ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/14 ついのべの日!

※毎月14日はついのべデー。今月のお題は「妖」(あやかし)。 今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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冷光 空也 @reikou0v0

大人に成って見る夕の海はセピア色で眩しい。キラキラ光るのは怪火か。子供たちが光の上を馳せている。気づけば昔に溺れた親友が此方を見やって笑っていた。 #twnvday 「まだ生きているの。可哀想。」高い声に甘美な響きを感じる。日は落ちてそれはタールになり、私は浜に靴を遺していた。

2012-06-14 03:04:10
はたなか茶 @cha_hatanaka

CDプレイヤーにご先祖様の霊が降りる。勝手に電源が入るのだ。私がそう言うと、彼は露骨に嫌な顔をした。壊れてんだろ。壊れた機械を処分した。後、ご先祖様は携帯電話に降りた。彼からの連絡を待つ時、勝手に電源が落ちるのだ。彼には妻子があった。機種変更の予定はまだ無い。 #twnovel

2012-06-14 03:27:15
あまたす @amatasu

アヤカシさんは人を怖がらせるのが仕事だ。長い間ずっとそれだけやってきた。みんな、自分を見れば震え上がる。だが、最近は違った。自分が出て行くと、子供たちは歓声をあげて寄ってくるのだ。なぜだ。アヤカシさんは怖くなって逃げた。ゆるキャラなんてものは、知る由もなかった。 #twnovel

2012-06-14 04:59:31
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 最近やけに気になる、同期のあの娘。俺と目が合うとじっと見つめてからふっと伏せる、あの仕草にやられてる。毎日の昼休憩や帰り道、時間はまちまちなのによく一緒になって。偶然は運命か、と盛り上がる俺に「今日は回り道しない?」なんてタイミング良過ぎ。ねえ、君って何かの妖?

2012-06-14 05:20:27
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 入社した時からずっと好きだった同期の彼。なのに女扱いすらしてくれなくて。少しでも一緒にいたいから、昼休憩も帰宅時間も彼を待って偶然を装った。お洒落も仕事も頑張った。たまには贅沢言ってもいいかな。「今日は回り道しない?」彼は狐に摘まれたような顔をした。「いいけど」

2012-06-14 05:20:35
佐木ささめ @sakiandu

#twnvday ハイキングに行ったら罠にかかっている狐を見付けた。可哀相だから足の罠を外して逃がしてやった。するとその夜、狐の尻尾を覗かせる絶世の美女が現れた。「お礼に来ました」なんてお約束な!それから僕は会社を辞めてとある山の麓で暮らす破目になった。まぁ幸せだからいいいけど。

2012-06-14 06:13:14
佐木ささめ @sakiandu

#twnvday 妻の鈴が鳴った。仕事に忙殺される俺を見かねて、妻は月一回だけ鈴を鳴らす。定休日がない自由業の俺へ休息を取れと言いたいらしい。仕方がない、今日ばかりは無視できないから君の好きな花と菓子を用意するよ。線香は香りが嫌いだと言ってたが、これは外せないから我慢しとくれよ。

2012-06-14 06:25:51
浅葉積木 @tsumiki_a

#twnvday 「アヤカシ仲間のあいだで人間の漫画家やら小説家やらのところへ行って格好良く描いてもらうのが流行っているからってんで、どれ俺もひとつって出かけて来てそれらしい人間を見つけてみりゃあ、これが『ついのべさっか』とかいう種類の順位が下の方のヤツときた」 やかましいっ

2012-06-14 07:11:34
@sakutukixxx

蛍袋の花鬼が手を伸ばすと蛍が指先に止まって明滅を繰り返した。それをそっと花に籠めて彼女は囁く。「道を照らしてやっておくれ」そしてそれを道に迷った旅人に手渡した。あやかしに惑わされそうな夜は、蛍袋を一輪身につけていると良いだろう。 #twnovel #twnvday #あやかし草紙

2012-06-14 07:13:51
@mimimdr

もったいないおばけは一人暮らしを始めた俺に節約レシピを教えてくれたり水道を直してくれたり、口うるさいけど良い人だ。彼女が出来てから見なくなったけど、来月の式には来てくれるかな。もったいないおばけが遺影でしか知らない母に似ているのを俺は知ってる。#twnovel #twnvday

2012-06-14 07:14:47
あかね @akane2003

部屋の隅に霞のような奴がいる。妖か何かしらんが嫌な気はしないから放っておくことにした。一週間後。帰宅して「ただいま」と言うと、そいつは「幸せか?」と聞いてきた。少し考えて「まあね」と言うと奴は「そうか」と笑って消えた。その声は不思議と亡くなった祖父に似ていた。 #twnovel

2012-06-14 07:29:28
銭喰 @zeniqui

#twnovel 年季のいった立て看板には達筆なのか悪筆なのか、『まかひもの売ります』の文字。ブルーシートに列べられた宝箱、水晶玉、古びた洋書、陶器の小瓶、猿の手。それらの前でこくりこくりと舟を漕ぐ老婆に、声を掛けるか否か逡巡する。果たしてこれらは紛いものなのか、魔界ものなのか。

