h_sinonomeの#twnovelまとめ 2011

ハジメ @h_sinonome

「人は何故寒くても外に出るのかしら？」「合理的じゃないから」「もっと情緒的な解を求めているの」「じゃぁ人恋しいからですか」「君も人恋しいから寒い中外に出てきたの？」「呼び出しといて何言ってるんですか」「君が私の呼び出しに応える合理的ではない理由が欲しかったのよ」 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

稀に私の見ている此処が現世なのかあの世なのか分からなくなるんですよ。タクシーの運転手が語る。生きた私が生きたお客さんを乗せているのか。もしや死んだ私が生きたお客さんを運んでいるのかも。生きた私が死んだお客さんを乗せているのかもしれません。ねぇ？どう思います？ #twnovel

ハジメ @h_sinonome

話をしよう、と彼が誘う。言葉を交わせることへの誘惑に耐え切れず耳を傾けるのだけれど何故だか言葉を聞き取ることができない。きっと私の言葉も通じはしないだろう。ああ、もうダメなのだなと思う。私は歌詞の聞き取れない歌のような彼の声を、ただ聴いていた。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

家族、生活、生業。持っていながら夢のように思っているのだ。蚊帳の外。私というものは日常と己を切り離してしまって接続点を持つことを忌避している。境界を、越えて向こう側に行ってはいけないと思いつつ、僅かな切っ掛けで越えることを止められないだろう。恐怖もしくは期待。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

幽霊になると幽霊はわからず屋だということが分かる。肉体という皮を被っていない人間に話は通じやしない。なるほど幽霊を成仏させるというのは難しい。除霊屋がむにゃむにゃと語りかけることも筋違い甚だしい。私はまだお婆さんなんて歳じゃないわ。腹が立って木魚を蹴りあげた。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

彼女自身の体を中心に手にした扇は地面と水平な弧を描く。同時に長いスカートの裾はふわりと浮き上がった。「さあ楽しい戦闘の時間ね」待ちかねたというように好戦的な笑みを浮かべ彼女は幽鬼の群れへと歩みを進める。困ったな。戦闘狂の式神が雑魚退治だけで満足するはずがない。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

誰も居ない会議室の机を布巾で拭き顔を上げると観葉植物の陰に気配を感じて体が強張る。ああ、なんだ君か。いつもの子供がソファと観葉植物の隙間に嵌っている。害はない、ただ隙間に居るだけだ。お前が羨ましいよこの世と関わらなくていいからと言うと、にいっと不気味に笑った。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

鶴を折りましょう。千羽の鶴を折りましょう。もう居ない貴方の為に。鶴を折りましょう。一枚、一枚。戻らない貴方は元気でいますか？月日は山を幾度も巡り、とうに千など越えてしまった。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

古文書にはモンスターペアレンツという単語が散見された。学問の場に現れる怪物らしい。現代において怪物と人が同じ場所で暮らすなどありえないことだが古代には怪物と共存する文化があったというのだろうか。難しい語句が多く解読は捗らないが更に読み進めるべく意欲を高めた。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

求めたらね、求めた分だけの代償を支払わなければならないのだよ。ああ？君の手元には払った代償分のモノが残っていないと？金で買ったものだって、支払った金に見合うだけの価値がないこともあるだろう。ましてや心で心を求めるのなら金でモノ買う以上の目利きが必要になるのさ。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

生きているのか死んでいるのか分からないと、まぎれもなく生きている僕が言う。疑う余地もなく死んでいる君も、死んでいるのか生きているのか分からないのよと言った。僕と君の間で生と死に大差はない。君と僕の存在に違いは大きくないと信じる。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

紙風船を宙へと押し上げる。ぽん。ぽん。ぽん。長い間飽きること無く、それを続けていた。いつしか夕の日が沈みかけ、私は紙風船に火を放つと、ぼうっと燃した。火は二つ、三つと別れ、藍の空に映える。私はコンッと一声鳴くと狐火を纏い、山へと帰るのだ。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

私と世界は隣接していない。私と隣接している社会は世界を利用している。私は社会を受け入れないけれど、世界すら遠くにある。私は私独自の世界を構築したけれど、歪で稚拙な私世界は酷く居心地が悪く、たびたび創造主を道連れに崩壊するのだ。救世主はまだ？ #twnovel

