ゾンビ!世界戦争!偽史!WORLD WAR Zは真っ直ぐな嘘つきのための極上のエンタメ小説だ

ゾンビが大量に発生して世界がぐちゃぐちゃになって人が大量に死ぬけど人類は負けないゾンビ世界大戦フェイクドキュメンタリー小説『WORLD WAR Z』がめちゃくちゃ面白い話 note(同内容) https://note.mu/alohatengu/n/n3071053ec396
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アロハ天狗 @Aloha_Tengu

ゾンビ!世界戦争!偽史!WORLD WAR Zは真っ直ぐな嘘つきのための極上のエンタメ小説だ pic.twitter.com/zyPgMK6r0O

2018-03-31 19:28:35
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アロハ天狗 @Aloha_Tengu

心理テストです。あなたは森を歩いているとゾンビが好きなので当然世界大戦も好きになりました。そこに一人の猟師が現れて言いました。「君は偽ドキュメンタリーも好きだね?」 さて、あなたが手に取る本は何でしょうか?

2018-03-31 19:29:07
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

はじめまして。アロハ天狗と申します。 ゾンビが大量に発生して世界がぐちゃぐちゃになって人が大量に死ぬけど人類は負けないゾンビ世界大戦フェイクドキュメンタリー小説『WORLD WAR Z』がめちゃくちゃ面白いので、それの話をします。

2018-03-31 19:29:28
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

さて、我々は寝ても覚めてもゲームに映画にドラマにコミックにと、ゾンビが暴れるところを観たりゾンビを撃ったりゾンビに追いかけ回されたりと四六時中腐汁漬けの幸福で充実した日々を送っています。

2018-03-31 19:29:51
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

しかし、そのゾンビ作品が面白ければ面白いほど、私はとある想像力を膨らまさずにはいられません。 『今ごろ/これから  世界はどうなっているんだろう?』

2018-03-31 19:30:19
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

スタッフロールの後、主人公が命からがら脱出した後、あるいは悲惨に全滅した後、ゾンビ・パンデミックの蔓延した世界はどうなっていくのでしょうか。

2018-03-31 19:30:36
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

ちょっと気の効いた作品であれば、例えばニュース映像のザッピングで世界が混乱している状況を伝えたり、例えば彼方に見えるNYから火の手が上がっている様子を映すことで、『文明の崩壊』を端的に表すでしょう。

2018-03-31 19:31:15
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

あるいは、既に文明が崩壊した世界を舞台に、支配種たるゾンビだけでなく生き残りの生存者との争いも主題にした傑作なんかもありますね。

2018-03-31 19:31:33
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

ただですね、正直、ぶっちゃけて、仄めかしや過去形じゃなくて、ちゃんと現在進行形で見たくないですか?大発生したゾンビが文明をめちゃくちゃにする所、世界崩壊の真っ最中、人類とゾンビの全面戦争。

2018-03-31 19:31:49
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

本書、WORLD WAR Zはそのタイトルの通り『最初の感染』から『感染拡大』、『大いなるパニック』そして『全面戦争』までを真正面から描写した作品です。

2018-03-31 19:32:09
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

で、ですね。結論から言ってしまいますと、人類、この戦争に勝つんですよ。大勝利。人類の主要な生息圏から、荒れ狂う災禍としてのゾンビの群れはほぼ駆逐されます。

2018-03-31 19:32:26
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

さて、なぜ私がここでそんな重要なネタバレを躊躇しなかったかというとですね、この作品は『人類が”世界ゾンビ大戦”に勝利してから10年後、あの戦争に関わった世界中の人たちの証言を集めた記録集』という体裁のフェイクドキュメンタリーだからです。

2018-03-31 19:32:50
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

筆者はジャーナリストとしての聞き役として、例えば「最初の感染に立ち会った中国の医師」や「国際宇宙ステーションの宇宙飛行士」や「いち早く事態の深刻さを把握していたモサドのエージェント」や「米政府要人」や「一介の主婦」など、それぞれの立場からのそれぞれのストーリーが語られます。

2018-03-31 19:33:16
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

だから・・・この作品を真正面から映像化するならば、おそらく最も誠実なアプローチは、『インタビュー映像』(フェイク)と、『再現映像』(フェイク)と、『当時の資料映像』(フェイク)を散りばめた、BBCやナショナルジオグラフィック等のドキュメンタリー番組のような体裁となると思います。

2018-03-31 19:33:30
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

ブラピによる映画版も、まさしく文字通り津波としてのゾンビ描写の映像的インパクトや、エピックなスケールの中盤に対して一気に静かになるクライマックスという異色の構成が楽しい作品でしたが・・・やはり劇映画という体裁は本質的には似合わないと思います。 pic.twitter.com/MgDjeOV7UX

2018-03-31 19:34:06
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アロハ天狗 @Aloha_Tengu

あと映画版だとですね、走るタイプのゾンビなんですが、これも大きな差で、本書のゾンビは歩くタイプなんですよ。だから戦術の一つ一つから戦争の推移まで根本的に変わっちゃうんですよね。本書でのアイデアや展開が尽く採用されていないので、やはり全くの別物として尊重すべき作品だと思います。 pic.twitter.com/MIs0cKvXD2

2018-03-31 19:34:49
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アロハ天狗 @Aloha_Tengu

数百万の死体の群れがゆっくりと歩きながら、都市を飲み込み拡大し続ける・・・という本作の印象的なイメージはまさしく黙示録的であり、できればこれがそのまま映像化されるところを見てみたいものです

2018-03-31 19:38:59
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

さて、多少脱線しました。上の証言者の一例を見て察しの良い方なら気づいたと思いますが、この証言集という体裁の最大のメリットはですね、全ジャンル可能になるんですよ。

2018-03-31 19:39:13
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

ホラーも戦争もヒューマンドラマもポリティカルサスペンスも果てはヒーローアクションまで、その戦争への携わりかた次第で自由自在にあらゆる様式の物語が内包可能な構造なんですね。

2018-03-31 19:39:26
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

つまり、一つ一つの証言がゾンビという唯一の共通項で括られた極上の短編集でありながら、時系列順に整理されたそれを読んでいく内に、”世界ゾンビ大戦”の全貌がまるで史実であったが如くに読者に伝わってくるという、めちゃくちゃ巧みな内容なんですね。

2018-03-31 19:39:47
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

この作品の直接のアイデア元の一つに、米ソ全面核戦争から5年後のインタビュー集という体裁を取ったウォー・デイという作品があります。 pic.twitter.com/tsdKy0xlBw

2018-03-31 19:40:42
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アロハ天狗 @Aloha_Tengu

これは核戦争後、辛うじて細々と日々を生きていくことだけは許された人類が、核戦争直後の地獄絵図と、もはや決して戻ることのない豊かさを振り返る・・・という、夕暮れ時のような辛気臭さが魅力の小説なんですね。

2018-03-31 19:41:55
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

対して、WORLD WAR Zは、 ・人類が勝利している絶望を乗り越えたその先 という大前提があるので、読んでいる印象が非常に明るく、作風がエンタメに特化しているのが特徴です。

2018-03-31 19:42:09
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

人がメガ単位でジャブジャブ死ぬんですが、前向きなんですよね。やっぱり勝ってる戦争はいいな! 我々の人間性とは・・・クジラとは・・・とか言わないし。 #アッ言ってた

2018-03-31 19:42:28
アロハ天狗 @Aloha_Tengu

加えて、あくまで当事者の証言を集めたインタビュー集という体裁なので、執筆者が裏どりした事実、という体の注釈がエンタメ性の高い本文に対して”それっぽさ"を補強します。

2018-03-31 19:43:08