クルセイド・ワラキア #1 後編

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆NINJA SLAYER PLUSより【クルセイド・ワラキア】#1 後編◆ pic.twitter.com/IqDjyjq6DS

2019-01-26 21:33:44
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◇これまでのあらすじ:聖なるヌンチャクなどが安置された岡山県奥地のドラゴン・ドージョーを、突如、ケイトー・ニンジャを含むリアルニンジャ三人組が襲った。うち一人はレッドドラゴンと名乗り、超常のカラテでユカノやサツバツナイトを退けると、宝物庫より聖なるヌンチャクを奪い去ったのである◇

2019-01-26 21:33:58
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◇これまでのあらすじ続き:一方その頃。東欧ネオワラキアの地では、カタナ・オブ・リバプール社、アダナス社、オムラ・エンパイアなどの暗黒メガコーポによる領土争いが激化。古きドラクル城は暗黒メガコーポ企業戦士たちの闘争の場と化していた。勝利するオムラ。だがそこへ、不意に〈夜〉が戻った◇

2019-01-26 21:36:55
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「そ、総員ZBR注入!遭遇戦闘に備えよ!」ハリマ主任は叫んだ。 部下のサトシとマチュダがこれに応える。「「ハイヨロコンデー!」」「オムラ!ダカラ!」「「オムラ!」」「「「イチバン!」」」「オムラ!ダカラ!」「「オムラ!」」「「「イチバン!」」」 1

2019-01-26 21:41:43
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パワード鎧からの薬剤自動注入。これと同時に、3人のオムラマンは素早い手拍子と指差しと独特のバンザイ姿勢を組み合わせたチャントを実行。一瞬にして、その愛社精神を鋼鉄のごとく鍛え上げた。さらに3人はアサルトライフルを構え、撤退行動を開始。……だが、遅かった。 2

2019-01-26 21:46:03
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上空を覆う暗雲の一部が、ゾワゾワと生き物めいて蠢いた。そして暴れ狂う竜巻めいた形状を取り、その先端をドラクル城へと伸ばしたのだ。「アッ!?」ハリマ主任は目を見開いた。それは蝙蝠の大群であった。次の瞬間、広い中庭、砕けたマリア像の横へと、おびただしい蝙蝠の群れが渦巻状に降下した。3

2019-01-26 21:49:34
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黒い吹雪の中に立っているかのように、ハリマ主任らは一瞬、視界を完全に塞がれた。それが晴れると同時に蝙蝠の竜巻は消え、マリア像の横に、赤鎧と黒いマントの男が立っていた。男は唸り、血のように赤い瞳でオムラ戦士たちを睨みつけた。 4

2019-01-26 21:52:45
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「い、いつの間に人が!?電子的ノイズですか!?」「違います!私にも見えています!」「アイエエエ!あの外見、もしかして!?」オムラ戦士たちは狼狽した。彼らは皆その男に見覚えがあった。だが直接の面識ではない。歴史書の1頁、あるいはTVや映画の安っぽいフィクション作品内においてである。5

2019-01-26 21:55:09
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即ち……今現在ここに実在してはならないもの。それはこのドラクル城の主。十五世紀にオスマントルコ軍と激戦を繰り広げ、敵兵の死体を串刺しにして砦の前に並べたという残虐無比なる男。五百年以上も前に死んだはずの、伝説的ウォーロード。そして後世のフィクションにおいて、吸血鬼と呼ばれた男。6

2019-01-26 21:58:54
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「……余を知っているのか、モータルよ。余の恐ろしさを知っていながらこの狼藉か、モータルよ……」それはワラキア公ブラド三世。またの名をブラド・ツェペシュ。「オバケ!?いや……本物の……吸血鬼!?」マチュダは声と手を震わせた。恐怖によってではなく、歴史の闇という名の畏怖によって。 7

2019-01-26 22:02:09
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「……余のワラキアを踏みにじるのみならず、宝物殿までも瀆すとは。傲慢にも程があるな、モータルよ……」ブラドが唸った。その射竦めるような睨みを、マチュダは直視した。「アーーー!?アアアアアアアーーーーー!」マチュダは突如発狂した。そして上長の命令より前に、銃の引き金を引いていた。8

2019-01-26 22:06:17
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BRATATATATA!重金属弾が浴びせられる!だがブラド・ツェペシュはその場から動こうともせず、血のように赤い目を見開き、モータルの武器を睨んだ。そして自らのカラテを構えた!「イイイヤアアアアアアーーーッ!」銃声すらも打ち消すほどのカラテシャウトが、古城の廃墟とカルパチア山脈に響き渡る!9

