの声。 「眠なった？そろそろ寝よか」 （うん…おやすみ） 「おん、おやすみ」 （彰大、） 「ん？」 （…二人で行きたいな） 当たり前やんか。 pic.twitter.com/UjXs6T6GKK

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【11】 ＊＊＊ 「村本せんぱーい！」 昼休み、部屋を覗く。 「おぉ！久しぶりやのぉ！」 フロア中に響く声。 「元気しとったんか！」 バンッと背中を叩く。相変わらず歓迎が荒いて。 「今度一杯やろうや」 「先輩持ちで？」 「割り勘じゃ、ボケ！」 ゆーても絶対出させへんくせに。

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【12】 「こないだ栄斗にも飲もうや、って話してんけどな」 視線の先には芙楽先輩に笑いかける栄斗先輩。 「…なぁ。栄斗って、男おるんかな」 「ふぇっ？！」 「どっから声出してんねんお前」 「な、何でそんなこと聞くんすか？」 まさか村本先輩…。

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【13】 「んぁ？いや。心配やろうな、あいつの男って思て」 「え、」 「気ぃ強いけどええ女やし、昨日みたいなことようあるんちゃうかな。」 昨日…？

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【14】 ＊＊＊ 「彰大！どうしたの、こんな時間に」 「アカンかった？」 ズカズカと部屋に入る。 「そんなことないけど。いつも連絡してから来るから」 「せやから、連絡せんで来たらアカンの？」 つい語気が荒くなる。 「違うよ。どうした？酔ってるよね。」 「酒飲んだからな」

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【15】 「何かあった？」 静かに水を置く。 「…、」 「彰大？」 「俺ちゃうやろ。」 「え？」 「どうしたの？」 「昨日何があった？」 「何って…。フラちゃんたちとご飯食べに…」 「その帰りや！！」 ガッシャーン！テーブルを叩いた衝撃でグラスの水が撥ねた。 pic.twitter.com/qVvQSJ4GvO

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【16】 「村本先輩に聞いた。何で昨日何も言わんかった？」 「だって…何もなかったし」 「それは結果論やろうが！何かあってたらどーすんねん！」 「何もないよ！相手酔ってたし！」 「酔うてたら何やねん、酔うてたら何もないんか？！」

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【17】 「違うよ！危なくなったら撒けると思ったの！ちゃんと歩けてなかったしすぐ振り切れるって！交番だって近くに…」 「来い、」 腕を掴んで強く引く。先輩は簡単によろめいた。 「彰大？！」 「逃げぇや！」 「！」 「俺今酔うとるよな？酔うてれば振り切れるんやろ！早よ逃げろや！」

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【18】 押し倒して馬乗りになる。 「前もあったよな？絡まれて食って掛かったこと。そん時もわたしは大丈夫ってゆーてたよな？」 もがく先輩を押さえつけて怒鳴る。 「俺今たいして力使うてへん。全力で振り払ってみぃ！」 「っっ、」 どんなに先輩が抵抗したって、 「男の力何や思とんねん！」

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【19】 ＊＊ （昨日、何があったんですか？） （飲み行った帰り、芙楽たちに会うてさ。「助けてください！」言うから何や思えば栄斗が危ないって。最初は芙楽たちが絡まれたらしいんやけど、栄斗が盾になって逃がしてくれたゆーて）

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【20】 ＊＊ （あいつ、ホンマやばかってん。たまたま俺らがおったから良かったようなもんをって説教したら「大丈夫だよ、わたしは」って。）

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【21】 ＊＊ 「…ふざけんな。」 「、」 「女やねんで！自分の身ぃ守ることちゃんと考ろや！無防備すぎんのもたいがいにせぇ！」 怒っとんのか、悲しいのかわからんようになって。自分でも声が震えてるのがわかる。 「俺の…」 身体中の力が抜けた。 手の甲の冷たい感触にハッとした。

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【22】 ポトっと落ちる先輩の涙。 「ごめん…俺。せやけど…」 先輩の無鉄砲さがどうしても許せへんくて。 乱れた服を抑えてゆっくりと身を起こす先輩。 「ごめん…。」 「…、」 「、」 「助けなきゃって思ったの…」 小さく震える身体。 「フラちゃん泣いてて。だから…。」

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【23】 「けどな、」 近づこうとするとビクッと身を竦める。 カッとなったとはいえ俺…。 「ごめん。今日は帰るわ。」 嫌よな、一緒におんの。 「…こういうんはこれきりにしてほしい」 「…」 「また連絡する」 俺も少し、頭冷やさな。

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【24】 ＊＊ 「待って…」 え？ 「置いてくの？」 膝を抱えて顔を埋める。 「帰らないで」 「ええの？」 「…」 俯いたまま両腕を伸ばした先輩をできるだけ優しく包んだ。 「ごめんなさい…」 「俺も、ごめん」 「彰大が本気で怒るとこ、初めて見た…」 「俺もこんな怒ったことない」

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【25】 「すごく…怖かった…」 「ごめん…、」 回されてた腕の力が強くなった。 「聞いて？俺、先輩がいろんな男に好きになられてもええねん。誰が言い寄って来ようが、絶対渡さへん自信ある。せやけど。こんなんはもう止めて。頼むから」 「うん、」 「もっと自分のこと大切にしたってーや」