ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/14 ついのべの日!
#twnvday 雨上がりの水たまり。銀色の太陽と歪んだ空を映す時、気をつけなくちゃぁいけません。下駄をからげて跨ごうものなら、ほら。青い顔したルサールカが、キミを見染めて水の中から腕を伸ばす。「私と一緒に遊びましょう?」 苔のようにきらりと光る唇が甘い呪文を囁くのですから。
2012-06-14 11:54:06気づいた時には蝕まれていた。何に取り憑かれたかもわからぬまま、私はゆるりと崩れていく。助けて。私が人でないものになる前に。けれど最後のプライドが、すがることをためらわせた。逢魔が時、そして闇。あなたがあの娘と過ごすころ、私は醜い何かに変わる。 #twnvday #twnovel
2012-06-14 12:08:14他に魅力がないのなら年収で選ぶしかないけれど彼を夫に決めたのは牛を見事に仕留めるからだ。素早く解体して軽く炙って差し出された肉は痺れるくらい美味しかった。上質のサシ、滴る赤身、宝石のような生レバー。これで結婚してと言われたらはいと言うしかないじゃない。 #twnovel
2012-06-14 12:57:57@tsumiki_a 「ふ、ふぁくしょん! なんだなんだ、遅れてきた花粉症かと思ったら、どうやら違うみてえだな。ついのべの日だあ? お題があやかしだあ? 話すことなんざ何にもねぇよ。とっとと帰んな。あやかしのひやかしなんざお断りでえ。ふ、ふぃくしょん!」タグ自重(笑)
2012-06-14 12:59:09告別式に出席した。「心不全だって」「だいぶぽっちゃりしてたものね」「奥さんはダイエットしたがってたけれど、旦那さんがさせなかったらしいわ」「どうしてかしら?」「そのままのキミが好きとか言ってたみたいよ。そういえば、前の奥さんも同じような死に方してたわね」 #twnovel
2012-06-14 12:59:50叔父の家の庭には、殻の代わりに水晶玉を背負った蝸牛など、不思議な生き物が沢山いた。捕まえて連れ帰ろうとしたら、「無駄だ。それはもうこの庭でしか生きられない」と叔父が言った。 #twnvday 叔父は山奥に独りで住んでいる。皆は変わり者だと言うけど、僕は叔父もこの庭も大好きだった。
2012-06-14 13:10:06部屋の隅に霞のような奴がいる。妖か何かしらんが放っておいた。ある日、机の向こうに消しゴムを落としたが、翌朝不思議と机の上に戻っていた。タンスの隙間にわざと落とした10点のテストや記憶の彼方の元カノの手紙と一緒に。「お前か?」部屋の隅の奴は、まだ居座ったまま。 #twnvday
2012-06-14 13:38:49#twnovel #twnvday 不気味な妖怪を捕らえたと聞いたので、研究員の私は現場に直行した。何という事だろう、そこに居たのは確かに不気味な妖怪である。二つの瞳に二つの腕、五本の指を持ち、皮膚は柔らかい。それはまさに我々”人”と獣の間の妖であり、私は彼を人間と名付けた。
2012-06-14 14:33:45春にはネコヤナギと一緒に眠る。白くふかふかした花穂に頬ずりする。こうして一晩眠ると、翌朝には子猫になるという。猫が欲しければペットショップに行けばよい。猫柳が猫になるからいいのだ。今年初めて、1匹の猫が孵った。今、3歳ほどの大きさになりあたしをオカアサンとよぶ。 #twnvday
2012-06-14 15:45:44午後。古びたアパートのベランダ。南向きなのに、今は新しいマンションの影。灰色の猫がべたりと身体をのばしている。尾は? まだ二つに分かれてないよ。あれはただの猫。まだ若造さ。通りすぎてゆくものたち。わかっちゃいないね。猫又は普通の猫に化けることも出来るんだぜ。 #twnvday
2012-06-14 15:54:33部屋の隅に霞のような物が見える。妖や幽霊ならお祓いをするべきだが頼む金はない。せめて清めの塩を盛ってみよう。しかし、塩分を控えめな私の手元には「やさ塩」しかない。まあこれも塩だからと盛ってみた。次の日、霞は半分の大きさに。どうやら効き目は50%だったらしい。 #twnvday
2012-06-14 16:08:38世の中には組織に巣食う妖もいる。ナベツネなどが有名な類だが、年を経て正常な判断も儘ならぬ怪異と化し、それでもなお組織に巣食い、組織に害を為すこと甚だしい。肥大化した組織が怪異に乗っ取られると、末端のモチベーションは下がり、やがてネクローシスを起こす。 #twnvday
