原発被曝のリスクに際して　〜知識補充と、個々人のとるべき対応〜

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1)原子力安全委員会の発表値：福島第一原発での事故のヨウ素131とセシウム137の想定放出量はヨウ素131等価換算値で630,000[T Bq] http://www.meti.go.jp/press/2011/04/20110412001/20110412001-1.pdf

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2)ただし、引用した経済産業省発表資料より、発表値は大気中への主な放射性物室の放出の推定量であって、海や土壌へ放出された量は含まれていない。ヨウ素131換算値で630,000[T Bq]という数字を見て、これがどのような値であるかすぐに理解出来る人は極めて少ないと思われる。

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3)ヨウ素131換算値で630,000[T Bq]という量はヨウ素の質量に換算して約137[g] http://m.wolframalpha.com/input/?i=630thousand+TBq+%2F+I131+specific+radioactivity&x=0&y=0

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３の補足）先の換算値は暗算でも出せるレベルの算数の計算ではあるが、念のため、科学技術計算でしばしば用いられるMathematicaを使用した。

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4)たったコップ一杯の水の質量よりも少ない質量の放射性ヨウ素131等価換算相当量の放射性物質の放出・拡散でこの大惨事である。原子力発電所における大きな事故というものは、いかなる事があっても絶対に起きてはならない恐ろしい事であることが理解できるだろう。

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5)しかし、絶対に起きてはならないとされる事態が現実となってしまい、その危機に直面している今、我々に出来る事、すべき事は個々人が正しい知識を身につけ、先ず自分自身や大切な人の身を守る(被曝量を可能な限り減らす)術を知ること私は思う。

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6-1)とは言え、どのような情報を信じれば良いのかという事は非常に難しい問題でもある。原子力関連施設における事故や放射線の人体への影響の評価は、様々な事情故に「可能な限り、危険性や悪影響を小さく評価したい、安全を主張しなければならない集団」から、

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6-2）「とにかく危険であるという評価やデータを集めて、原子力発電所の新規建設の凍結や、運転中の原子炉の運転停止、廃炉を実現しようとする集団」によるものまで、非常に幅広いものがある。勿論、ご存知の通り政府や東京電力は前者に位置している。

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7)訴訟・補償問題を抱える電力会社や政府等が放射線の人体や環境への影響をなるべく小さく評価しようとする姿勢は今に始まった事ではない。原発や再処理施設の運転/停止を巡っての様々な裁判や原発労働者の労災認定に関する裁判からも明らかであり、そうしなければならない事情を抱えている。

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8)政府や専門家による「直ちに健康への影響があるものではない」という発言は、今となっては誰もが信用していない言葉であろう。これは単に短期で現れる確定的影響(急性放射線障害)の恐れが無い事を述べるに留まっており、被曝による中長期的なリスクの上昇(確率的影響)に関して言及していない。

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9)被曝とリスクの関係は積算量を考えなければならない問題であり、日ごと、或は時間ごとの測定データで区切って「直ちに健康への影響はない」と評価出来る話ではない。被曝に関しては、「塵も積もれば山となる」という認識を誰もが持っていなければならない。

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10)本来の自然環境下以外での被曝が無かったとしてもガンや白血病は自然発生するので、ある程度まとまった量の被曝がなければ疫学、統計学的に被曝とリスクの上昇の相関関係を認めることは出来ない。しかし、相関を証明出来ないからという理由で自然環境下以外での被曝を容認するわけにはいかない

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11)それは、今後さらなる大規模な放射性物質の放出・拡散が起こる可能性が否定出来ない以上、それに備えて今からでも可能な限り被曝を避け各個人の被曝積算量の増加を抑え、放射線によって破壊される人体細胞の自己修復能力を「温存」しておく必要があるからである。

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12)チェルノブイリでの事故の後に周辺各国における甲状腺ガンの発症率が急上昇したことは、事故の影響を小さく見積もろうとする科学者ですら認めざるを得なかった統計上の有為な数字であり、特に小児甲状腺ガンの発症率が急上昇したことは周知の事実だろう。

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13)その傾向はチェルノブイリ原発の近辺に留まらず、ウクライナ、ベラルーシ、及びロシアの広域に渡って確認され、報告されている。その主な原因として、大気中への放出以外で、牛乳(及びその加工食品)を介した食物連鎖において放射性ヨウ素の生物濃縮が行われたことが指摘されている。

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14)放出された放射性ヨウ素131は大気中からの吸入、傷からの入り込み、および食品や飲料の経口摂取により人体内部へ吸収され、血液中から甲状腺に集中的に蓄積される。甲状腺は喉元にあり、成人で高々十数グラム、小児で高々数グラムという小さな内分泌器官である。

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15)そのような小さな器官が局所的に放射線を浴びることにより、甲状腺ガンの発生のリスク上昇を引き起こす。今、我々に出来る事は先ず、このヨウ素131をなるべく体内に取り込まないように気をつけ、内部被曝から危険から身を守る事である。

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16)例えばこの１ヶ月で、保守的な制限値を設定する傾向にあるWHOが発表している水道水汚染に関するガイドライン http://www.who.int/hac/crises/jpn/faqs/en/index8.html を自分自身の目で読んだ人が果たしてどれだけいるのだろうか。

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17)汚染された飲料や食品に関する指標はいくつもあるが、最終的に食べる／食べない、飲む／飲まないなどの選択を迫られ決定しなければならないのは各個人である。政府や専門家の安全宣言を疑ったり不安視するのは当然であるが、だからこそ自身での判断や対策が出来る知識を身につけて欲しい。

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18)食品の生産者も風評被害に悩まされているが、消費者も放射性物質の経口摂取による内部被曝という「実害」を現在進行形で少なからず被っているのであり、また、消費者は購入・消費を選択する当然の権利を持っている。

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19)生産者への被害の責任の所在は明確であり、国と電力会社にある。風評被害という言葉によってその責任が消費者、国民に転嫁されてはならない。

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20)では、放射性ヨウ素131の脅威から身を守るために今出来る事は何であるか考えると、ヨウ素131の量が少ない食品を選択する事は勿論であるが、ヨウ素131という核種の半減期がおよそ8日であることを知り、その性質を上手に利用することが肝心である。

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21)例えば、放射性ヨウ素が1000[Bq/kg]含まれる食品を購入したとする。その食品を何らかの方法で8日間保存してから食べれば、その時点で含まれる放射性ヨウ素は500[Bq/kg]であり半分に減らす事が出来る。40日間保存出来たならば約30[Bq/kg]まで減らすことが出来る

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22)これは調理や保存方法を少し工夫するだけで実現出来る自分の身を守るための身近な対策であり、自分自身で満足出来る汚染レベルに低下するまで上手に保存する方法(冷凍など)を駆使して待てば良い。飲料水についても同様であり、清潔な容器に保存しておく事で放射性ヨウ素の経口摂取量は減らせる

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23)ただし、この対策は半減期が比較的短いヨウ素131であるから可能な話であり、半減期が約30年の放射性セシウム137等に代表される他の核種に対する対策としては他の方法が必要である。