夏祭りのウンネリ

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海きゅうり @seacucumcum

海きゅうりのウンネリの夏祭り 8月13日 堪能 林檎飴、数字合わせ、金平糖 、寂寥感等 御神籤 末吉と小凶 誘われた側 友情の方が強いと偽りを口にしようとするが失敗 誘った側 幸せは終わっていないと伝える #CP向夏祭り shindanmaker.com/806170

2018-07-03 21:21:43
海きゅうり @seacucumcum

「金魚すくいね!」 「とってどうするつもりだ?」 「焼きそば食べましょ!」 「俺はいい」 「あ、わたあめ!わたあめ欲しいな」 「そうか、買ってこい」 せっかくの夏祭りなのに、こいつはちっとも誘いに乗ってこない。同じものを見て、食べて、遊んで、笑うのが楽しいのに。

2018-07-03 21:46:41
海きゅうり @seacucumcum

唇にくっついたわたあめを舐め取りながら、隣で腕組みをして立っているウンチャイを見上げる。その先に、真っ赤な垂れ幕の屋台が見えた。 「林檎飴!」 ウンチャイの服の裾を引く。 「林檎飴食べたい」 「ああ」 ウンチャイは動こうとしない。裾を更に引くと、やっと顔をこちらに向けた。 「なんだ」

2018-07-03 21:52:34
海きゅうり @seacucumcum

「同じもの、食べたいんだけど」 めいっぱい拗ねた顔を作ってねだる。じっと目を見つめていてやると、ウンチャイが諦めたように目をそらした。 「わかった」 ため息まじりにそう言って、ウンチャイが屋台の方へ歩き出した。やった。とことこと後ろをついていく。

2018-07-03 21:54:55
海きゅうり @seacucumcum

ウンチャイは小さめの真っ赤な林檎飴を2つ買った。自分の財布を仕舞うと、威勢のいい飴屋から受け取った1つをネリアに差し出す。 シェアじゃないのは残念だけど、譲歩してくれた方かな。飴の端をかじりとる。ウンチャイが歩きだしたので、一緒に歩き始めた。飴は甘くて、その分林檎が酸っぱい。

2018-07-03 22:00:20
海きゅうり @seacucumcum

人混みの向こうから、林檎飴をひとつずつ持って、腕を組んで歩く男女が歩いてきた。幸せそうに笑いあう素敵なカップルだ。いいなあ、と思ってつい、隣にいる男を見上げた。ウンチャイも同じカップルを見ていた。 こちらの視線に気付いたのか、飴の串を落ち着き無く手で回しながら見下ろしてくる。

2018-07-03 22:05:51
海きゅうり @seacucumcum

目線で理解する。仲間としておまえのワガママに付き合って来てやっただけ、でしょう?食べていた林檎飴はちょうど、とくべつ酸っぱい部分に当たってしまった。少し目がしょぼしょぼする。 「……俺は」 ほら、来た。あんたが何を言うつもりかなんて分かってるんだから―― 「そこのおふたりさん!」

2018-07-03 22:13:56
海きゅうり @seacucumcum

急に脇の屋台から声が飛んできた。 「そこの彼女さん、酸っぱいモン食べちまったでしょ。ほら、甘いのはどうだい?」 夜空色の幕に、可愛い色でこんぺいとう、と書かれた屋台。売り物と屋台の可愛らしさとは反対に、逞しい体つきの男がこちらを見て手招きしている。 「あ、食べたい」

2018-07-03 22:17:34
海きゅうり @seacucumcum

思わず呟くと、男はニコニコした。 「まいどあり!ほら、おまけしとくから買ってやりなよ彼氏さん」 ガリッ、とウンチャイが飴を噛み砕く音が響いた。すごい目つきになっているが、屋台の男は気にしていない。お金を受け取ると、気持ち良く笑いながら可愛らしい袋を渡してくれた。

2018-07-03 22:20:27
海きゅうり @seacucumcum

食べかけの林檎飴を片手に、なんとか袋に手を突っこんで金平糖をかじる。 「ん、美味しい」 「……よかったな」 ちっともそう思っていなさそうな渋い顔を見たら、笑いがこみ上げてきた。 「あんたが来てくれて、あたいは楽しいよ」 ウンチャイはますます渋い顔になり、林檎飴を乱暴に噛み砕いている。

2018-07-03 22:25:01
海きゅうり @seacucumcum

更に笑えてきてしまって、むしょうに楽しくなった。 屋台の並びはまだ続いている。花火もこれからだ。 「まだまだ、終わらないからね」 あたいが先を歩いていても、あんたはついてきてくれているから。

2018-07-03 22:27:56
海きゅうり @seacucumcum

甘ったるくて仕方ない。林檎飴は妙に甘かったし、半分押し付けられた金平糖と、くじで当たってまた半分押し付けられたチョコレートで、口の中がひたすらに甘い。塩気が欲しかったのだが、ちょうど花火の打ち上げが始まってしまって、気づけば屋台通りから外れた場所で並んで腰を下ろしているのだった。

2018-07-03 22:56:58
海きゅうり @seacucumcum

小凶という御籤の結果はこのことか……いや、この程度で済めばいいんだが。ネリアはちゃっかり買っていたかき氷のカップを手に持っている。 花火は終わった。人波が少しずつ引いていく。人混みでうっかり"頂き"そう、とネリアが言うので、道が空くのを待つ。

2018-07-03 23:02:12
海きゅうり @seacucumcum

たこ焼きなりポテトなりを買いに行って、この口に残り続ける甘みをどうにかしたいのだが、ネリアがぼんやりと空を見上げたまま動かない。だから仕方なく隣で夜空を見ている。 花火の煙が少しずつ流れて散っていく。光と煙を溶け込ませた夜空はあいも変わらず、真っ黒なままそこにある。人の声が遠い。

2018-07-03 23:05:40
海きゅうり @seacucumcum

ネリアが手に持ったままのカップの底に、青いシロップが少し残っている。とっくにぬるくなりきっているだろう。 不意にネリアが立ち上がった。 「帰りましょっか」 暗くて顔がよく見えなかった。 ゴミ箱を見つけたネリアがカップを放り込む。シロップが零れて、落ちて消えていくのが見えた。

2018-07-03 23:08:13