出紗まとめ

美桜 @shootandsay

@sovereignsorrow 「器用そうだから」 淀みなくそう言い切って、鋏を俺の手に押し付ける。意外と頑固な出流相手にこのまま押し問答を続ける方が面倒かと割り切って、俺は赤い毛を一束手に取った。 汗と制汗剤の匂いに混ざってシャンプーの香りがふわりと漂う。一瞬胸がざわつきかけたのには、気づかないふりをした。

美桜 @shootandsay

@sovereignsorrow 手にした髪に鋏を入れ、数センチ切り落とす。髪が引っかかりそうな部分だけ揃えて切り落とすと、俺は肩越しに鋏を返した。 「終わったぞ」 「ん、サンキュ」 金属を握ったのと反対の手が、うなじにかかった細かい毛を払い落す。日に当たらない白い肌に釘付けになりかけた目を、慌てて床に落とした。

美桜 @shootandsay

@sovereignsorrow 「帰ったらちゃんと床屋とか行けよ？」 「覚えてたらな」 そう言って笑った出流は、鋏を片すとひらりと手を振って自分の教室へと戻っていく。手に残った彼の髪から体温と匂いが伝わってきそうな気がして、俺は残骸をごみ箱に捨てると空き教室をあとにした。

美桜 @shootandsay

出流さんの音に触れてはじめて敗北を味わってその『音』に囚われてしまう15歳の一紗さんと、それを横で見ながら、学校が違うゆえにその音を知ることもなにかをすることも出来ない自分を歯がゆく思う14歳の二葉くん。

美桜 @shootandsay

貴方は美桜の出紗で『愛が歪んだ』をお題にして140文字SSを書いてください。 shindanmaker.com/587150

美桜 @shootandsay

最初は少し気になっただけだ。才能もあるし努力もする。性格だってそう問題があるわけじゃない。なのに何故か人を寄せ付けまいと全身に棘を纏っている。だからその誤解を解きたかった。みんなにもこんないい子なのにって知ってほしかった。それなのに。『気が付けば君を独り占めしたくなっていたんだ』

美桜 @shootandsay

今日の美桜の出紗のお題は、『甘くて、苦い』『きらいにならないで』『見つめ合ったまま』です。 #jirettai shindanmaker.com/159197

美桜 @shootandsay

「買ったばかりだけれど、もう行かなきゃいけなくなったから」そう言って目の前に置かれたカップには真っ黒い液体が入っていた。鼻孔を擽る香ばしい香りが中身の正体を告げる。「俺は紅茶派だっつったろ……」何度伝えても覚える気がない相手の姿を思い浮かべつつ、俺はその甘くて苦い液体を飲み干した

美桜 @shootandsay

ついきつい言葉を投げかけてしまう。優しくされるほど素っ気ない態度を返してしまう。気にかけてくれるのが嬉しいのに、俺だけを気にしているわけじゃないのを知っているからどうしても邪険にするような反応をしてしまう。『きらいにならないで』困ったような笑顔を向けられるたび、心がそう叫んでいた

藤原美桜 @sovereignsorrow

夏が終わってしまうとまた一つ別れの季節に近づいてしまうから、日も落ちるのが早くなってしまって二人で過ごす時間も短くなってしまうから、夏が終わってほしくなくてでも言い出せなくて唇を噛む一紗さんと、それに気づいて代わりにその台詞を口にする出流さんとかいそう。夏の終わりの放課後。

藤原美桜 @sovereignsorrow

美桜の出紗の夏。打ち上がる花火に照らされる君の横顔が、儚げで、団扇に隠れて口付けた。 #僕と君の夏 shindanmaker.com/545359

美桜 @shootandsay

@sovereignsorrow 祭りがあるから屋台で食事でもして帰らないか？なんていうのはただの口実だ。部活で遅くなった帰り道、少しでも一緒に過ごす時間を伸ばしたくて一紗を誘い出す。一瞬戸惑った表情を見せたものの、渋々といった様子で頷いてくれたので、俺たちはギターを抱えたまま出店が並ぶ商店街を歩いた。

美桜 @shootandsay

@sovereignsorrow イカ焼き、じゃがバター、焼きそばにお好み焼き。高校生の食欲は旺盛で、あれもこれもと目に入って物を次々と平らげていく。二人で一つを分け合ったかき氷で青く染まった舌を見せ合うと、珍しく一紗が屈託のない笑顔をみせてくれた。 ドン、と大きな音がして花火が打ちあがる。

