＃ありもしないはなし　18.9.22～19.1.2まとめ

坂鴨禾火 @with_NEGI

夜道にお化けが出る。くるくる座頭と呼んでいる。たいして怖くはない。　#ありもしないはなし

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辻に蹲った人の形をしていて、まとっている目の粗い布きれから一本青白い手が出ている。手に掴まれたらずっとついてくる。あまり気味の良いものでもないので、目的地に着く前に追い払うことにしている。

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掴んでいる手がふわりと浮くようなところには、スジと呼ばれる何かの通りがあって、その流れにくるくる座頭を乗っけることができれば勝手に離れていく。離れていくときにくるくるとコマのように回るから、このお化けのことはくるくる座頭と言うのだ。

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鏡の家という家がある。これは一般的な呼称ではない。家と家の間にある、路地とも言えないような隙間を探検しまくった数人だけに通じる呼称だ。鏡の家があるのは表通りから一本入った住宅地で、裏側には工務店と雑居ビルがある。鏡の家の鏡は、この裏側から入ると見れる。　#ありもしないはなし

坂鴨禾火 @with_NEGI

隙間は普通の隙間よりも広いくらい、間に砂利が敷いてあって途中室外機が風を送っている。家の壁に、ちょうど子供の背の高さでも多少のぞけるような微妙に低い位置に、四角い鏡が張り付けてあるのだ。

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裏通りに抜ける隙間は、子供でも通り抜けられないほど狭くなっている。昔鏡のある辺りは鏡の家の洗面所か何かだったのかもしれないとも思ったが、表の工務店や雑居ビルより鏡の家の方が築浅のようだ。結局何のために貼ってあるのかはわからない。

坂鴨禾火 @with_NEGI

万国旗ソーダという炭酸飲料があった。よそで聞いたことがないからたぶんローカルなメーカーのものだったのだろう。特色としては当たりつきであることで、値段はほかの缶飲料と変わらないから、いくつか並んでいるときはそれをよく買っていた。　＃ありもしないはなし

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しかし当たりが出たことはなかったし、どこをどう見たらあたりかということも分からないのが謎だった。缶を開けたときに手品の如く万国旗が出てきてもう一本もらえるとか、そんなことを考えていた。

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誰かが万国旗ソーダを飲んだ後具合が悪くなり、嘔吐した事件があったのを境に見かけなくなった。伝聞では、そのぐわいの悪くなった人間の嘔吐物のなかに万国旗が混じっていたというがそれも定かではない。

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スーパーで夕食の買い物をしたら、おめでとうございますと言われて薬玉を割る様言われた。サッカー台の上に小振りの薬玉が釣ってある。紐を引くと誰かの証明写真が飛び散り、おめでとうと書かれた巻紙が垂れ、紐の先は石油まみれの拳骨のような形のものにつながっていた。　#ありもしないはなし

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サッカー台に転がった拳骨のようなものをよく眺めたいと思ったが、そんな暇はなくこの中から一人選んでくださいと中高年の男女が並んだ八つ切りの写真を並べたパネルが提示される。適当に指したら梨が一山貰えた。家に帰って剥いて食べた。梨は変わったところのない、少し大きな幸水だった。