裸マフラーアンソロジー

何かを受信した人たちの裸マフラーアンソロジーです。
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皆本 @minamoto_n

誰かお題を募集したら「裸マフラーでお願いします」とコメントすることに決めたので早く誰かお題を募集しないだろうか。

2011-05-03 01:01:08
@uma_tocha

「タオル地だから」「タオル地でもそれはどうか」「風呂上りだし」「いやでも」「水気も吸い取る」「バスタオル使いなよ」「う、売り切れっ」「買ってこい」「応急処置的な感じで」「なんでそんなに裸マフラーにこだわるのはぼくにはわからない」「新ジャンル」「そうなの?」「そんな説もある」

2011-05-03 01:09:15
@sb_yr

いい湯から上がるとバスタオルがなかった。脱衣所の戸を少しだけ開けると、居間のソファに座ってマンガを読む弟の姿が。「弟よ」「なんだよ」「タオル取って」「またかよ……入る前に持ってけって言っただろ」「声を荒げながらもきっと取ってくれる、そんな優しい弟だと姉は信じています」「棒読みか」

2011-05-03 01:48:45
@sb_yr

開けた戸の隙間から左腕を伸ばす。「くれくれ」「わかったから。それ以上出てくるな」「どうして?」「どうしてもだ」顔を背けてタオルを差し出す弟をニヤニヤしながら眺める。「早く取れよ」と責められたので仕方なく取る。戸を閉めると、向こう側でふう、と息をつくのが聞こえた。かわいいやつめ。

2011-05-03 01:51:27
@sb_yr

手にしたものに違和感を抱いたのはその後だった。「弟よ」「今度はなんだよ」「これはお前の趣味か?」「は?」がらりと戸を開けて上半身だけ外に出す。渡された長い布を首に回し、余った部分で両胸を隠して。「これ、マフラーじゃん」「わかったから出てくるな!」「どうして?」「どうしてもだ!」

2011-05-03 01:54:48
皆本 @minamoto_n

呼び鈴が鳴り、次いで私の名前と何かしらの商品を届けにきた旨を伝える声がドア越しに聞こえた。反射的に「はい」と返事をしてから、居留守を使えばよかったかなと思う。何故なら私はたった今、その呼び鈴の音で起こされ、二日酔いで鈍った頭をゆるゆると枕から持ち上げたところだったからだ。

2011-05-04 01:12:31
皆本 @minamoto_n

せっかく届けてもらったのに不埒なことを考えてごめんなさい、と反省の言葉を口に中でつぶやきながらドアのほうに向かおうとして、ふと自分の姿を見下ろし、らであることに気づいた。らである。裸である。衣へんに果実の果である。たわわである。今自然な流れで若干の嘘をつきましたごめんなさい。

2011-05-04 01:16:17
皆本 @minamoto_n

本来裸族ではないはずなのだが、おそらくシーツが洗い立てであったり綿毛布がおろしたてだったりしたためにこのような事態に陥っていると考えられた。良かれと思っておこなったことが、ときとして裏目に出ることもある、だがそれもまた人生、と私の心の中に住まう名もなき白髭の師匠が言った。

2011-05-04 01:17:59
皆本 @minamoto_n

辺りを見渡すが、散乱していると思われた服もない。鈍った頭を働かせどうにか思い出そうとする。……そう、酔って帰ってきたときの常として脱ぎ散らかし、しかしその様子が妙に気になって洗濯かごの中に放り込んだのだ。酔っぱらいがときとして無駄に律儀なのはわりとよく知られている生態である。

2011-05-04 01:20:00
皆本 @minamoto_n

呼び鈴が鳴ってから何秒経っただろう。また鳴らされる前にと、私はらのまま立ち上がり、服を求めて箪笥に向かった。らのまま箪笥の前でしゃがみ込み、一番上の小さい引出しを開けた。何故そうしたかとかというと思考が非常に単純化されていたからである。頭痛い。

2011-05-04 01:21:17
皆本 @minamoto_n

そしてそこにあった水色のマフラーが目に焼きついたのだった。鮮やかで爽やかな水色。私は一瞬で魅入られてしまった。そう、気がついたらもう首に巻きつけていたのだ。空、そして海の色だ。にもかかわらず温かい。私は素肌にこの水色のマフラーを巻きつけるために生まれてきたとさえ思う。

2011-05-04 01:23:46
皆本 @minamoto_n

もうこれでいいのかもしれない。このマフラーさえあれば私は生きていける。これから先、このマフラーのために生きていこう。温かで、そして爽やかなこのマフラーのために……!

