ベリアル・アンダーカバー ＃４

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『モシモシ、ドーモ。ようやく通信が確立できてよかったです』「ドーモ、チャサキ＝サン。カークィウスです」『ドーモ、お世話になっております。トレーラー・コンボイに同乗し移動中です。かえすがえす、今回のビッグディールに感謝申し上げます！』「こちらこそ」　24

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『ご存知の通り、我が社のイノベーションは多くの犠牲を伴います。つまりミュータント廃液の問題ですな。地球市民が責任をもってこの犠牲を引き受けねばなりません。この処理を快く引き受けてくださった事にわたくし、感動を深めております』「我々過冬としても巨額のマネーです」25

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『今後、毎月末に一定量の廃液を搬送……シトカ凍結湖に10年計画で廃棄してゆくフローが……しかし奇妙なオーロラですな！』「お気になさらず。じきに止みます」『ところで凍結湖の方角はこちらではないようですが』「何がです？」『トレーラー・コンボイの進行方角です』「お詳しいですな」　26

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『衛星地図がありますから！ノイズがひどいですが……』「営業社員の鑑のようなお方だ。ですが、あいにく現在ヤクザ抗争の影響で道が寸断しておりまして。今回の搬送分は一旦、保管場所を変えます」『エッ！？聞いていませんよ！』営業社員は慌てた。27

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『ちゃんとしてくださいよ！この廃液がどれだけ危険か解っているんですか！？ニンジャであっても肉体に変異を起こすことが証明されているんです！先日も南米で流出騒ぎが露見し、CEOを煩わせてしまいましたからね！』「そうですか」『私が助手席で監視し廃棄までのフローを見届けますからね！』　28

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「アナヤ……アナヤ」カシマールは異様な哀しみと喜びに表情を歪め、首を振った。カークィウスがトレーラー群を誘導しているのは凍結湖ではない。この中央区である。既にカシマールの「墓暴きの虫」がソウカイ・シンジケートの勢力をこの区に集め、順調に封じ込めていっている。　29

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中央区は異常発展するシトカにおいて近代化が足りず、丸ごと犠牲にしても損失は微小。過冬はヤクザ組織であり、シトカそのものの利益が減じなければ何をしても良いのだ。過冬の構成員やニンジャも多少は失われるだろう。カークィウスは問題なしと判断した。闇社会は過冬の非情を恐れるであろう。　30

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これは土地規模の作戦であり、ソウカイヤのニンジャの一人二人がいかにカラテに長けていようとさほど意味はない。そして大規模でありながら精密。カシマールのシャドウネット・ジツによって殲滅の精度は完全なものだ。過冬に手を出した組織がどんな「火傷」をするか、世界にわからせる。　31

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この計画に間近で接するカシマールは、ただ恍惚の中にいる。あの接触の瞬間にも似た恍惚だ。あの時カシマールは「彼」を通してあり得ざる光景を見、新たな力を授かった。以来、彼を取り巻く世界は千切れ、ハデス・ニンジャの繋がりは朧な断片と化した。「おお、おお、サツガイ」彼は呟いた。　32

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……「……！」マスラダの瞼がひくつき、アグラが崩れた。対面にアグラするフジキドは眉をしかめた。「集中せよ」「奴の名がどこかで」マスラダは呟き、アグラを解いた。「感じるぞ」「今はその時ではない！」フジキドは厳かに言った。「集中せよ。シンウインターは生半なカラテで勝てる敵ではない」33

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俺は宗教を持たぬゆえ、短い黙祷で済ませた。墓碑には【Юлия 2000-2028】とだけ刻まれている。姓はない。ただ、ユーリアの名だけだ。枯れかけた木が風に揺れる。粗末な墓が幾つもある。既にこの場所に至るまでに、事実の積み重ねによって、ユーリアが間違いなく故人である事は疑いようがなかった。 35

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ディアンタ。その若さで、ネオサイタマを遠く離れ、このシトカで。俺にとっては他人に過ぎないが、一人の人間の過酷な歩みに思いを馳せれば、感慨めいたものもわいてくる。何を思った。死に際に、何を見た。恐るべき夫のことか。残してきた息子のことか。それとも、己の血のことか。　36

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「クンクン嗅ぎまわるネズミめ」俺に向けられた声。方角を霞ませている。敢えて俺に注意を払わせてなお、アンブッシュを成功させる自信があるか。声は続ける。「この夜は異常だ。異常な奴らが行き来する。ボスはそれを許しはしない……」「それは困った」俺は答えた。ニンジャの気配はふたつ。　37

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「俺は調べ物をしにきただけだ。お前達とコトを構えるつもりはないが……」戦うか。回避するか。まずは相手のカラテを測る必要がある。「ま、貴様らのボスの情婦を探るよそ者がいるとなれば、喜ばれないであろう事は……」左斜め後方25度の空間に歪み。俺は身を沈め、トラヒトアシの構えをとった。　38

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敵のアンブッシュが俺の沈めた頭上すれすれを通過したのはそのコンマ02秒後といったところ。これは、なかなかやるか。俺は身体を捩じり、クナイ・ウィップで螺旋を描いた。ホーミングウインド。「「イヤーッ！」」俺とアンブッシュ者のカラテシャウトが後から追ってきた。　39

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敵は舌打ちし、朧な輪郭を滲ませながら、俺に向き直った。然り、あまり俺を甘く見ないほうがいい。まずはアイサツを交わしたうえで、本腰を据えてやり合うとしようか。「ドーモ。カレイドスコープです」過冬のニンジャはオジギし、名乗った。俺はクナイウィップを引き戻し、奴の右に殺気を向けた。　40

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「……油断ならぬ男」ステルスしていたもう一人が姿を現し、カレイドスコープに続いてアイサツした。「ドーモ。スモークドラゴンです」いいだろう。俺はアイサツを返し、名乗る。「ドーモ。ガーランドです」　41

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【続く】