茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第2133回「マルチ真実について」

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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート2133回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、「マルチトゥルース」について。

2018-09-11 08:10:19
茂木健一郎 @kenichiromogi

フェイクニュースがあふれて、何が真実なのかわからない世相を表すものとして「ポストトゥルース」(ポスト真実)という言葉があるが、私はむしろ「マルチトゥルース」(マルチ真実)というのが実態に近いのかなという感じが最近はしている。

2018-09-11 08:11:48
茂木健一郎 @kenichiromogi

マルチ真実といっても、芥川龍之介の『藪の中』のように人によって真実が違うということでは必ずしもなくて、そもそも世の中に「真実」がたくさんありすぎて、そのすべてを認知的に把握しきれない時代になっていると感じるのである。

2018-09-11 08:13:25
茂木健一郎 @kenichiromogi

ここに言う「真実」とは、奥行きや広がりからして、本当は時間をかけてゆっくりと調べたり、考えたりする価値があるものだけれども、現代社会ではそのような事象があまりにもたくさんありすぎて、生身の人間にはそのすべてが認知容量的にカバーしきれないようになっている。これが「マルチ真実」だ。

2018-09-11 08:14:38
茂木健一郎 @kenichiromogi

なぜ時代は「マルチ真実」になったのか。一つにはインターネットというメディアの性質で、さまざまな情報が同時多発的に配信されるということがある。かつてのマスメディアの時代のように、一つの視点、トピックが支配するという構造が崩壊して、その向こうにあるマルチ真実の夜空が見えてきた。

2018-09-11 08:15:59
茂木健一郎 @kenichiromogi

もうひとつは、グローバル化や技術革新によって、実際に人間がアクセスできる事象の宇宙がビッグバンを起こしているということもあると思う。その結果、「マルチ真実」の膨張が私たちを包み、私たちはそのすべてに目を配ることがとても難しくなっている。

2018-09-11 08:17:01
茂木健一郎 @kenichiromogi

マルチ真実に対応する処方箋は、おそらくないのだろうと思う。それは人間の認知プロセスに関わる実質的な限界なのだろうからである。一つわきまえておくべきことは、自分にとってどんなに大切、重要な視点でも、世界全体から見ればマルチ真実の宇宙のごく一部分に過ぎないというある種の謙虚さだろう。

2018-09-11 08:18:55
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート2133回「マルチ真実について」をテーマに6つのツイートをお届けしました。

2018-09-11 08:19:38