美桜 @shootandsay

@sovereignsorrow 黒髪を汗で張り付かせた一紗も音に釣られて面をあげた。 きらきらと、夜空に光る花火を受けて輝く瞳と無防備な横顔に愛しさがこみあげてくる。我慢が出来なくて人混みの中、申し訳程度に団扇に隠れてキスをする。爽やかなシロップの香りが二人の熱で溶けて、消えていった。

藤原美桜 @sovereignsorrow

１年後に迎えに行くからって言ってくれたはずなのに結局迎えは来なくて拗ねて参加しただけだったはずのバンドが何故か軌道に乗ってしまってずるずると続けていたんだけれど、出流さんの海外での活躍を知ってこのまま流されているだけじゃ追い付けないって解散を決める一紗さんとか

藤原美桜 @sovereignsorrow

「おい出流」 「出流『さん』」 「さんってガラかよ」 「学生なんだし、先輩を敬ってもいいと思うぞ？」 「そんなんで敬ったうちに入るかっつの」 「まぁ、それもそうか。じゃあ、俺が聞きたいから、は？」 「は？」 「出流さんって、言ってみろよ、一紗」 「……誰が言うか、バカ」

藤原美桜 @sovereignsorrow

@vazzy_kokohaji 「じゃあな、出流『さん』」 卒業する仲間たちとともに校門をくぐる背中を見つめながら、聞こえないように小さくそう呟いてみる。一度も本人に向かって呼んだことのないその呼び名が、とても愛しく切なく響いて、そんな自分の弱さにムカついた俺はいなくなる人の姿を視界から隠すように窓から離れた。

美桜 @shootandsay

出紗を書く美桜さんには「振り返ることはできなかった」で始まり、「俗に言う失恋というやつです」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば13ツイート(1820字)以上でお願いします。 #書き出しと終わり shindanmaker.com/801664 13以上って長すぎない！？

美桜 @shootandsay

振り返ることはできなかった。振り返ってしまえば、あの人が、仲間たちと卒業を祝っている光景を目にしてしまう。それを見て平静でいられとは思えなかった。だってそれは、俺から離れていくことを意味しているから。 学年が違う以上はこういう日が来るなんてことは分かっていたはずだ。

美桜 @shootandsay

けれど頭ではわかっていても、心が受け入れることを拒絶していた。放課後部室に顔を出して、あの人が穏やかな笑顔で手を振ってくれる姿がなくなる日がくるだなんて、考えたくもなかった。 最初は、純粋に『音』に惹かれた。主役ではない、周囲を支えるための音。目立たないけれどなくてはならない音。

美桜 @shootandsay

部活紹介のステージで演奏を聴いたあの日から、俺はあの人に囚われている。生み出す音だけじゃない。あの人の声も、笑顔も、仕草も全部、俺の心をかき乱して、掴んで、離してくれやしない。 俺の名前を呼んで、少し困ったように微笑んで。頬に触れた指先が少しだけ震えていたことも鮮明に覚えている。

美桜 @shootandsay

恋に落ちたんだと、認めたくはなかった。必ず終わりがくることは分かっていて、心を奪われたくなんてなかった。全部全部分かっていた。それなのに。 「失恋とか、ガラじゃねぇっつの……」 思わず漏れた本音に唇を噛み締める。気持ちを告げたことがないのに失恋もクソもないだろ。

美桜 @shootandsay

背後で歓声があがる。それでも振り返る勇気はなかった。見てしまったら最後、みっともない弱音が零れてしまいそうだ。それは、それだけは、絶対にしたくない。 拳を握りしめて昇降口を再び教室のほうへと戻る。俺の気持ちとは裏腹に、春の訪れを告げる穏やかな日差しがひとの少ない廊下を照らしていた

藤原美桜 @sovereignsorrow

いやもうほんと出紗……一瞬想いが通じ合ってもいいんだけれど、想いを伝えられないまま互いに相手のためを思って手を離してそのまま終わってしまった展開でも萌える……そっと宝物みたいなキスはしたけれど、学生であるがゆえに気持ちを伝える言葉がないからあれは戯れだったんだなで終わってていい…

藤原美桜 @sovereignsorrow

例えば、もし。 「好きだ」と声に出して告げればこの関係はこれから先も続くのだろうか。 ふと浮かんでしまった世迷言を苦笑でかみ殺す。そんなこと、あるはずがない。触れた指先のぬくもりも、一度だけ重なった唇も、きっと熱に浮かれた末の幻想だ。それ以上なんてあるはずがない。