2012-06-14 07:44:14
りり @ririri1220

#twnvday 別れ際まで優しいなんて反則でしょ。狡い私の事を最後まで気にしてさ。悪いのは覚悟が足りなかった私なのに。どうせならスパッと未練事断ち切ってくれたら良かった。カマイタチならそうしてよ。いっそ人と妖しの垣根を乗り越えられなかった、私を切って欲しかった。

2012-06-14 07:58:20
碓地海 @taichiumi

#twnvday 「僕がいないと、みんな色を失って止まってしまうんだ」私が手を放し、嬉しそうに白鬼が一行に戻った瞬間、鮮やかな色を取り戻した妖たちは賑やかに行進を再開する。百鬼夜行はあの子が最後にいないといけないのだ。どんなに可愛くても引き止めることはできない。

2012-06-14 07:58:42
七歩 @naholograph

俺、人の形をしてる。触れられるし話もできるし顔も普通。食事と排泄に無縁な以外はまるで人と同じだ。妖怪№19801のれっきとした妖怪なんだけど、恐れられない妖怪って妖怪としてどうなのか。膝を抱えて悩む俺。「うお、ビックリした人かと思った」脅えてくれるのは仲間ばかり。#twnvday

2012-06-14 08:03:57
紺屋 @ysga1002

わたしの頭には生まれた時から白に黒縞の獣の耳が生えている。遠い先祖が妖と交わったらしい。世が世ならば生まれてすぐに間引かれていたかもしれないけれど。「おかえりにゃさいませご主人様♪」そしてわたしは天職を見つける。職場はメイド喫茶。あーこの時代に生まれてよかった。 #twnvday

2012-06-14 08:13:53
紺屋 @ysga1002

引っ越した古い一軒家に妖が住みついていた。おかっぱの黒髪、赤い振袖。これは家に富をもたらす座敷童子に違いない。一世一代の賭けに出るべきだろうと宝くじを大量に購入するも全部スカ。少女が申し訳なさそうに袖を引く。「ごめんね、わたし貧乏神なの」可愛いからまあ、いいか。 #twnvday

2012-06-14 08:28:08
ヨシムラ @ortk

歩いても歩いても家に辿り着かない夜。身も心もくたびれ果てて街灯を辿って歩く。次の街灯の下に、黒い猫が黄色い瞳をこちらに向けている。近づけば遠ざかり、たまにこちらを向く。気が付くと、家の前。猫はいない。三年前に死んだクロの写真が土で汚れている。 #twnovel #twnvday

2012-06-14 08:32:37
たつみ暁 @tatsumisn

作家志望の私の部屋に、幽霊が居着いた。文豪の誰かに似ている気もするが、彼はただにこにこ笑って、私の執筆を見守るだけなので、よくわからない。私の作品が世に出る頃、彼は姿を消した。きっとまたどこか、作家志望の人の部屋で、後輩の頑張りを見守っているのだろう。 #twnvday

2012-06-14 08:34:56
蒲公英 @haruka_tanpopo

獏が泣く。悪い夢であればあるほど美味だから、他人がそれを見ることを望んでしまうのだと。幸福な夢ばかり見られてしまうと、僕は空腹になってしまう。他人の不幸な夢を望む僕は、とても酷い生き物だと、獏が泣く。#twnvday

2012-06-14 08:37:23
たくわん @takuwan_takusan

妖怪は元来目に見えぬものであるが、面同士を突き合わせずに歓談できる“えすえぬえす”の中で顕在化し始めている。とある“えすえぬえす”には数多くの妖怪が紛れ込んでおり、中には“れす”が三桁を越える手記を書くものもいる。妖怪の手記は大抵が突飛で傲然としたものである。 #twnvday

2012-06-14 08:39:18
たつみ暁 @tatsumisn

「女は皆妖怪だ、気をつけろ」そう言う友人を馬鹿にして、笑い飛ばしていたが、彼女のすっぴんを初めて見た時、その言葉を思い出した。女は化けるのだ。……が、僕の為に一生懸命化けてくれている彼女を、どうして妖怪なんて言えようか。せめて小悪魔だ。 #twnvday

2012-06-14 08:41:31
たくわん @takuwan_takusan

「なんだ、それは。人の生き血か」「いいえ、これはワインにございます」と甲冑がグラスを差し出した。「おお、では」と天狗は瓢箪を取り出した。「それは何にございますか」「これは酒だ」と天狗は盃を差し出した。甲冑は盃を、天狗はグラスを片手に乾杯した。「我らの新たな宵に」 #twnovel

2012-06-14 09:52:15
@tofuhamburg

「おい熊公」「八かい」「昨日幽霊が訪ねてきたって?」「ああ、古馴染みが逝くってんで挨拶にね。極楽も物入りだろうし餞別をと言やあ『幽霊にお足はいりません』ときた」「律義で洒落者の幽霊も珍しい」「まぁお前にはたんまりやるから安心しな。何せ地獄の沙汰も金次第って話だ」 #twnvday

2012-06-14 10:58:15
紺屋 @ysga1002

俺は妖相手に商いをするよろず屋だ。「赤いちゃんちゃんこが破れちゃったから繕って」「頭の皿が欠けちまった。治す薬をくれ」「鼻が低くてどうにも示しがつかねえ。なんとか高くしてくれ」様々な客が、時には無理難題を突きつけてくる。代金は妖たちの妖気。俺も奴らと同族なのだ。 #twnvday

2012-06-14 11:43:15
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