『サマータイムハンター翔』

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

『サマータイムハンター翔』 「あれ？　おかしいな」翔は寝惚けた頭でぼんやりとそう思った。６時に起きたはずなのに時計は8時を指している。だが、その直後、窓の外から爆音が轟き、赤い爆炎が上がるのを見て翔はハッと気が付いた。「しまった！　今日からサマータイムだ！」#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「やっぱりだ！　テレビでコメンテーターが言ってた通りだ！」窓の外は地獄と化していた。出社中の車は猛スピードで電信柱へとぶつかり、自販機は連鎖爆発。向かいの家が火柱となって燃え上がっている。「たった一年で対応できる訳がなかったんだ！」#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

サマータイム導入により電子機器の時間設定が狂い、様々な問題が発生することを識者たちは以前から警告していた。だが、政府はそれでもサマータイム導入を推し進めたのだ。　マラソンのために。#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「ウキャキャキャー！」ネクタイを締めたサラリーマンたちが、奇声と共にビルの上から次々と身投げしていく。プログラマーやSEたちだ！　365日続いたデスマーチの甲斐もなく最悪の事態を免れえなかったことに絶望しているのだ！　#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「あべらぶろげろおげげげげ」さらに街中では人々が手に手に金属バットや鉄パイプを握り、訳の分からない叫びと共にムチャクチャに得物を振り回している。「クソッ、始まりやがった！」翔は唇を噛んだ。「健康被害だ！」#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

サマータイム導入により体内時計が狂い、様々な健康被害が発生することは既に予見されていたし、科学的エビデンスもあった。発狂した人々は互いに鈍器を振り下ろし、街路施設を手当たり次第に破壊し、自販機の連鎖爆発や暴走車両に巻き込まれて次々と死んでいく。「地獄だ…」#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

だが、サマータイム導入の恐怖はこれだけではなかった。「カケル…」彼を呼ぶ少女の声に翔は慌てて振り向いた。「トモコ！」いつもベランダ伝いに彼の部屋へとやって来て、朝寝ているカケルを起こしたりする隣の家に住む幼馴染でクラスメイトのトモコだ！　#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「カケル…わ、わたし、なんだか…なんだかおかしいの！」トモコが身を震わせて言った。身震いは次第に痙攣じみた激しさへと変わり、彼女の両眼が陸に上げられた深海魚のように突き出し始める。「ト、トモコ…」#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

トモコの整った容姿がどんどんと異形のそれへと変じていく。口は耳まで裂け、全身が黒ずみ、皮膚は鱗のようなものに覆われ、両手指は癒着して鋭利な鎌のようなものへと変わっていく。「キシャシャシャー！」トモコが叫んだ！　サマータイムは人間のDNAすら狂わせたのだ！　#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

【宣伝】『サマータイムハンター翔』はpixivファンボックスの皆さんの支援により行われています（ファンボックスで書こうかと思ったけどツイッターで書く事にしたが、気持ち的にはファンボックスのコンテンツです）pixiv.net/fanbox/creator… #サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「カァ…かぁケぇる…うゥ…」異形生命体と化したトモコが両腕の大鎌を振り回しながら接近してくる。カケルの教科書や制服が細切れになって室内に舞う。「お、おねェがぁい…ごォ、ごろじィでェ…わ、だじ、このまま、じゃ、カ、カケルを…」#サマータイムハンター翔

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「トモコ！」「キシャシャーッ！」トモコの大鎌が翔の頭頂目掛けて振り下ろされる！　「うわっち！」間一髪で転がり避けた翔だが、その直後、彼の心臓を刺すような痛みが襲った！　「くそっ！」翔が苦痛に顔を歪める。「俺にも…始まりやがったか…！」#サマータイムハンター翔

