「……あんた、私を知ってるの」ネコムラの問い掛けに、男は頷く。「当然だ。俺は、業のジャス。七本槍とは昔からの付き合いさ」そして、ネコムラの背後から様子を伺っていたルナを見やった。「そちらのお嬢さんは知らないな」「……オレはルナだ」 10 #nltkst
2018-06-19 23:17:52ワザのジャス。 ギョウのジャス、キョウのジャスとも。金の名を冠するが、面倒なので昔の名を名乗っている。 #nltkst
2018-06-19 23:24:34「七本槍……?」ネコムラが首をひねる。聞き覚えのない単語だった。「なんだ、何も覚えていないのか」ジャスは呆れた声で呟くと、大袈裟に肩をすくめた。「知りたいか?」「……知ってること、ぜんぶ教えて」「場所を変えよう」彼は懐から、なにやら小さな瓶を取り出した。 11 #nltkst
2018-06-19 23:21:48ジャスが小瓶を放り投げると、それは砕け散り、辺りの地面に魔術的な文様が刻まれてゆく。「これは」「転移門だよ」ジャスが答えた直後、辺りは眩い光に包まれた。光が止んだ時には、三人の姿はなかった。 12 #nltkst
2018-06-19 23:26:42「……で、ここは?」ネコムラは辺りを見渡した。埃っぽい部屋だ。「俺の工房。その一室だ」ジャスはそう言うと、古びた地球儀に手を伸ばそうとしていたルナを見咎めた。「おい、勝手に触るなよ。危ないからな」「ひ、ひゃい!」ルナは背中をぶるりと震わせた。 14 #nltkst
2018-06-19 23:31:28「さて、本題に入ろうか」ジャスはソファに身体を沈めると、ネコムラを見つめた。「何が望みだい?」「私、ここ数日以前の記憶を失っているみたいなの。知っていることを教えて」ジャスはしばらく悩んでいたが、ゆっくりと立ち上がった。地球儀の横に置かれた、黒い革手袋に右手を通す。 15 #nltkst
2018-06-19 23:33:50「やっぱ面倒だな」ジャスは呟き、ルナの首根っこを鷲掴んだ。「ちょっ、おい……何すんだよ!」そして無言でネコムラに近付き、ルナを押し込んだ。「えっ……え?」ルナの肉体は、ネコムラへとするりと吸い込まれる。ネコムラはぐらりと崩れ落ちた。 16 #nltkst
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