2011-05-04 01:24:57
皆本 @minamoto_n

と、頭の片隅でちょっとミュージカル風味の私が手をくるんくるん翻しながら演じているのをしり目に、現実の私はその隣の引出しを開けてパンツを取り出した。よろよろと立ち上がり、バランスを崩しかけながら足を通す。視界の端でマフラーがゆらゆら揺れていた。

2011-05-04 01:26:30
皆本 @minamoto_n

マフラーとパンツを身に着けたころには私は若干疲れていた。もういいんじゃないかなと思う。私はもう充分に戦った。マフラーとパンツを身に着けた。もういいじゃないか。このままお届け物を受け取ってもきっとギリギリセーフだ。配達の人も見て見ぬふりをしてくれるはずだ。

2011-05-04 01:28:25
皆本 @minamoto_n

いいからさっさとちゃんと服を着ろ! ……だがしかし、私の中の鬼軍曹がそんな無情な命令を下すので、私は「サー、イエッサー」と疲れた体に鞭打ち、また箪笥の引出しに手を伸ばすのである。

2011-05-04 01:30:24
粟ヒエ @kaidann14

「裸マフラーが出たぞー!」森の奥深くに昔から伝わる恐ろしい言い伝えについて、ヘンリーは彼の友人達のようにバカにする事こそなかったが、祖母や両親が話をしてくれた言い伝えを鵜呑みに出来る程、先人に疑念を抱かない訳ではなかった。

2011-05-07 03:35:26
粟ヒエ @kaidann14

裸マフラーの正体とは、きっと子ども達を夜の森に近づけさせない為の、半ば訓話に近い作り話なのだろうと、この瞬間まで彼は考えていたし、また恐らく彼の両親もそのような意図を込め、口を酸っぱくして話したのだろう。

2011-05-07 03:35:33
粟ヒエ @kaidann14

それがヘンリーの好奇心を煽り、森の奥へと向かう契機となってしまったのは、寧ろ当然のことであると言えた。誰かを責められるようなものではなかった。

2011-05-07 03:35:40
粟ヒエ @kaidann14

森はどこまでも深く暗く、全てを覆い隠してしまいそうな黒だった。その奥からずるり、ずるりと引き摺るような音が聴こえた時、ヘンリーは一目散に村へ逃げるべきだった。

2011-05-07 03:35:47
粟ヒエ @kaidann14

しかし彼はそれをしなかった、出来なかったと言うべきか、本能に勝る好奇心は往々にして残酷な結果を生むこととなる。彼はそれきり、行方知れずとなった。

2011-05-07 03:40:55
粟ヒエ @kaidann14

言い伝えはこうだ。「夜中、森の奥からずるりずるりと音がしても、其方に呼ばれちゃいけないよ。お前の代わりが村に遺され、お前は森になっちまう。」

2011-05-07 03:41:05
粟ヒエ @kaidann14

翌朝、村人は森の入口にあるミカンの木の幹に、一枚のマフラーに包まれた赤ん坊が寝息を立てているのを発見することになる。赤ん坊は、ヘンリーの幼い頃の姿に良く似ていたという。

2011-05-07 03:41:25
@sasaboushi

レジ打ち、品出し、および現在ファミチキがお得である旨の宣言をする仕事に疲れて闇夜に自転車をこいで居間に帰ると姉が裸マフラーしていたのでルカニを唱えたところ裸毛糸玉になり、三つの毛糸玉をうまく支えられなかった姉はそれらを取り落としころころと転がる赤の毛糸玉を追って廊下の闇に消えた。

2011-05-07 21:28:01
@sasaboushi

裸マフラー書きましたよ! これで姉を解放してくれるんでしょうね!?

2011-05-07 21:36:15