さっきおじいちゃん食べたばかりでしょう

кёкуさんの即興おとぎ話。
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きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが居ました。おじいさんは山へ芝刈に行きました。おばあさんは、こっそりおじいさんの後をつけました。おばあさんはもう長くない人生だと悟っていました。そこで大好きなおじいさんを食べることにしたのです

2011-05-02 23:22:06
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

おばあさんの体力ではおじいさんを仕留め、運ぶことが出来ませんでしたから、おばあさんはこの日のために筋力増強剤を飲んで鍛えていたのです。所詮老い先短い人生です。それよりおじいさんを煮こんで、醤油を少し差して美味しく頂きたかったのです

2011-05-02 23:24:01
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

おばあさんは悟られないようこっそりとおじいさんの後をつい行きました。おじいさんは芝を刈ろうとかがみました。今がチャンスです。おばあさんは包丁を取り出し、まずおじいさんの背中にぐいっと突き刺そうとしました

2011-05-02 23:26:44
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

しかしおじいさんは振り返りました!振り返り身を翻すとおばあさんの包丁を取りました。おじいさんは言いました「お前が私をくおうとしていることは知っていた。その異様に太くなった足腰を見て何かオカシイと思っていた」おじいさんは淡々と語りました

2011-05-02 23:28:24
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「私はね。昔からお前のことが大嫌いだったんだよ。いくらお前の体力でも、私には敵うまい」おじいさんとおばあさんは地主同志の政略結婚で結ばれました。おばあさんは懇切丁寧におじいさんに接してきて、愛情を持つようになっていたのですが、おじいさんはそうではなかったのでした

2011-05-02 23:33:40
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「つめが甘かったな。バアサン」おじいさんは獲物を狩るたかのような鋭い目で睨むと、おばあさんに包丁を振り落とそうとしました「おじいさん……、私たちの50年間は……、その程度の価値しか無かったんですか……」おばあさんが悄然として言葉を吐きます。おじいさんは腕を止めました

2011-05-02 23:36:41
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「……わからない。今となっては、時の重みなど……、無意味だ」おじいさんは意を決しました。包丁をおばあさんに振り落とします。「貴方に殺されるなら……それも本望ですよ」おばあさんは何故か、安心しきった顔でした。「私が悪いのですからね……。これも報いでしょう……」

2011-05-02 23:39:36
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「何故だ……」おじいさんは、そのまま崩れ落ち、膝を付きました。包丁が山野の芝地に刺さります「何故こんなわしに50年も付いてきたんだよおおおお、所帯持ったっていいことなかっただろうよおおおおおお」おじいさんは叫びました「事業に手を出してわしは失敗ばかりだった。なのに何故……」

2011-05-02 23:42:37
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「私にも分かりませんよ。でも、夫婦、って慣れみたいなところがあるじゃないですか」おばあさんが答えます「私もあなたを食べたいほどに愛してしまったんです。……あなたも私も老いましたが……。そういう情熱は未だお互いあるようですよ。でなければ命のやりとりなどしません」

2011-05-02 23:45:07
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「ああ、そうか……」おじいさんがいいました。「いいよ、一思いにやってくれ。こんな糞な人生たくさんだ」「いいえ、もういいんです。それより糞な人生今度こそ二人で楽しみません?」おばあさんが、おじいさんに手を差し伸べます「…」おじいさんは、黙って顔を伏せながらおばあさんの手を取りました

2011-05-02 23:47:36
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

おじいさんとおばあさんは、その包丁で山猪をとって帰りました。筋骨隆々になったおばあさんにはたやすいことでした。もう、ふたりとも馬鹿なことを考えないでしょう(了)

2011-05-02 23:48:49