2019-01-26 22:10:00
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アサルトライフルの奏でる射出音のリズムに合わせ、キィン!キィン!キィン!という甲高い金属音が鳴り、そのたびにブラド・ツェペシュの前で赤熱した液化金属の火花が散った!狼狽するオムラ戦士たち!「アアアアアアアーーーーー!?」「撃てーッ!撃ちなさい!撃ち続けろーッ!」「ハ、ハイ!」10

2019-01-26 22:12:34
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BRATATATATATATATATATATA!オムラ戦士たちは百発近い弾丸を浴びせ続けた。だが……ブラド・ツェペシュはカラテシャウトを発しながら、平然と立ち続けている!「つ、通用しません!」「弾き返されているのか!?まさか!?」「アアアアアアーーーーーッ!カ、カラテだ……!ニンジャだ!」 11

2019-01-26 22:15:27
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然り。カラテである。サイバネアイですらもスキャニングが追いつかぬ速度で、ブラド・ツェペシュは巧みに両腕を動かしていた! 彼の手には、何らかの武器が握られている!そのあまりの速度とカラテ、そして残像によって、ブラド・ツェペシュの前の空間が歪み、波打っているかのように見えるのだ! 12

2019-01-26 22:17:46
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そして銃弾は……弾かれているのではない。凄まじいカラテ衝撃によって溶け、火花となって消し飛んでいたのだ……!「アイエエエエ……」ハリマ主任はサイバネアイによる解析映像を見ながら、絶句した。KLICK、KLICK、KLICK。同時に弾切れのクリック音が鳴った。大量の空薬莢が中庭に転がっていた。13

2019-01-26 22:20:11
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ブラド・ツェペシュは息を吐き、ザンシンを決めた。前方に突き出されたる両手の平。そこには鎖で留められた黒い双節棍……!「ヌ……ヌンチャク……!?」「間違いない!ヌンチャクだ!」「アイエエエエエエ!ニンジャ!?アイエーエエエエエエエエ!」オムラ戦士たちは立ち竦み、恐慌状態に陥った。14

2019-01-26 22:23:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブラド・ツェペシュの手にはニンジャの武器、ヌンチャクが握られていた!これが意味するところはただひとつ……ブラド・ツェペシュはニンジャなのだ!「ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」サトシはその場に両膝をつき、震え、苦しげに頭をおさえた!ZBRアドレナリンを超自然的恐怖が凌駕する! 15

2019-01-26 22:27:00
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「ブラド公が……ニンジャナンデ!?」サトシの思考が過剰ブーストし狂気が加速!もしや人類史の暗黒にはこれ以外にもニンジャが?奴らは人類の歴史を……闇から操っていた?いつから?何百年?あるいは何千年も前から……!?オムラ社の創業よりもさらに昔から……!?「アイエーエエエエエエ!」 16

2019-01-26 22:31:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「やめろサトシ=サン!深く考えるな!急性NRSで精神が崩壊するぞ!」「ブラド公が!ニンジャ!?ニンジャナンデアイエエエエエエ!」「アイイイイイイエエエエエエエエエ!」狂気とパニックが伝染増幅し、もはやマチュダとサトシは精神崩壊の寸前であった。その悲鳴を、ブラドの名乗りが遮った。 17

2019-01-26 22:36:53
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「ドーモ……」ヌンチャクを突き出したザンシン姿勢のまま、ブラドはアイサツを開始した。彼は奥歯を噛み締めた。だが荒々しい感情を抑えきれず、鋭い二本の犬歯が剥き出しになった。その盲目的な怒りを振り払うように、再度のザンシンを行い、彼は名乗った。「余は……レッドドラゴンなり……!」 18

2019-01-26 22:41:15
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アイサツを終えたレッドドラゴンは、己の城の中庭を闊歩し、侵略者らに近づいた。「「「オムラ!」」」オムラ社員たちはヤバレカバレとなり、プラズマカタナを抜刀した。レッドドラゴンはその強烈なプラズマ光に対し、一瞬、不快そうに眉根を寄せた。だが、それだけであった。 19

2019-01-26 22:43:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!?」「イヤーッ!」「アバーッ!」 パワード鎧を纏ったオムラ企業戦士は、目にも留まらぬヌンチャク捌きによって次々に打ち倒されていった。「イヤーッ!」「グワーッ!」ハリマ主任も弾き飛ばされ、テラスの手すりの横へと転がった。断崖絶壁が、目と鼻の先にあった。 20

2019-01-26 22:45:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

立ち上がろうとした時、レッドドラゴンの手が首を掴み、絞首刑めいて高く掲げた。鎧の重量など意に介さず、片手で軽々と。「ゴボーッ!」ハリマは喘ぎ、天を仰いだ。先程までの青空が幻か何かであったかのように、ワラキアの空は無数の蝙蝠が飛び交う暗黒の雲と、得体の知れぬ赤い霧に覆われていた。21

2019-01-26 22:48:33