2012-06-14 16:24:40#twnvday 近所の廃屋に忍び込み蜘蛛の巣だらけの物置で遊んでいると、いつも同い年位の少年が現れた。その日も庭のぐみの実を摘んで一緒に食べつつ、来週また遊ぼうと言うと、少年は笑顔で頷いた。翌週、そこは更地になっていて、廃屋もぐみの木もなく、地鎮祭のしめ飾りが風に揺れるばかり。
2012-06-14 16:36:41身内の欲目だとしても、紅をさし髪を柔らかく結い上げた姿はまるであやかしの様に凄艶だ。どんな堅物も色香に囚われ即座に落ちるに違いない。弟の立場からは言うのも憚られるが、極上の部類だろう。「彼とデートに行って来るわ。留守番よろしくね」そう僕に伝え兄が玄関を出て行った #twnvday
2012-06-14 16:49:29#twnovel 今日子さんはリメイクされる。「最近の映画ってリメイク多いねー。私もリメイクされないかな」「どんな風にリメイクされたいの?」「十キロくらい体重落として十歳くらい若返ってまた貴方と出会う前から始めたいな」「違う男見つけるの?」「もう一度ファーストキスしたいの」
2012-06-14 16:53:37#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が運動不足の僕にスポーツジムのチラシを差し出した。無理無理、そもそも通うお金ないもん。そう言うと彼は頷いた。「そこまで距離にして20km、徒歩で往復するだけでいい運動になるぞ」
2012-06-14 16:58:12事故で私は光を失ったが、幸運にも盲導犬を得た。それからどこへ行くにも犬に手をひかれた。その犬を亡くしたのが先日。しかし姿はなくとも今もそばにいる。と妻に訴えると、犬など初めからいない、あまりの真剣さに言えなかったなどと言う。なら今手を舐めているこの温かい感触は。 #twnovel
2012-06-14 17:26:32部屋の片隅に霞のような奴がいる。不思議と恐くない。そのうち退屈しのぎにそいつに話しかけるようになった。奴は俺の話を聞いているのか、たまに揺らめいたりする。ある日、悩みを打ち明けてみた。「好きな奴が出来たんだ」すると奴は小さくなって消えた。涙のような滴を残して。 #twnvday
2012-06-14 17:40:26「美味しいねぇ」と正座をして湯のみを持っている祖母は私を見ていた。一人暮らしを始めた私を心配して来たと言う。仕事は順調よと言いつつ台所に立つと、じゃあねと聞こえて振り向く。すると祖母の姿はなく、湯のみを前足で触っている飼猫が「にゃあ」と鳴いて片目を瞑った。 #twnvday
2012-06-14 18:19:29#twnovel 俺は独りでこの歳まで生きた。人は嫌いだがあの婆さんは特別だ。急に力を使えば体は持つまいが、構うものか。…「虎のような怪物に襲われた、と強盗の一人が病院で」涙にくれる老婦人が抱く猫の骸には、尾が二本ある。まさかな。警部は猫だらけの屋敷を見回した。 #twnvday
2012-06-14 18:49:44アヤカシは、日本における海上の妖怪や怪異の総称。長崎県では海上に現れる怪火をこう呼び、山口県や佐賀県では船を沈める船幽霊をこう呼ぶ。西国の海では、海で死んだ者が仲間を捕えるために現れるものだという。(ウィキペディアより引用) #twnvday 「俺は、違うのか…」化猫は絶望した。
2012-06-14 18:55:02暑いよ暑いよ。なので #twnvday を眺めあやかし達に涼を求める。暑さは怖さを磨き、怖さは涼を呼ぶ。お陰で少し冷えたかも。それにしても今月、普段みないアイコン多いね。自分の好きなタグが賑わうの凄く嬉しい。いいお話多いしふぁぼっちゃお。翌朝、昨日のお気に入り達は全て消えていた。
2012-06-14 19:02:19最近、携帯を開くといつも決まって不思議な文字が入力されている。「@tae」。流石に首をひねっていると、不意に閃いた。かな入力にすると「あやかし」。…本当ならぞっとする場面だろう。なのに馴れない携帯を必死に操作しての自己主張に、微笑ましく思えてしまった。 #twnvday
2012-06-14 19:19:38自分の中に流れる半分ずつの血を呪っても、父と母が出会わなければと考えても虚しかった。「人でもあやかしでもないんだ」思いあまってそう告白したら、君は「いいとこどりだね」と目を輝かせた。僕の世界はたちまち色付き、君の周りからどこまでも拡がる。二倍の幸せを伴いながら。 #twnvday
2012-06-14 19:21:09#twnvday ショキショキと、小豆をとぐ音が聞こえて、あたしは寝たふりをしてごまかした。ごめんねのサインは、小豆をとぐ音と、おいしいお汁粉。申し訳なさそうに差し出す顔が可愛くて、ついつい許してしまう。だってあたしの恋人は、小豆あらいの孫だから。
2012-06-14 19:25:08