ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/14 ついのべの日！

毎月14日はツイノベの日！ @twnvday_bot

毎月14日はツイノベの日！ 今回のお題は1912年に柳田國男さんの『遠野物語』が発刊されたことにちなんで「妖(あやかし)」です。物語られることで息づく幾千幾万の妖。140字の時の川で、何と出逢うでしょうか？【毎月14日はツイノベの日！ お題「妖(あやかし)」 #twnvday 】

市五郎 @t_ichitarou

夏に友の家へと招待され、暑い中をお疲れ様と出されたのは麦茶が注がれた江戸切子。レトロな細工が可愛いなと思いつつ手に取った所、円らな目がガラスの表面に現れ数秒見つめ合う。面映そうに瞬いた後に消えたので切子をそっと机に戻した。これだから古い家は油断がならない。#twnvday

Weiß @under_whites

#twnvday 夕方のオレンジ色に染まる時、細い参道の山道を登り切ると彼がいる。茶髪に琥珀色の瞳、影にはユラユラと揺れる9つの尾「今日は何の封印を解いたの？」私の問に彼はニンマリ笑うと「探してごらん」悪狐は試すように封印を解いていく、彼を祓いたいが今の自分では無理なのが悔しい

よいオオカミ。 @buona_wolf

#twnvday 「描けぬ」屏風を睨みながら絵師は酒を煽った。百鬼夜行のごとく妖怪たちが開く酒宴の真ん中、踊る宵姫の舞姿だけが決まらない。現の女も描けぬ。夢に女など見ぬ。酒も無くなり眉をしかめたとき。何かが背後で転がったような音と、鈴が落ちたような音が重なった。

月野安積 @tamrurin

わたくしのようなモノはもうこの世には数匹しか残っておりませぬ、桜の木陰からそっと人を覗いているのがお似合いの小さきモノでございます。なれど今宵は百鬼夜行、三味の音色も艶やかに楽しき月夜を舞い踊る、好いて下さいましたなら彼方の傍に馳せましょう　#twnvday

遊森謡子@最新刊は中華後宮ミステリ @UtakoYumori

鉄を溶かす炎の色を長年見つめ続け、片目を潰した男の所に、「似た者同士、仲良くしましょうよぅ」と若い娘が押しかけた。そういや、死んだ女房の持ち物だったあれこれをほったらかしにしていた。「針供養もせず済まないな」と言うと、娘は片方だけの目を細めて「いいの」と笑った。　#twnvday

Ｔｍ＠浦島 @monotonaru

帰宅途中、ビルに挟まれ窮屈そうに佇む店を見つけた。見るとこう書いてある。『あやかしや』菓子屋かと期待して暖簾を潜ると、品らしき物もなく老婆が一人。「お菓子屋ですか」「あやかしやだよ」「あやって…」「怪を借すのさ」「はあ」そこで気づいた。老婆の首から下が無いことに。#twnvday

添嶋譲 @literaryace

今年も家に来てくれるかな。掃除をしながら思案します。いまいち迫力に欠けるのかな。それとも怖すぎるから? 仲間と集まって相談をしよう。本当は一年中いつでも遊びに来てほしいのです。でもそうならないのは肝試しが夏と結びついているせいでしょうか。猫娘は心配がつきません。 #twnvday

@natushiro

深夜一時。この時間になると幽霊が現れる。毎日背筋を凍らせていた私は気づいた。幽霊が布団で眠り、私は部屋の真ん中に立っている。見上げればぎしぎしと揺れるベルトの紐。深夜一時。私は首をつったのを思い出す。昔、そこには木があった。昔、そこは山だった。昔、私は生きていた。#twnvday

アドパラがリリースされます！ @fuzzygraymewmew

あ、と思ったらその瞬間浴衣の袖から金魚がするりと抜け出した。白い金魚の形に柄が抜けてしまった浴衣は些か間抜けだ。怒って私は金魚鉢を睨み付けた。当の金魚は今夜縁日で手にいれた美しい金魚と嬉しそうに鉢の中で戯れていたのだが。 #twnovel

(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

土塀の隙間から桑が顔を覗かせていた。枝先には小振りの実が生っており、それを仰ぐ度私の口内に甘酸っぱさが広がった。ああ、食べたい。白い実が日増しに黒く熟していく。ついに掌に取り、おやと思う。この実はこんなにも赤かったろうか。噛みついた途端視界がぶつりと黒くなった。 #twnvday

夕凪奏恵 @k_you_nagi

デジタル対応妖怪タラレバは相変わらず #twnovel が大好きだ。お祭りの日である毎月14日も大好きだ。ついのべの神様に言いつけられた用事は13日中に全部済ませた。他の妖怪と遊ぶ約束もしてない。おやつとごはんもちゃんと用意した。24時間みっちり #twnvday を楽しむのだ。