ハジメ @h_sinonome

原稿用紙に「　　」「　　」「　　」「　　」「　　」を書き連ねていると、頭部に衝撃が走る。万年筆が滑って用紙を汚した。振り向くと担当編集が、この馬鹿作家、と言う。遊んでいるんじゃないんだ、この空白にこれから台詞を埋めていくつもりなんだ。たぶん。 #twnovel #twnvday

ハジメ @h_sinonome

「　　」声にならない声を上げる。「聞こえない」といいつつ彼女の声が具現化される前に彼女の口を塞ぐ。「　　」唇を離して何か伝えようとするのだけど、今度は僕の声が出てこない。「いいから続けて」と彼女が囁くから、もう一度口を塞いだ。 #twnovel #twnvday

ハジメ @h_sinonome

睡眠宅配社でございます。思うままに質のよい睡眠をご提供。どちらのコースになさいます？永眠コースですか？こちらは当社で一番人気！こちらになさいますか？ところで永眠って何かですって？ご存じない？お目覚めになられましたら、詳しく説明致しますよ。おやすみなさいませ。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

彼女に「いつ会える？」と聞くと「わかんない」と言う。「僕のこと好き？」と聞くと「わかんない」と言う。「私のこと好き？」と聞かれたから「わかんない」と返す。また「いつ会える？」と聞くと「私のことちゃんと好きって言ってくれたら」って言う。そういや告白はしてない。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

停電で稼働停止している冷凍庫から、角の溶けかけたアイスを取り出した。春も終わりかけ、じわりと湿気を含んできた大気が温い。冷蔵庫の方の死体のことを思う。腐りはしないだろうか。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

「続ける？」と彼は聞いた。彼女は無言で首を振る。「助ける？」と彼は手を差し出した。彼女は崩れかけた天井とガラスの中で彼の手を取った。「よかった」と彼は彼女を抱いたけれど、彼女はまだ手にした剃刀を見つめている。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

力が欲しい。立ち止まらない、力が欲しい。心に開きかけた花を、咲かせる力を誰もが持っているのだから、どれだけの手間がかかろうと、どれだけの月日がかかろうと、大きな花を咲かせよう。咲かせた花は種を生み、また大きな花を咲かせるから。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

ラーメンは美味しくもなかった。人間を食べたいと思うが、解体済みの牛や豚は多く流通しているが、人間の切り身はスーパーに並んでいない。人を解体するのは至極めんどうだ。つまり巷にあふれているものを摂取するのが楽だ。こうして食に興味のない食人鬼は人の中で暮らしている。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

硝子窓の外に広がる鮮やかな花畑を眺めることしかできずに、ただ座っている。行きたいのなら立ち上がり玄関から外へ行けよいのだ。歓談する人々に向き合い純朴な人々と挨拶を交わすだけでよいのだ。だが、私は見えない糸で縛り付けられているかの様に座ったまま花畑を眺めている。 #twnovel

ハジメ @h_sinonome

たくさんたくさん、貴方のことを考えているから、貴方のことが必要なんだと思うの。でも、必要なことについてそんなに考えるものかしら？例えば歯みがきは必要だけれど一日中歯みがきについて考えているかしら？重要な考えなどほんの少しのこと。じゃぁ、貴方のことについては？ #twnovel

ハジメ @h_sinonome

階段にアンパンが落ちている。お腹が空いていた。おいしそうだ。周りは乾いている。アンパンに汚れはない。これは拾うべきだろうか？迷った。「それでどうしたの？」と隣で話を聞いていた彼女が問う。「食べたよ」と答えた。すると彼女は別れ話を切り出した。 #twnovel #twnvday

ハジメ @h_sinonome

勤務時間が終わり帰り支度をしていると、朝、妻に頼まれたゴミ袋を出し忘れたことに気づいた。妻の怒る顔が目に浮かび鞄に書類を入れていた手を止めたが、すぐに、もう妻は居ないのだということを思い出す。帰ったら妻の入っているゴミ袋をマンションの収集所に出してしまおう。 #twnovel