突発現パロSS、第八話

本編全然時間経ってなくてうける
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鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

気づけば窓から夕陽が差していた。 そろそろ定時。鹿島が夕飯の事を考え始めた時、コンコンとノックする音がきこえた。 返事をする前に勢いよくドアが開き、それぞれ緑と橙の道着を身につけた二人が元気に入ってくる。 「おつかれさまー!」 「バイトにきたよ!」 「蒼龍さん飛龍さん、お疲れ様です」

2018-06-04 20:37:56
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「あーっ新人さんだぁ!」 「大井と二人っきりで電話番が初仕事?いじめられてない?」 「そんな事しません」 「分かってるよぉ、あっ今度皆でごはん行こ、いいとこ知ってるから!」 「新人ちゃんお酒いけるクチ?」 数秒前まで落ち着いていた空間が一気に姦しくなる。怒涛のお喋りは定時まで続いた。

2018-06-04 20:48:12
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「じゃあね大井、カッシー!」 「や、やっぱり名前で呼んでほしいです蒼龍さん」 「そう?善処するね」 「日中疲れたらうちにサボりに来なね、がっつり弓の腕を鍛えてあげよう」 「弓術バカに可愛い後輩を巻き込まないでちょうだい」 「ヒューッ今の聞いた飛龍!?」 「聞いた蒼龍!!」 「ぬぅぅ」

2018-06-04 20:58:09
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最後にもう一度挨拶をして部屋を出る。 「はぁ......騒がしいのが多くてごめんなさいね、疲れた?」 「いえ楽しかったです、愉快な方達でした」 「常に酔っ払ってるような二人だからね」 雑談しながら、大井は鹿島を出口まで送る。 「それじゃまた明日。気をつけて帰ってね」 「はい、お疲れ様です」

2018-06-04 21:06:18
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たくさん喋ったせいか、鹿島はふわふわとした気分で自宅に向かう。 だが歩くたびに荷物に違和感が募り、少し正常な気分に戻る。 「なんかガサガサいうなぁ......?」 見るといつのまにか鹿島のカバンには貝ひもとスルメの袋が突っ込まれていた。 「......お酒、買って帰ろうかな......飲めないけど」

2018-06-04 21:12:54
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帰りに買った酒瓶を飾ったまま、鹿島は机に伏せる。 「大井さん、色んな顔するんだな......」 蒼龍と飛龍の二人が大井をからかった時はむくれたり、かと思えば反撃に出てしてやったり顔をしたり。 「やっぱり普通のヒトだよね」 多摩の大井は変なヤツ、とは近しい間柄だからこその評価なのではないか。

2018-06-04 22:55:15
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鹿島は引き出しからノートを取り出した。学生時代に数冊まとめて買って結局余ったものだ。 表紙に小さく日記と書いて、ページを開く。書く事に少し悩んだあと、表紙の文字を雑記に書き換えた。そして中には何も書かないまま引き出しに戻して、寝る支度を始めた。

2018-06-04 23:06:21
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鹿島を見送った後、大井は一度自分の席へ戻る。 鹿島を見守りながら打ち込んでいたデータをハードディスクに移して、パソコンは元の場所に戻した。自分の机が片付いているのを確認して、大井も帰路につく。ついでに休憩所を覗いてみたが、多摩の姿は無かった。

2018-06-05 19:38:20
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いつものコンビニで軽食を手に取る。なんとなく菓子パンも追加して会計し、店を出た。 遠目に見える自室は暗く、誰かがいるようなようすは無い。 鍵を開けて中に入ると、やはり無人だった。木曾はきちんと戸締りをして帰ったらしい。 大井は荷物を置き、電気を点けた。

2018-06-05 19:45:31
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もしまだ居れば食べさせようと思っていたパンを棚に置き、これは明日の朝食ねと自分に呟く。 着替えを済ませて腰を落ち着けると、香取の定時連絡を受けた鹿島のようすを思い出す。 直前まで大人らしい振る舞いをしていた鹿島が破顔し、嬉しそうな声で話す。満面の笑みとはああいう顔を指すのだろう。

2018-06-05 19:55:04
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「香取姉、かぁ」 香取は後輩で、大井は妹のように感じていた。鹿島からすれば香取は自分にとっての球磨たちと同じ存在なのだと思うと、不思議な感じがした。 何にせよあれだけ会いたがっているから、香取が帰ってきたら鹿島に休みをすすめて、二人で過ごしてもらうというのも有りかもしれない。

2018-06-05 20:03:30
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香取と鹿島が一緒にいる所を想像して、不意に自分の事を思い出した。 新人に構って少し忘れていられたが、やはり最愛のヒトと定時連絡でしか会話できないのは結構つらい。 「北上さん、早く帰ってこないかなぁ」 誰もいない部屋で声に出してみると、一層寂しさが募った。

2018-06-05 20:10:24