夕凪奏恵 @k_you_nagi

#twnovel 夜は窓の外を見ちゃダメよ。小さい頃にお母さんが言ってた。だから夜になったら窓に近づかないようにしてた。でもね。何か音がするの。気になるの。ちょっとだけ…… #twnvday あたしのしっぽ、ふたつになっちゃったの。ねこまたってなぁに？ あたし、どうなっちゃうの。

鈴子 @rinko_m

実家に帰ると、生まれたてだったはずの姉の子が走り回り立ち止まり、空に向かって笑っている。もう3年か。ああ、この子にも見えているのだねと姉と頷きあう。実家の梁は大正時代から、そこにある。人とも物ともつかぬものが、梁そのものなのか梁に憑くものなのかは祖母さえ知らない。#twnvday

楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 半妖の子はいつも虐められていた。母親は普通の人間のため何の妖力も持たない。成長した半妖の子は女の武器を使い、かつて虐めていた男に近づき、騙し、破滅させた。妖女と呼ばれた半妖の子は、老いることなく永遠の若さを保った。その姿は幼女のままだったという。#twnvday

良崎 @kanfrog

「こりゃあ別嬪さんだ」ええ、そうでしょうとも。「とても狐にゃ見えねえ」これであなたに釣り合いますか？　「ただし、前だけだ」ああ、尻尾！　尻尾が！　「そう落ち込むな」これが落ち込まずにいられましょうか。「妖だって獣だって、俺は構わねえよ」はためく尻尾に彼は笑う。 #twnvday

いらつめ @kanoiratsume

お帰りなさい。最近遅いのね。ご飯は？ あら、食べてきたのね。彼女と？知ってるのよ。別に怒っちゃいないわ。帰ってきてくれるならいいの。人間はそういうものだって、最初に契約するときに教わったもの。ふふふ。あなたみたいな人に住んでもらって、あたし結構しあわせなのよ。 #twnvday

添嶋譲 @literaryace

他にすきな人ができた。君がいう。紹介しなよと返事する。どうせならそいつと友達になって君の話で盛り上がってみたいし。たぶん互いの顔なんか見ちゃいなかった。やめてよ。なんで、もういらなくなるからか。君の声が震えている。わざとらしいな。初めて君を見た。嘘ばっかじゃん。 #twnovel

いらつめ @kanoiratsume

風が気持ちいい。うたたね。そういえば窓、あけっ放し？ まあいいか、こんなに気持ちいいんだもの。仄かに柔軟剤の匂い。ああ洗濯物とりこまなくちゃ。あとでいいか、こんなに気持ちいいんだもの。何か長い夢をみていた気がする。起きなくちゃ。でも。こんなに気持ちいいんだもの。 #twnovel

サハラ @tobiironi

形の歪んだ雨戸と雨戸の、色褪せた箪笥と壁の、僅かに埃避けがずれた姿見の、一冊分だけ空いた本棚の、胸に引き寄せた膝と膝の、組み合わせた指と指の、今まさに閉じようとした上瞼と下瞼の、隙間という隙間からの優しい手招きに、私はとうとう逃げることを諦めた。#twnvday #twnovel

“さ(*´く｀)ら”たん @sacra_d15

#twnovel 「空が綺麗」誰よりも先に君に写真を送った。写真なんて送らなくても、君との距離はせいぜい20kmで、見上げる空は大して変わらないのだろうけれど。このベランダから見上げる空と、君のいるところからの空は、僅かに色が違っていて、私が送ったそれは、きっと、少しだけ桜色。

あさくら @AR_322

我が家には開かない箪笥がある。取っ手を引けば突っかかり、やれ処分してやるぞと脅せばすんなり開く。そんな我が家に子供が産まれた。狭いところだから、そんな曰く付きの場所も活用しなくてはならなかった。すると、箪笥はすんなり開くようになった。なんだお前、寂しかったのか。 #twnvday

@sakutukixxx

本当のことを言ったって誰も本気にしないんだ。だったら僕は嘘だけつこう。そう言って、天邪鬼は二度と本当の気持ちを言いませんでした。胸が押し潰されても笑って冗談を言っていました。だから彼が消えてしまったときも誰も心配したりしませんでした。 #twnovel #twnvday

Cal Que El Lulu-rain @senzaluna

僕が生まれる前から家にいた猫のチビが今朝から姿を見せない。お母さんは、もう二十年も生きた子だから死期を悟って出てったのかもと寂しそうに言った。実は僕、昨日の夜、窓越しに機嫌良く歩く猫を見たんだ。チビに良く似た、ううん、きっとチビなんだけど、尻尾が二本あって……。 #twnovel

layback @laybacks

生の夢を食べることが禁じられた。絶望や失望に塗れた夢を食べて闇に呑み込まれる獏が増えたからだ。今や夢は加工されて夢屋に並ぶもの。明るく楽しい夢ばかりだ。古株の獏たちは口々に愚痴る。生の夢が食べたい。自己責任でいいから食べたい。夢は暗ければ暗いほど美味いのだ、と。 #twnovel