とりとめのない夢

にゅい @lanuit2012

ただ、ここしばらくずっと、身体も気持ちもしぼんだ風船のように過ごしていて、なんだかもう自分の中から感性が消え失せてしまったような気がしていたから、荒唐無稽で脈絡がなくても、はっきりと覚えていて、自分が面白いと思える夢をみるって、感性が戻ってきたようで、嬉しいのだ。

にゅい @lanuit2012

夢の中の私は、ほぼ今の私だったと思う。ただ、身体はずっと健康で、しかも軽捷に動くことができた。珍しく現実の人物が登場した。親友の理恵だ。私と彼女は、私の親戚が企画した、言うなれば「親戚の親睦旅行」のようなものに招かれて、東南アジアの某国に行くことになった。

にゅい @lanuit2012

1～2日目は、普通に色々なところを見て回った。ここはあまり覚えていないけど、景勝の観光スポットをいくつも訪ねて、あまり風景とかに興味のない私でもずいぶん楽しんだと思う。3日目は、教会を兼ねた宿泊施設に泊まることになった。仏教の国だと思っていたけど、教会もあるんだな、と思った。

にゅい @lanuit2012

この教会、割と大がかりな施設で、宿泊施設というより、もうホテルみたいなものだった。すぐ隣の敷地には何かの工場があって大規模なプラントを備えていたけど、私は気にしなかった。それより私は、教会の凝った内装にずいぶん興味を惹かれた。ちょっとしたテーマパークみたいなものだった。

にゅい @lanuit2012

教会にはたくさんの子供たちがいた。子供たちが楽しく過ごせるようにと、内装には細々とした意匠が多数凝らされていた。ちょっと説明しづらいけど、子供しか通れない幅の抜け道とか、小さなドアとか、そしてそれらを使わないと行けない子供たち専用の部屋とか。凝った猫カフェみたいな感じ。

にゅい @lanuit2012

教会にはルールがあって、それには宿泊客の私たちも課せられた。まあ、大したものじゃなかったんだけど。例えば、朝ご飯前には敷地の周囲を一周マラソンすること、とか。周回を自分で増やせば、そのぶん朝ご飯も豪華になるという面白いルールだった。私は美味しい朝ご飯のために張りきって走った。

にゅい @lanuit2012

しっかりお腹にお肉のついた伯父さんなんかは、一周で早々に音を上げて食堂に戻っていった。私は痩せっぽちのくせに結構食い意地は張っているので、何周すれば何が増える、というのをあらかじめ聞き出していて、ゆで卵とかベーコンとか目玉焼きとか、とにかくそんなもののために5周は走っていた。

にゅい @lanuit2012

軽々と走りながら教会の裏手に来た時、私は教会と隣の工場とが一続きの敷地であるのに気づいた。おや、別々の建物だと思っていたけど、オーナーは一緒なのかな、でもオーナーって誰だろう、ホテルの支配人みたいな立派な服の、あの神父さんだろうか、なんて思っていた。

にゅい @lanuit2012

5周も走って、いい加減同じ眺めに飽きてきた私は、ちょっと足を止めて教会の外観を眺めてみることにした。道路は低くてよく見えなかったので、私の背くらいある高さの植え込みによっこらしょ、と登って眺めてみた。内装と同じように、外観にも工夫が凝らされている。なかなかいい建物だな、と思った。

にゅい @lanuit2012

私が教会を眺めていると、何台もの車が工場に向かって走ってきた。先頭だけがジープで、残りはSUV。最初は気にならなかったけど、先頭のジープの助手席の男の腰にホルスターを見つけて、私は慌てて植え込みに身を潜めた。旅行最終日に、これはまたとんでもないイベントが起きそうだ。

にゅい @lanuit2012

私は植え込みの中ですべての車をやり過ごしてから、なんとか理恵だけでも敷地から逃がさなきゃ、と思った。ちょうど彼女がのんびり歩いてくるのが見えた。私は、こっちへ、静かに、と合図して、彼女もそれに気づいたけれど、横合いから彼女は拳銃を突きつけられて、敷地内へ連れていかれてしまった。

にゅい @lanuit2012

武装した男たちの目的は分からないけれど、ろくでもない事に決まってる。そしてこの国の警察や軍はとても短気で、観光客のために辛抱強く交渉してくれるとは思えなかった。テロリストたちの武器にサイレンサーは尽いていなかった。どうやって理恵を逃がそう。算段を始めたところで、目が覚めた。