悠翔まとめ

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「おやすみなさい」

美桜 @shootandsay

「今日のコンサート、すごく良かったと思わなかったかい?会場中が一体になって音楽を楽しんでくれていた。みんなのきらきらした笑顔で思わず僕の音もつられて弾んでしまったよ」 奏でる音と同じくらい瞳を煌めかせながら翔が今日のステージを振り返る。終演から大分経つのにまだ興奮しているようだ。

2018-08-03 22:02:58
美桜 @shootandsay

気持ちは分からなくなかったが、明日も朝から打ち合わせがある。いい加減に切り上げて寝かしつけないと、現場に着いたときにまだ寝ているなんて事態になりかねない。適当な相槌を打って布団を引き上げる。首までしっかり包み込んで上から軽く撫で叩くと、金色の瞳が不満そうにこちらを振り返った。

2018-08-03 22:02:58
美桜 @shootandsay

「悠人は、楽しくなかった?」 「まさか。アンタの音はいつだって聞いていて心地がいい。……だからこそ、今日はもう寝ろ。明日は午前中に打ち合わせが入っているだろ」 唇が突き出される。拗ねているようにも、キスをねだっているようにも見えるその仕草を無視して、電灯のリモコンに手を伸ばした。

2018-08-03 22:02:58
美桜 @shootandsay

「ほら。電気消すぞ」 「悠人は本当に真面目だなぁ」 俺が真面目じゃなかったら、誰がアンタの面倒を見るんだ。のどまで出かかった言葉を飲み込み明かりを消すと、もぞもぞと蠢いた体温がぴったりと体に寄り添ってきた。 くっついて眠るくらいは、まぁ仕方がないか。細い体を胸の中に抱き留める。

2018-08-03 22:02:59
美桜 @shootandsay

背中に腕を回すと軽やかに空気が震えた。猫のように四肢を擦り寄せて落ち着く場所を探している。そのうち定位置に落ち着いた翔は体を密着させてほぅと短く溜息を零した。 「毎日、あぁやって楽しい時間ばかりだったらいいのに」 「それをたくさん作るための下準備、だろ。ほら、いいからさっさと寝る」

2018-08-03 22:02:59
美桜 @shootandsay

抱え直して目を閉じると、腕の中で翔がこちらを伺う気配が伝わっていた。暗闇の中で手を取り指を絡める。それから、触れるだけのキスも。 「大丈夫だ。アンタの音は、いつだって人を、俺を、幸せにしてる。楽しいって気持ちが伝わってきているから、迷うな。躊躇うな」 そう告げると翔が強張りを解く。

2018-08-03 22:03:00
美桜 @shootandsay

外からの評価はどうしたって雑音が混じる。どれだけ強くたって、経験を積んだって、悪意や傷つける目的をもって吐かれた言葉は心を傷つける。 だから俺は、どんな翔の音でも受け入れると決めた。まっすぐな彼の音が心のままに羽ばたけるように、賞賛は惜しまないけれどウソもつかない。

2018-08-03 22:03:01
美桜 @shootandsay

それが、俺自身の決めたルールだった。翔もそれを分かっているから、安心して俺の言葉を聞ける、んだと思う。 弛緩した体が小さな欠伸を漏らした。手触りのいい髪を撫でると嬉しそうな気配ののちに規則正しい寝息が聞こえてくる。 明日は起こすのに一苦労しそうだ。目覚ましを少し早めにかけるか。

2018-08-03 22:03:02

無邪気

美桜 @shootandsay

そういえばいっつもお行儀よくベッドの上だね?って気がついた翔さんが、悠人さんがシャワーを浴びている最中のバスルームに侵入して「今日はここでしてみよう?」って誘う話?

