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【ネタバレ有り】「来る」感想。怪獣映画としての心霊ホラー。

ホラー映画「来る」についての感想です。原作未読。ホラー演出の面から感じたことをまとめています。
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ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

それら人々に「隠されていたもの」が「ぼぎわんという暴威」によって容赦なく次々と引き剥かれ晒されてゆく様が、わかりやすいショッカー演出、グロテスク演出の裏でドロドロと渦巻いている。それは人間の闇の恐怖であり、先程の分類でいう社会恐怖にあてはまるものだ。

2019-01-10 02:05:07
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

しかしただそれだけでは単に「実は一番怖いのは人間でした」を地で行く、凡百のおばけに徹し切ることもできなかった駄ホラーにすぎない。「来る」のすごいところは、「人間は怖い」「それはそれとしておばけは輪をかけて怖い」ということを、とにかく有無を言わせぬ説得力で見せたことである。

2019-01-10 02:09:59
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

「人間の闇」「人間の怖さ」はすなわち「人間の弱さ」でもある。「ぼぎわん」はその弱さを嗅ぎつけてやって来る。「人間の怖さ」をあざ笑う何かとして、とてつもない台風のような破壊をもたらしにやって来る。その怖さはもう災害の怖さであり、人の力を結集して望む自然の暴威に近い。

2019-01-10 02:13:38
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

第三幕に入り最強の霊能力者が登場してからの展開はもはや単純な恐怖映画の枠から逸脱する。もうこれは「怪獣映画」なのである。しかし災害に形を与えた「怪獣というアイコン」は「来る」には登場しない。とてつもない災厄を撒き散らしながらやって来ながらもそれは不定形で不可視の存在なのだ

2019-01-10 02:18:31
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

ここに来て繰り返されるショッカー演出は、いわば怪獣の牙、ゴジラの放射能火炎と同じだとわかる。何か目に見えない、由来もなにも分からない、原因があるようでいてそれも定かではないモノが、目に見えない、意味の分からない、防ぐことの出来ない攻撃で霊能者たちを「地球防衛軍」を蹂躙していく。

2019-01-10 02:22:54
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

そして、唯一「それ」が見え正面から戦うことができる強大な力を持った最強の霊能力者ですら、ほんの僅かな弱さを突かれ危地に追い込まれる。しかしそれでもなお数億年間そびえ立ち続けている巨大な巌のように揺るぎなく立ち向かう。それは形をもった「脅威へ対する力」。いわば「ウルトラマン」だ。

2019-01-10 02:32:23
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

ショッカー系心霊ホラーという一貫したスタイルを最後まで保ちつつも、グロテスク演出と不安演出を駆使したオーソドックスな心霊ものから、徐々にサイコスリラー要素を加えてゆき、そして最終的には怪獣映画へとその軸足を昇華させていくこの構造はちょっと他に見当たらない。

2019-01-10 02:40:58
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

強いて言えば、映画ではなく小説ではあるが「二重螺旋の悪魔」の、前半のバイオホラー的展開から後半のスペクタクル展開の大胆な転換が近いかもしれない。しかしヒロイック要素やSF要素などを考えるとやはり心霊ホラーという前提が重要である「来る」とは別ものと言わざるを得ない。

2019-01-10 02:45:11
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

「来る」は個々の要素を見ると、実は特にホラー的に目新しい要素はない。それどころか、ショッカー演出やグロテスク演出の部分ではむしろ一、ニ世代古いと言ってもいい。だがつまらないかといえばそうではない。面白いし、ちゃんと怖い。

2019-01-10 02:55:50
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

その怖さ、面白さは、物語の軸足を次々とスライドさせていくことで、少ないパターンの恐怖演出をそのまま引っぱりつつも恐怖に襲われる者の視点を変えそれにともなって視聴者の視点も変えていき、そのため同じような刺激であっても常に別の心構えで晒されるというところにある。

2019-01-10 03:02:52
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

これは次々と質の違うショックを与えることで恐怖を持続させていく一般的なショッカー系ホラーとは真逆のアプローチであり、それでいて単に空気演出系ホラーとも社会演出系ホラーとも当てはめられない。因縁演出に関してもぼぎわんに関する因縁は断片的であり原因と結果として結びついてるとは言い難い

2019-01-10 03:06:37
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

もちろん6つの演出要素をそれぞれ内包しているのだが、作品全体を見てそのどれとも分類できない内容になっているのだ。例えば、黒沢清のCUREならば空気・社会演出系サイコホラーと言えるだろうし、清水崇の呪怨であればショッカー・モンスター演出系心霊ホラーだ。

2019-01-10 03:11:33
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

野村芳太郎の八つ墓村は推理ものだが、因縁・社会系ホラーと言えなくもないだろう。だが「来る」はショッカー系でありつつも必ずしもショッカー演出に依存せず、最後は怪獣の見えない怪獣映画と化す。それでいて最後まで心霊ホラーから逸脱することはせず、結果最終的に非常に複合的な満足感を得る。

2019-01-10 03:18:33
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

ただ単純な怖さでいえば圧倒的に女優霊の方が、Vシネ版呪怨の方が、CUREのほうが怖い。しかし「来る」は怖い、気持ち悪い、面白い、なんかすごい、かっこいい、傷跡だらけのパンクキャバ嬢霊媒いいよね…といった感覚がわっと襲ってくる。散漫ではなく、きちんとまとまった面白さとしてやってくるのだ

2019-01-10 03:24:17
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

ホラー映画という枠を破壊せずにこれを成し遂げたことは、原作がそうであるということもあるのだろうが、やはり監督の力によるものが大きいと思える。

2019-01-10 03:28:11
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

この中島哲也という監督の映画は恥ずかしながらこれまで見たことなかったのだが、「告白」「渇き」などのミステリー小説原作映画において人間の内面の闇を掘り下げた経験が「来る」にも生かされているのではないだろうか。

2019-01-10 03:30:13
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

監督自身はホラー映画で怖いと思ったことがほとんどないそうだが(これはホラー畑の清水崇も同様)、そういう一歩引いた目を持っているからこそ、あるいは純ホラー畑でないからこそ、こういった一言でくくれないホラーを撮れたのかもしれない。

2019-01-10 03:34:27
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

@R18udon 序盤のパリピ生活っぷりとか、あれ監督は完全に意図的に気持ち悪くキツく見えるように撮ってますよね…。純パリピな人たちとかは気にならないのかもだけど、少しでも日陰な部分を持ってる人からすると、あの奥さんみたいに針のむしろ感を味わうことに…ほんとあそこが一番ホラーでした。

2019-01-10 03:52:30
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

@emu2919 観てきました! そして長文感想も書きました。後半のスーパー除霊大戦ほんとすごいですよね。そしてあのぼぎわんのもはや怪獣としか言えない暴威っぷりもすごい。いわば霊能者軍団は地球防衛軍、琴子さんはウルトラマンといった感じで、心霊ホラーであり怪獣も出ないのに怪獣映画という凄まじさが…

2019-01-10 03:56:58
ラヂヲヘッド@二日目東ポ-44a革命政府広報室 @Radio_paranoia

@tm30651848 最初のバラエティのインチキ霊能者的映像から只者じゃない雰囲気の片目の婆さんとして登場、片腕切断で死亡かと思っていたら、最終決戦で隻眼隻腕の手負いの女行者として闘いを挑む凄まじい迫力っぷりがすごかったです。満身創痍ながら炎をバックにマンションを睨みつけるシーンに劇場で震えました。

2019-01-10 04:02:43