2019年1月20日

サイバー戦争入門

いつかやってくる、未来
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うえだしたお @YT1093

2012年、軍事史研究家のウィリアム・マーレー(Williamson Murray)とピーター・マンスール(Peter R. Mansoor)は合名で「ハイブリッド戦争」なる論考を発表した ※ Williamson Murray, Peter R. Mansoor - Hybrid Warfare - Fighting Complex Opponents from the Ancient World to the Present

2019-01-19 16:12:03
うえだしたお @YT1093

マンスールによると、ハイブリッド戦争の定義とは以下の通りである ハイブリッド戦争とは、共通の政治目標を達成するため、国家およびに非国家の在来型手段と、非在来型手段(不正規・非対称=たとえばゲリラやテロリスト)を巻き込む戦争である、と。

2019-01-19 16:14:16
うえだしたお @YT1093

一方、米陸軍では2008年の陸軍野外教範にて「ハイブリッド型の脅威」についてこう言及している ハイブリッド型の脅威(hybrid threat)とは、非集権的でありながら我が方へと敵対するために結束し、従来は国軍に集約された戦力を有している正規軍、非正規軍、テロリスト、犯罪者集団の複合である、と

2019-01-19 16:18:10
うえだしたお @YT1093

しかるに、現代戦とは国家と国家、軍と軍、警察と警察、人民と人民とが戦場で対峙する会戦にとどまらぬ「非正規・非対称」の戦闘(あるいは、騒擾、混乱、恐怖)を包摂した、より広義における「warfare」なのである。

2019-01-19 16:20:25
うえだしたお @YT1093

ところで、こうした「ハイブリッド戦争」のなかでも、最も記憶に新しいものがロシアによるクリミア併合(2014年クリミア危機)である。簡単に事態を振り返ると、以下のようになる。

2019-01-19 16:22:03
うえだしたお @YT1093

ことのはじまりは2013年11月21日、ウクライナのヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領(当時)による、欧州連合協定の一時凍結という政治判断に対する市民の「怒り」であった。同日、首都キエフの独立広場を訪れた群衆は抗議の意思を表明、SNSを通じて参加者を募り「ユーロマイダン」の掛け声が生まれる。 pic.twitter.com/dXB38WXV9Q

2019-01-19 16:32:13
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うえだしたお @YT1093

端的にいえば、ヤヌコーヴィチは親露派であり、EUよりもロシアとの関係修復が急務である旨を国民に伝えようとしたのである。しかしながら、国民はこれをよしとせず抗議活動を展開する。同年2013年11月24日には広場に数万人の群衆が集い、その後、およそ三ヶ月に及ぶ抗議活動をスタートさせた。 pic.twitter.com/1SYi9uSO1u

2019-01-19 16:34:20
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うえだしたお @YT1093

その後、デモ隊の鎮圧に打って出た政権側による強制排除に伴い、市民や学生の側に数十名の負傷者を出してしまう。これによりデモ隊は過激化、「ユーロマイダン(欧州広場)」をスローガンとした「革命」に突入する。 pic.twitter.com/V4HOiZyQZa

2019-01-19 16:37:57
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うえだしたお @YT1093

その後も事態の収拾は混迷をきわめた。前大統領ら3人が連名で国民への連帯を表明、野党も国民と共闘を宣言するなど日増しに抗議活動が拡大の一途をたどるなか、ヤヌコーヴィチ政権はデモ規制法を施行、翌2014年の2月19日にはデモ隊と治安部隊が衝突、死者26名、負傷者600名以上の惨事となった。

2019-01-19 16:43:21
うえだしたお @YT1093

ヤヌコーヴィチは一時停戦を呼びかけ、野党がこれに応じたことから、2014年2月20日に停戦合意、ところが即日のうちに合意は破られ再度衝突を起こした結果、さらに死傷者を出してしまう。翌2月21日、ついに大統領自身が首都キエフを脱出、22日には治安部隊も撤収して大統領府は市民の前に陥落した。

2019-01-19 16:47:17
うえだしたお @YT1093

ところで、こうした政権の転覆劇に見覚えはないだろうか?ウクライナにおける2004年のオレンジ革命、中東における2010年のジャスミン革命に通ずるものがある。そして、この「市民と政府の対立」こそが、こうした混乱を奇貨として、ある勢力が対象地域へと「浸透」する格好の契機となるのである。

