「傷と絆」 第一章

@tweet_novel より。自作じゃないのにまとめちゃって良かったのかしら・・・?
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「傷と絆」 @tweet_nobel

Twitterで綴る小説です。 その日の気分と思い付きでストーリーを進めます。 どうぞ、お楽しみあれ。

2011-02-28 23:59:31
「傷と絆」 @tweet_nobel

時は巡り、人も巡る。 時計も人も、出会っては別れ、重なっては離れる。 重なり合う僅かな時間を求め、今日もまた互いを求め合う。 そして、運命という「螺旋」を回り続ける。

2011-03-02 01:10:53
「傷と絆」 @tweet_nobel

東京、青山。 駅までの道のりを思えば、電車では間に合わない。新宿は目と鼻の先なのに、噛み合わないタイミングを恨めしく思う。ワンルームを飛び出した若者は、高いヒールを鳴らしながら、246を目指して走る。

2011-03-02 21:58:01
「傷と絆」 @tweet_nobel

冬の低い空の下、出勤前の千春は息をきらす。 店に勤め始めて半年、ようやく指名客もついてきた。遅刻は許されない。 しかし、タクシーも捕まらず、秒針がチクタクと千春を急かす。

2011-03-03 12:36:56
「傷と絆」 @tweet_nobel

諦めて店に連絡を入れようと、ケータイを探すが、見当たらない。 焦りとともに、だらしない自分への苛立ちが募る。 バッグをあさりながら大股で歩く千春の視界が、突然大きくのけぞった。

2011-03-04 14:30:29
「傷と絆」 @tweet_nobel

諦めて店に連絡を入れようと、ケータイを探すが、見当たらない。 焦りとともに、だらしない自分への苛立ちが募る。 バッグをあさりながら大股で歩く千春の視界が、突然大きくのけぞった。

2011-03-04 14:30:29
「傷と絆」 @tweet_nobel

思えば、浅はかな考えだったのかもしれない。高校も中退、会社も辞めて実家を飛び出した。抜群のスタイルと美貌だけを資本に東京に来たが、この地を流れる時の速さに、流されまいと必死な自分が、時々情けなく思える。

2011-03-05 22:04:14
「傷と絆」 @tweet_nobel

映画監督を目指すと豪語し、有名大学を卒業するも就職はしなかった。 卒業からもうすぐ3年。まだその芽が開かない元気は、今日もなけなしの貯金を崩し、やるせなさに折れそうになる。

2011-03-05 22:08:15
「傷と絆」 @tweet_nobel

ATMから僅かな金を手に、また、明日への不安を胸に、コンビニを出ると元気に何かがぶつかった。 ふと目をあげると、華奢な色白の女性が倒れている。 「あ、すいません、大丈夫ですか?」元気は屈んで、女性に手を差し伸べた。

2011-03-06 19:36:53
「傷と絆」 @tweet_nobel

細くすらっと長い脚、しなやかな髪、そして整った顔立ち。 元気は一瞬その女性に見惚れた。 「ゴメンなさい、遅刻ギリギリなんで。」そう投げやりに言い残して、彼女は足早に去ろうとした。 「あの、送りましょうか?」とっさに出た一言だった。

2011-03-07 23:56:35
「傷と絆」 @tweet_nobel

「いや、あの、、急いでるんですよね?あ、ぶつかったお詫びにお送りします、これで飛ばすんで。」元気はそう言って女性に手を差し伸べながら、目の前に路駐したマーチに目をやった。

2011-03-08 13:43:07
「傷と絆」 @tweet_nobel

見え透いた下心だった。ただ、久々に訪れる胸の高鳴りを元気は感じた。夢を追いながらも、日々の生活には追われ、忘れかけていた感情が突き抜けるのを確かに感じた。

2011-03-09 01:15:49
「傷と絆」 @tweet_nobel

「え、ホントにお願いしていいですか?」 「ほら、急いで!」元気はそう言ってマーチのドアを開けた。 彼女が乗り込むと、元気は246を走り出した。「千春です。武田千春。」シートベルトを閉めつつ、助手席の彼女がはにかみながら名乗った。「あ、俺、元気。阿部元気、よろしく。」元気も応えた。

2011-03-09 11:31:44
「傷と絆」 @tweet_nobel

偶然が、あるいは法則が、僕らを引き合わせた。 めまぐるしく回る時の中で、同じ時を共有しはじめた瞬間だった。 二つの針は近づき、重なり、そして離れる。 僕たちも確かに近づいたのかもしれない。

2011-03-10 11:40:00
「傷と絆」 @tweet_nobel

ついさっきまで走っていたからか体温が上がった千春は、マフラーをはずしながら「あ、そこ左入って!」とナビゲートした。 千春のキレイな首筋にみとれそうになっていた元気は、その声に我に帰り、ハンドルをきった。左折のときも、間接視野で千春を横目に気になっていた。

2011-03-11 12:48:13
「傷と絆」 @tweet_nobel

過ぎ去る街並みを感じ、横目に千春を見ながら、元気は彼女の言う通りに車を進めた。 …こんなにカワイイこを助手席に乗せるなんて! と元気の心は弾んでいた。

2011-03-14 02:03:17
「傷と絆」 @tweet_nobel

「あ、ここです!間に合った!」元気が車を止めると、慌ててシートベルトを外し、「ホントにありがとう!またどこかで!」と言い残して、千春は走り去った。 元気は小さく消える千春を目で追った。「…ん?」千春の駆け込む先に、元気はどこか見覚えがある気がした。

2011-03-15 09:04:50
「傷と絆」 @tweet_nobel

「あ!いつかの!」いつだったか、社会人になった兄の貴史に連れて来てもらった店だった。広告代理店に勤める兄だけあって、かなり派手なコが揃った店だった印象が元気に蘇った。 「…ここで働いてるのかぁ…」元気は千春の一面を少し知った気がして、頬が緩んだ。

2011-03-16 19:54:48
「傷と絆」 @tweet_nobel

246の反対側車線を鼻歌混じりに家路についた。 レバーをパーキングに入れようとしたとき、助手席の端に、淡いピンクの筋が目に入った。元気は千春がマフラーを忘れて行ったことに気付いた。

2011-03-17 12:56:01
「傷と絆」 @tweet_nobel

澄み切った空には、一筋の飛行機雲が、長く尾を引いていた。パイロットが唯一見ることができない空を眺めて、僕は千春を思った。

2011-03-18 15:16:46
「傷と絆」 @tweet_nobel

元気は、千春の店が以前兄と行った店なのか、無性に気になって、久しぶりに貴史に連絡した。一連を話し、やはりあの時の店と分かり、妙に千春に親近感が湧いた。貴史の向こう側の喧騒が、元気の部屋の静けさに際立っていた。

2011-03-19 23:13:55
「傷と絆」 @tweet_nobel

翌日、置き忘れたマフラーを返そうと、千春を訪ねた。 店の前に来たとき、ちょうど千春が何人かの女性と一緒に、客を見送りに店先に出てきた。 きのうとは違う、際どいドレスに身を包んだ彼女に見惚れそうになった。 その時、千春と目が合った。

2011-03-21 11:40:20
「傷と絆」 @tweet_nobel

客を見送る千春のばっくりと開いた背中に元気は目を奪われていた。 刹那、千春は元気の方を振り返り、微笑みながら小走りで元気に近づいた。 まるで待合せにやってきた恋人のように。

2011-03-21 21:52:02