「傷と絆」 第一章

@tweet_novel より。自作じゃないのにまとめちゃって良かったのかしら・・・?
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「傷と絆」 @tweet_nobel

ふとひとひらの違和感が僕の中に舞った。 でも、そのとき僕はそれを気にも留めなかった。 ただ彼女が僕に気付いてくれたことが嬉しかった。 それだけだった。

2011-03-22 21:58:12
「傷と絆」 @tweet_nobel

客を見送り、背中を向くと、少し離れたところ元気がいた。ピンクのマフラーを持って。やっぱり、来てくれた。 やっぱり。自然に笑みがこぼれた。 きのう見た明日が、そこにはあった。

2011-03-23 13:24:06
「傷と絆」 @tweet_nobel

「ありがとー!わざわざ店まで来てくれたのね!」千春は元気に駆け寄った。 「寒いから早く届けた方がいいなかって。」元気は千春の笑顔に少し照れた。「ねぇ、このあと時間ある?」思ってもみなかった展開に元気は驚いた。

2011-03-24 19:01:31
「傷と絆」 @tweet_nobel

店から少し離れたカフェで千春のあがりを待つ元気は落ち着かない。2時間がすごく長く感じた。やがて千春が息を切らせながら現れ、2人は最近オープンした洒落たバーへ移動した。

2011-03-25 11:41:33
「傷と絆」 @tweet_nobel

鮮やかなカクテルとウーロン茶でグラスを交わし、2人はきのうの出逢いを祝した。元気は車で来たことを少し悔いた。

2011-03-25 22:15:20
「傷と絆」 @tweet_nobel

「あのときはホントに助かった!ありがとう!で、お礼したいと思ってたのに連絡先も聞いてなくて困ってたの。マフラー忘れて、却ってラッキーだったかも?」そう言う千春を、元気は「お互い様」と言ってまっすぐに微笑み返した

2011-03-26 12:54:16
「傷と絆」 @tweet_nobel

彼の笑みを見た私は、胸に安堵を感じた。でも同時に、そこに潜む狡猾さを確かに感じてもいた。

2011-03-26 22:13:05
「傷と絆」 @tweet_nobel

それから2人は他愛もない話に盛り上がった。学生時代の話、友人の話、きのうのテレビの話、それから、家族の話… 時間が過ぎ、2人は互いに、その距離が縮まるのを感じていた。 「元気はさ、今何やってるの?」唐突に千春が尋ねた。

2011-03-27 15:07:55
「傷と絆」 @tweet_nobel

僕は迷った。彼女が日々相手にする男たちと自分との間にある落差がよぎった。ただ、いつか手が届くだろう夢を誤魔化したくはなかった。

2011-03-28 14:40:08
「傷と絆」 @tweet_nobel

「…実は俺、映画作りたいんだ。映画監督目指してんだ。」元気は思い切って、夢を追いかけて、無職であるという今を伝えた。 「へぇ、そうなんだ!どんな映画作るの?」千春は食いついたように聞き返した。

2011-03-29 16:54:18
「傷と絆」 @tweet_nobel

千春は驚かなかった。僕は一瞬、虚をつかれた気がしたが、彼女の心に触れたことが嬉しかった。 そして、僕は自分の映画観や夢、今創っている映像について、堰を切ったように話しはじめた。彼女がじっとこちらを見て聞いてくれていることが、また僕には嬉しかった。

2011-03-30 13:38:53
「傷と絆」 @tweet_nobel

どれくらい話しただろう、話は盛り上がった。時計の針と共に酒も回り、彼女の頬はだいぶ紅く染まっていた。

2011-03-30 23:25:38
「傷と絆」 @tweet_nobel

「そろそろ行こうか」日付をとうにまたぎ、2人はバーを後にした。いつもと違い、気兼ねなく酒を楽しめたのだろう、千春の目はトロンとしていた。

2011-03-31 12:47:17
「傷と絆」 @tweet_nobel

車に乗った千春はぐっすり眠っていた。「おーい、家どっちだ?」千春は答えない。元気は困った顔をしながらも、数時間前の後悔はなかった。

2011-04-01 21:48:15
「傷と絆」 @tweet_nobel

元気の声は聞こえていた。彼の走らせる車が進む道も分かっていた。もしかすると、この先を流れる時も。そして、濁っていく私。

2011-04-02 22:57:15
「傷と絆」 @tweet_nobel

マーチはあるべき場所に停まった。果たしてあるべき場所だったのだろうか。少なくとも、あの時の僕たちには、あるべき場所だったのだろう。

2011-04-03 19:18:07
「傷と絆」 @tweet_nobel

元気は千春をおぶって階段を上がり、部屋のカギを開けた。出てきたままの散らかった部屋。 「ちゃんと片付けなきゃー」背中で千春がイタズラっぽく笑った。

2011-04-04 13:41:40
「傷と絆」 @tweet_nobel

「へー、こんなカメラ使ってるんだー?」千春に差し出す水を注ぐ元気の背中で、千春は機材に興味津々なようだ。「壊すなよ?」と不安がるも、内心元気の鼓動は早まっていた。

2011-04-05 10:14:17
「傷と絆」 @tweet_nobel

「よし、帰ってきたし、元気も一緒に飲もうー!」冷蔵庫を勝手に開けた千春は、缶ビールを2本取り出して、元気にその片方を手渡した。 2人は2度目の乾杯を交わした。

2011-04-05 21:57:02
「傷と絆」 @tweet_nobel

小さな部屋に所狭しと置かれたソファに2人は腰掛けて、安いビールを飲んだ。小さなソファは、バーのカウンター席の間隔を埋めていた。

2011-04-08 20:20:33
「傷と絆」 @tweet_nobel

夜も3時を回ったころ、元気もその頬を赤らめ、少し饒舌になってくる。「実はさ、前に一度だけ、千春の店行ったことあるんだよー」元気はふいに打ち明けた。

2011-04-10 10:16:26
「傷と絆」 @tweet_nobel

千春は驚いた。「うそ!そうなの?いつ頃?」「もう2年くらい前だよ。兄貴に連れられてね。」「なんだー、まだあたし東京に出てくる前かー」千春は口を尖らせながら、グイっと一口ビールを口に運んだ。

2011-04-11 21:59:43
「傷と絆」 @tweet_nobel

少しして、次のビールを取りに立ち上がろうと、元気はソファに手をついた。そこには千春の手があった。

2011-04-12 21:57:06
「傷と絆」 @tweet_nobel

彼女と目が合って、僕の胸は高鳴った。すると、細長く、華奢な彼女の指が僕の手を包んだ。 期待していた展開とは言え、僕の体を緊張が走った。

2011-04-13 15:54:11