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翔の両掌がわなわなと震える。サマータイム導入による異形化現象が彼の身にも起こり始めていた。両手がひび割れ、肥大化し、爪が鋭利化する。背中から透明な羽根のようなものが生え始め、顔に浮き出た青筋がタトゥーのような異様な文様を作り始める。#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「ち、畜生…」このまま異形化して正気を失い、目の前の幼馴染と殺し合う運命なのか！？　大鎌を振り回しながらトモコが近付いてくる。突き出した両眼からドロドロと涙を流しながら。「逃げデ…逃げでェ、ガげるぅ…」「トモコ！」翔がカッと目を見開いた！　#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「俺はお前を見捨てて逃げたりなんかしない！」翔は己の獣化した右掌を見つめた。そして覚悟を決め、その鋭利な爪を己の胸へと突き刺したのだ！「ぐぶっ！」「ガ、がゲるぅっ！」　翔は薄れゆく意識と戦い、己の心臓を握り締めた！#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「ぐ、ぐおおおおっ…！」翔が己の心臓を力任せに捻る。反時計回りに捻る。それに呼応して翔の異形化現象の進行が止まった。翔は獣化した爪を引き抜くと、血まみれの右手をトモコへと向けた！　#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「サマータイム・バーニングネイルズ！」翔が叫びながらトモコの胸へと異形の爪を突き立てる！　「ぐぶうッ！」トモコ吐血！　だが、翔はトモコの心臓を握りしめたまま、力任せに捻り続ける！　するとトモコの異様な容貌に変化が！　#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

飛び出た眼球は元の眼窩へと収まり、肌も若々しい肌色を取り戻し、鎌状に変化した両腕も人のそれへと戻った。サマータイムにより６０度傾いた心臓を捻り戻した事により、トモコの異形化現象を押し留めたのだ！「カ、カケル…」トモコが涙を溜めた瞳で翔を見つめる。#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「くっ、クソ…！」翔の顔を滝のような汗が流れ落ちる。トモコの心臓は今も凄まじい力で時計方向に６０度傾こうとしているのだ。「ぐあっ！」翔がその力に負けて心臓の傾きを許すと、途端にトモコの両眼が飛び出し、トモコが叫ぶ！　「キシャシャーッ！」#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「ウオオーッ！」翔が全身全霊の力を込めて反時計回りに６０度心臓を傾ける！　トモコの両眼が眼窩へと収まり、彼女は瞳に涙を湛えて翔を見つめる。「カ、カケル…！」#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「くっ、クソ…！」翔の顔を滝のような汗が流れ落ちる。トモコの心臓は今も凄まじい力で時計方向に６０度傾こうとしているのだ。「ぐあっ！」翔がその力に負けて心臓の傾きを許すと、途端にトモコの両眼が飛び出し、トモコが叫ぶ！　「キシャシャーッ！」#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「ウオオーッ！」翔が全身全霊の力を込めて反時計回りに６０度心臓を傾ける！　トモコの両眼が眼窩へと収まり、彼女は瞳に涙を湛えて翔を見つめる。「カ、カケル…！」#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「くそっ、おれの心臓より大分傾き力が強い。個人差が…あるようだぜ…」「カケル！」トモコが泣きながら言った。「お願い、カケル…もう止めて」「トモコ…」「異形化したあなたの握力をもってしても、いつまでも私の心臓を捻り続けることはできないわ…」#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「いずれ、あなたは限界を迎えて、私はあなたを切り刻んでしまう…」「トモコ、俺は絶対にお前を見捨てたりしない！」「お願い、私を殺して…。きれいなままの私の姿で、死なせて…」「トモコォォッ！！！」#サマータイムハンター翔

架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

翔はトモコの心臓を握り潰した！　「あり、がとう…翔…」トモコは微笑みを向けて、ゆっくりとその場に倒れた。「トモコ…」翔は半異形化した両腕で彼女の体を抱き抱えた。「トモコ！　トモコォォッ！！！」天を仰ぎ、泣いた。愛した女の亡骸を、強く、強く抱き締めながら…。 #サマータイムハンター翔