2019-01-19 16:51:08
うえだしたお @YT1093

ここまでに触れた「ユーロマイダン運動」は、ウクライナ危機における第一歩と呼べるものであった。この危機に際して、かねてよりウクライナの併合を狙ったロシアが動かないはずもなく、2014年3月には或る部隊がクリミアへの浸透工作をはじめる。西側諸国はこの部隊を little green men と名付けた。 pic.twitter.com/odlx3ic1YP

2019-01-19 16:54:28
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うえだしたお @YT1093

このあたりの俳味は、アメリカの一般家庭にありふれた、男の子向けのおもちゃから生まれている。 pic.twitter.com/9GE3yBP3Ke

2019-01-19 16:55:59
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うえだしたお @YT1093

ところで、今回のお題は「サイバー戦争」であった。もうちっと続くからここは読み飛ばしてくれて構わないのだが、いま触れているのは、新しい時代の戦争、サイバー戦争を含めたより大きな枠組みである「ハイブリッド戦争」についての小咄である。

2019-01-19 16:57:43
うえだしたお @YT1093

little green men の正体は、ロシアのPMSC(民間軍事会社)である。一般的にはイメージしにくい職業なので、ロシア系PMSCを写した何枚かを転載しておく。 pic.twitter.com/Ny91AQDLJN

2019-01-19 17:03:45
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うえだしたお @YT1093

これらの写真(2004年のイラク戦争)に写っているぽっちゃりさんと異なり、現代のPMSCはよりスマートで正規軍の特殊部隊に近い即応能力を備えている。なぜか。どの国の軍隊も戦争がなくて、正規軍では食えないからだよ。

2019-01-19 17:06:08
うえだしたお @YT1093

ところで、little green men たちがクリミアをまたたく間に制圧できた背景には、その日の朝から始まったサイバー攻撃への言及が不可欠である。もっとも詳細は検索すればいくらでも出てくるため、簡潔に触れる程度にとどめておく。

2019-01-19 17:08:05
うえだしたお @YT1093

クリミア侵攻当日、市民は目を失った。文字通りの視力ではなく、ネットワーク遮断により「情報」を奪われ、同時多発的に発生したサイバー攻撃はインフラへの信頼性を損ねることで社会不安を醸成、デマゴギーや風説による騒擾で市民生活が停止したところで little green men が主要施設を押さえたのだ。

2019-01-19 17:39:04
うえだしたお @YT1093

一方、軍事面では通信衛星に欺罔がかけられ通信は途絶、レーダーにもおなじく欺罔がかけられて、文字通り丸裸にされたところに、非正規部隊の急襲を受ける形でクリミアの実効支配権を奪われている。電光石火の名にふさわしい、不謹慎ながら見事きわまりない作戦だった。

2019-01-19 17:39:36
うえだしたお @YT1093

クリミア併合はユーロマイダン以降に訪れたウクライナ最大の「危機」であると同時に、自由主義諸国を震撼させる「新たなる局面」であった。 pic.twitter.com/Nm7BVdzyP8

2019-01-19 17:41:10
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うえだしたお @YT1093

ロシア軍が登場したついでに、ロシアならびに旧ソヴィエト、引いては悪名高きコミンテルンの「戦略」についても少し触れておきたい。

2019-01-19 17:41:34
うえだしたお @YT1093

国家の大戦略を、一般にグランド・ストラテジーと呼ぶ。コミンテルンの系譜を残した旧ソヴィエトから現代のロシアに至るまで、彼らの大戦略は以下の通りである。

2019-01-19 17:41:51
うえだしたお @YT1093

ロシアは旧支配国(連邦国家)を自国勢力圏の拡張部分と見なしており、諸国が東西選択(EUなど西側諸国と連携するのか、あるいは東側の首魁であるロシアと連携するのか)の如何によらず、親米路線を採用できないようにコントロールすることを「大戦略」としている。

2019-01-19 17:42:14
うえだしたお @YT1093

このため、ロシアはその勢力圏を維持するために、以下の戦略を是としてきた。

2019-01-19 17:42:49
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