2018-08-10 11:57:39
美桜 @shootandsay

「のぼせるからダメだ」「お湯の温度を下げたら大丈夫だと思うよ」「それはそれで風邪をひくだろう」「夏場だし大丈夫だと思うけどなぁ」「そうやって油断するのがアンタの悪いところだぞ」「っていうか悠人、のぼせたり風邪をひいたりするくらい時間をかけてくれるつもりだった?」

2018-08-10 12:01:32
美桜 @shootandsay

「今度ナース服とか着てみようか?」 「だからアンタはどこでそういうネタを仕入れてくるんだ……」 「これくらい普通だと思うけれど。悠人はそういうの、好きじゃない?」 「……(否定は出来ないけれど肯定も出来ずに葛藤)」

2018-08-12 20:45:09
美桜 @shootandsay

「だって17、18歳くらいって一番盛んだっていうだろう?」 「だからってなんで乗っかってるんだ!?」 「その方が手っ取り早いかなーって思って♡」 「手っ取り早いとかそういう……」 「悠人は、僕とじゃ、いや?」 「……!!(いやではないけれど肯定も出来ない)」 みたいな。

2018-08-12 20:54:54
美桜 @shootandsay

「悠人はこういうニットは、脱がせたい派?脱いでいるところが見たい派?」 「いやどっちでもないからちゃんと着ていてくれ」 「着ているのはいいんだけれど、下に何も着ていないからなんだかチクチクしてきたんだよね……」 「(ぎょっとした表情で慌てて脱がせる)」 「あ、やっぱり脱がせたい派か」

2018-08-12 21:23:05

遠距離

美桜 @shootandsay

「ごめん、聞こえなかった。もう一度言ってくれるかな?……えぇぇ、そんなことはしないよ。ちょっと電波の状況が悪かったみたいで。……ふふ、ありがとう。そうだね、僕も早く帰りたいよ。みんなと過ごす、あのにぎやかで楽しい時間は恋しいしね。……うん、ありがとう。それじゃあ、また」

2018-08-18 00:30:56
美桜 @shootandsay

おやすみと付け足して電話を切ってから、そういえば日本はもう起床時間だったことを思い出す。律儀に「おやすみ」と返してくれた悠人の優しさに顔を綻ばせて、翔はあてがわれたホテルのベッドに体を投げ出した。 普段ならとんぼ返りする海外遠征も恩師の退任祝いを兼ねた挨拶回りだとそうもいかない。

2018-08-18 00:30:56
美桜 @shootandsay

1週間にわたる長期滞在はまだようやく半分終わったばかりで、先の長さに思わず小さな溜息が零れた。 好きなだけ、好きなように、好きな仲間とヴァイオリンを弾くのは楽しい。楽しいけれど、自分は他にも心が躍る音楽を見つけてしまった。いまはそちらに集中していたいという気持ちのほうが強い。

2018-08-18 00:30:57
美桜 @shootandsay

なにより大切な人と離れているのが辛い。別々の寮で暮らしているころは気付くこともなかったけれど、一緒の寮で暮らすようになって、それこそ長いときは24時間ずっと共に過ごすことも珍しくなくなったせいで、別離の辛さを覚えてしまった。 持ったままだったスマホを操作してカメラロールを辿る。

2018-08-18 00:30:57
美桜 @shootandsay

以前は何気ない風景を写し取っただけだった悠人からの画像は、徐々にメンバーたちの姿が映るものへと変化していく。ダンスレッスン、事務所での打ち合わせ、共有ルームでの他愛ない語らい。そこに自分がいないという事実が寂しさを余計に駆り立てる。そう、寂しいのだ、と改めて翔は気づいた。

2018-08-18 00:30:57
美桜 @shootandsay

音楽に浸っていれば幸せだった。離れたところにいる友も、仲間も、音を合わせればそれだけで近くにいると感じられた。けれど、いまは。 「喧噪や温もりって、大事な要素だったんだな……」 つい口から零れた本音に口元が歪む。声に出してしまったことで、さらに寂しさが加速してしまった。

2018-08-18 00:30:57
美桜 @shootandsay

『会いたい』と素直に吐露してくれた悠人に、同じ言葉を返せなかったことがいまさら悔やまれる。 「明日はちゃんと言おう。……うん」 同じ後悔をしないためにそう自身に戒めて、気持ちを切り替えるため翔はスマホの電源を落とすと充電器に板を預け布団の中に潜り込んだ。

2018-08-18 00:30:58

SUITS

美桜 @shootandsay

きゅっとネクタイを喉元まで締め上げる。ふと視線を感じて振り返ると、ベッドに怠惰に寝ころんだ翔が興味津々といった表情でこちらを見上げていた。 「どうした?」 「うぅん。悠人がネクタイしているの、新鮮だなって思っただけだよ」 そういえば、プライベートではあまりスーツを着ない。

2018-08-18 19:01:48
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