出紗まとめ
- 9632meou0912
- 2688
- 8
- 0
- 0
あと数日経てば道が分かれてしまうのに、縛り付けるようなことを言ってどうするんだ。頭では分かっている。分かっているのに。 「俺の音、忘れられないくせに」 そう言って、笑ってみせる。小さく瞠目したのちに笑顔と共に返ってきた同意の言葉が、逆に呪いのように俺の心に大きなしみを作った。
2018-07-02 22:31:26「あのとき、手を伸ばしていれば、気持ちを伝えていれば、なにか違ったんだろうか」ってずっと考えながら8年間過ごしてきたんでしょう?そんなの、再会して幸せになってほしい気持ちもありつつ、それだと逆にいまさら手を伸ばせないよなぁって気持ちもある。
2018-07-02 22:44:54@vazzy_kokohaji 「なんでわざわざ浴衣なんだよ、マジで歩きづらいんだけど」 不満げに零しながら歩く一紗がわざとらしく溜息を零す。不機嫌を装っているけれど、本当に嫌ならまず浴衣なんて着ないし祭りにだって来ないだろう。その証拠に視線はちらちらと並ぶ屋台に向けられている。素直じゃないだけなんだよな。
2018-07-03 22:12:11@vazzy_kokohaji 可愛くて、つい手を取って握ってしまう。一瞬驚いたのか動きを止めた一紗が、顔を顰め低く唸った。 「おい」 離せ、と言いたいのだろうけれど、自分からは振り解かないんだな。そんな天邪鬼なところも愛しくて、俺は絡めた指に力をこめると戸惑う一紗の体を引き寄せた。
2018-07-03 22:15:37彼岸花が綺麗に咲き誇る土手を、手を伸ばせば届くのに決して触れ合うことはない距離を取りながら歩いて帰る出紗?振り返って「またな」って笑う出流さんの背後の夕日と彼岸花の赤が綺麗に混ざって出流さんの姿を見えにくくしてしまうから余計に距離を感じて胸が苦しいとかそういう。
2018-07-04 00:43:59彼岸花の花言葉を調べて出紗……って泣いてるし、別名の天上の花っていうのを知ってレッツゴートゥヘブン……ってなってる pic.twitter.com/GCvlSrqbOF
2018-07-04 01:38:12赤い花に戯れに触れようとした一紗さんに「彼岸花って毒があるんだよな」って笑う出流さんと、「見た目に反して毒だらけって、あんたみたいだな」って毒づく一紗さん。「俺の毒、そろそろ一紗の全身に回ったかな?」って不意に顔を近づけて笑われるから一紗さんはなにも言えなくなる。
2018-07-04 01:41:179月になったというのに気温はまだ高い。 あまりの暑さに思わず舌打ちを漏らしてしまった一紗は、肩からずり落ちかけたギターケースを抱え直すと前を歩く出流の背中を見やった。 何が楽しいのか出流は鼻歌を口ずさみながら彼方へ視線を向けている。視線の先を追うと一面の朱が視界に飛び込んできた。
2018-07-04 22:47:31川べりに、彼岸花が咲き乱れているらしい。どこか幻想的な光景に思わず息を飲みこむと、振り返った出流が満面の笑みを投げかけてきた。 「ここ、隠れた名所なんだよ」 「花なんて見て何が楽しいんだよ」 「綺麗だし、心が潤うだろ?」 本心なのか出まかせなのか分からないようなことを出流が口にする。
2018-07-04 22:47:31顔を顰める一紗に喉を震わせると、出流は花のほうへと足を向ける。鮮やかな赤い髪とよく似た色の花に囲まれて、一紗は一瞬彼の姿を見失いかけた。 「見た目こんなに綺麗なのに、毒だらけなんだから怖いよな」 咲き乱れる花の間に立ちながら、ふと出流が声のトーンを落として零す。
2018-07-04 22:47:31胸の内がざわりと騒ぐのを誤魔化すように、一紗はわざとらしく大きなため息を零した。 「誰かさんそっくりじゃねぇか」 「俺のことかよ」 「誰もんなこと言ってねぇだろ」 柔らかな茜色の瞳がふっと細められる。花の中から出てきた出流は一紗の目の前まで歩み寄るとずいと顔を近づけた。
2018-07-04 22:47:32「そろそろ俺の毒が回り始めるころか?」 ここに、と胸元をつつかれ一紗は息を飲みこむ。上手い返しが思いつかずに黙り込んでしまった一紗に笑みを深めて、出流は再び土手を歩き始めた。 白い背中を、落ち始めた夕日が綺麗な朱色に染める。髪も、体も、咲き誇る曼珠沙華に溶け込んでしまいそうだ。
2018-07-04 22:47:32届かない手を、伸ばしかけて握る。遠ざかっていく出流の姿を見ていたくなくて視線をそらした一紗の瞳が、風に揺れる一輪の白い彼岸花を捕らえた。 『想うはあなた一人』
2018-07-04 22:47:32出紗を書く美桜さんには「それは人魚の恋に似ていた」で始まり、「そこに彼はいなかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば5ツイート(700字)以上でお願いします。 #書き出しと終わり shindanmaker.com/801664
2018-07-08 00:36:07それは人魚の恋に似ていた。 ただ遠くから、声を掛けることも出来ずに見つめるだけの日々。彼に届きはしないだろうかと奏でる音は、しかし本人に届く前に泡沫のように消えてしまう。 焦がれた音に少しでも近づきたくて、けれども自分から歩み寄ることも出来なくて、同じ部屋の片隅で楽器を奏でる。
2018-07-08 00:36:07気づくはずがない。彼はいつだって人に囲まれていたし、俺はどちらかというと疎まれる側だ。交わるはずがない道が、しかし夏に入る直前に、何故かぶつかり絡み合った。 それだけで、幸せだった。それだけで、終わらせるべきだった。 けれど俺はその先を求めようとしてしまい、結果、叶わなかった。
2018-07-08 00:36:08もう少し俺が素直になれていたらなにか変わることもあったのだろうか。離れたくないのだと駄々をこねればよかったのか。今はもう分からない。分かりたくもない。終わってしまったいまになってどうするのが良かったのかなんて、知っても意味がないことだ。 ただ俺と彼の未来は分かたれた。それだけだ。
2018-07-08 00:36:083年生が卒業し、がらんとしてしまった部室を眺める。残った者たちで新しく編成を組み、来年度に向けての活動の指針を話し合い始める。 なにも変わらない日常。動いていく日々。当たり前のようにすぎてく時間。 ただ、そこに彼はいなかった。
2018-07-08 00:36:08