週刊　生存ファンタジー３T　第四週

ぞろ目の八ことマスケッター（旧1d6） @hm1d6

馬車の御者 １　御者はいつもフードを目深にかぶっていた。その上無口だった。その正体について暇潰しの無責任な噂話が冒険者の間で盛り上がった。負傷して退役した兵士だ、没落した貴族の末裔だと言いたい放題である。ある日、駆け出しの若い冒険者がその馬車に乗った。 #生存ファンタジー３T

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２　激しい雷雨で客は彼一人だった。さる商人の依頼で古びた鍵を届ける用事だった。馬車を降りた時、泥に足を取られて転んだ。リュックにしまった鍵がひとりでに出てきて、空中を飛んで御者の顔に当たった。落雷が轟き、御者のフードが外れ鍵の刺さった仮面が割れた。 #生存ファンタジー３T

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３　御者の素顔は短い角を生やした悪魔だった。そのまま背中から翼を生やして飛び去り、行方は誰も知らない。ただ、依頼人の商人は破産した。若い冒険者は名声を得たが、暫くして奇妙な仮面が何者かから届けられたという。 #生存ファンタジー３T

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日曜日とはッ！　一週間の門出！　新たな運命がささやかに紡がれる第一歩ッ！　だからこそ戦え！　生存を賭けて！ #生存ファンタジー３T、絶賛公表中。 togetter.com/li/1267173

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馬の面 １　ぬるい風が吹き抜ける谷間で、暴れ馬に出くわした。最初は、戦うつもりがないので脇に避けた。しかし、そいつは明らかに殺意があった。なにかに駆りたてられているとしか思えないしつこさで追ってきた。仕方なく、槍の一突きで馬を串刺しにした。 #生存ファンタジー３T

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２　数日後には街に帰ったが、話が始まるのはむしろそこからだ。両腕に変な出来物が生えてきた。試しに鏡の前で両腕を合わせると、馬の面になった。それだけじゃない。少しずつ、背中を屈めて両手を地面につける癖がついてきた。 #生存ファンタジー３T

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３　僧侶や魔法使いに相談しても無駄だった。何故なら、これは喜ばしい現象だから。治すどころか深めねばならない。あ、今、合わせた腕を一同鏡に当てて、鏡に残った馬の面に自分の顔を当てた。馬の顔になった。ひひひひーん。なんだかとっても活動的！ #生存ファンタジー３T

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眠りの像 １　うつらうつらした直後、鋭い痛みにはっと目覚める。私の胸には小さな穴が無数に空いている。自分の顎にとりつけた短剣が何度となく刺すからだ。目の前には古代帝国の邪神像があり、こちらを見つめている。 像は強い魔力を帯びた冠を被っている。 #生存ファンタジー３T

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２　この部屋にあるのは椅子と大きな時計と邪神像だけ。いや、まだあった。壁と一体化した仲間達。傷一つないが手も足も出ない。先走るからだ。椅子に座って丸一日像と睨み合い続ければ仲間は解放され冠も入手できるが、像からは眠りの呪いが放たれている。 #生存ファンタジー３T

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３　寝入ると仲間の二の舞。皮肉にも出血のせいで失神しかけてきた。待て！　短剣を外し、私は自分の喉を裂いた。像は魔力を使って私の傷を治した。やはり。像は生きた獲物だけが欲しいんだ。完全に回復した私は残り時間を乗り切り、解放された仲間を叱り飛ばした。 #生存ファンタジー３T

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祭礼の島 １　何十体目かのゾンビが、私の魔法でばらばらになって倒された。戦士は息が上がりかかっている。盗賊は曲がった短剣を握り直した。冒険にまさかはつきものではある。そうはいっても、僧侶が真っ先にやられるのは意地悪すぎるだろう。計画をたてたのは戦士だが。 #生存ファンタジー３T

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２　滅び去った王国の要人達だけが埋葬されたというこの島は長らく都市伝説だった。だが、数日前に戦士が怪しげな古物商から仕入れた地図には確かに記してあった。ならば確かめ、富と名声を入手すべし。地図は本物だった。墓守にゾンビがいるとは書いてなかった。 #生存ファンタジー３T

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３　ゾンビに囲まれた矢先、ロック鳥が急降下して彼の頭を食いちぎった。戦いながら逃げる内に島で一番高い山の頂上に追い詰められた。再びロック鳥が急降下し、僧侶の頭を落とした。計画通りだ。そなた達も墓守になるが良い。彼の生首はそう言った。 #生存ファンタジー３T

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雨の酒場 １　壁越しに、大雨の気配が伝わってくる。いつも通りの馬鹿騒ぎを繰り広げる酔客をよそに、あたしは一人グラスのワインを干した。高くも安くもない夕食は、とうに食べ終わっている。締めくくりの赤い液体は、私の顔までは赤くしなかった。 #生存ファンタジー３T

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２　と、一羽の小鳥がテーブルの端に止まった。小鳥をそっと手で包み、足につけられた筒から文書を引っ張り出した。またか。妻子に暴力をふるうクズ夫の成敗。一ヶ月ほど前まで、あたしは相棒の男と仕事をしていた。男女の一線もとうに越えていた。 #生存ファンタジー３T

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３　あいつが用事でいなかった折りにも暴力夫の成敗を請けた。指定された現場にはあいつがいた。気がつくとあいつを八つ裂きにしていた。それからはこんな仕事ばかりだ。まあ、いいか。実入りはいいし。顔と性別を変えて、かつての相棒に成り済ましたかいはあった。 #生存ファンタジー３T

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砂漠のダイヤ １　昼間に眠り、夜中に進む。砂漠を横断するにはそれしかない。俺のリュックには大粒のダイヤが何個も入っている。砂漠の端にある廃鉱で手に入れた。噂は事実だった。この帰り道を全うすれば、俺は億万長者だ。だが、焦りは禁物。 #生存ファンタジー３T

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２　決まった早さを維持すれば、自ずと街につく。砂漠の厳しさより自分の心を抑えつける方が難物だった。そんな道中のさなか、一匹の大きなニワトリに出くわした。いや、ただのニワトリじゃない。コカトリスだ。今の装備ではリスクが高すぎる。 #生存ファンタジー３T

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３　幸い、向こうはそっぽを向いている。静かに、ゆっくり離れればいい。クソ！　コカトリスはくるっとこちらを向いた。万事休すか。俺は咄嗟に、リュックからダイヤを出して遠くに放り投げた。月光を浴びて輝くダイヤにつられ、コカトリスは走り去った。後日ブチのめす。 #生存ファンタジー３T

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オークの食い物 １　仕事を選べるほど裕福じゃないとはいえ、正直なところ二回はやりたくない。戦死したオークの解剖とは。戦士なら誰でもちょっとした外科の心得がある。こうなると器用貧乏極まれりだ。依頼人はとある魔法使いだが、胸の悪い作業は他人にやらせるらしい。 #生存ファンタジー３T

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２　陰気な塔の陰気な地下室で、はらわたを裂かれたオークは色々とぶちまけた。ネズミの頭。コウモリの尻尾。トカゲの目玉。仕分けしてソラマメ型の盆に置いていき、重さを量ってメモ書きを添えた。オークはすべからく悪食だ。人間が出てこないのが不思議ですらある。 #生存ファンタジー３T

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３　あーやれやれ、ようやく終わった。最後に出てきたのはイモリのエラか。これら全てがなにかしらの魔法の材料になるんだろうな。まあ、少しくらいつまみ食いしてもいいだろう。俺とは仲の悪い部族のオークだし。 #生存ファンタジー３T