少前ログまとめ 2018年5月投稿分

orphe @orphechin

春田の額にくっきりと血管が浮かび脈打つ。 自分へのダメージ以上に、カフェへの破壊行為のほうが効いているようだ。無論、それこそがAK12の目論見なのであろう。コーヒーミルが吹き飛び硝煙に混ざって貴重な豆の香りが空間を満たす。 「IDWのクソから取り出した高級品が!!!」 #少前ログ

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「なんで猫のうんこなんか…」少年の呟きにWAは「ジャコウネコのうんちから取り出した豆はコピルアクっていってね。最高級品なのよ。もっともあの店主はそれの悪質な模造品を高値で売りさばく予定だったらしいけど」春田商事のビジネス内容たるや推して知るべし。少年は呆れた。#少前ログ

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「このバカ騒ぎはどうしたことだ!」扉が蹴り破られ、9A91のダミーリンク部隊及び指揮官が飛び込む。銃口はAK12及び春田の両方に向けられている。指揮官は歩みを早め、２名の間に立つ。銃声が止む。指揮官が口を開く。「何やってんだ!?」 「どけよ!」春田が中指を立てる。 #少前ログ

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「黙れ!もう一回箱に閉じ込めて日本に送りつけてやるぞ。AK12!」指揮官が白髪の戦術人形に向き直る。すでに彼女の目は閉じられている。「説明しろ」「所有物に手を出されました。財産権の侵害に対し正当な報復を行ったまでです」「ちょっと味見すんのは料理の基本ですわよ」と春田。 #少前ログ

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「犬でさえ一度教え込んだことはそう忘れないものです。犬以下のCPUしか積めない戦術人形なら、いっそゴミに出されてはいかがですか指揮官」AK12が僅かに目を開き、春田を睨む。 「おお言いますねえスカシ顔のペドフィリア風情がよ!!ベッドでもそんなスカしてんの?嘘だろ?」#少前ログ

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「二人とも黙れ」指揮官が制する。「鉄血やロシア軍を殺す前にお前らが殺し合ってどうする。ぼくに何のメリットがある?敵を殺す前に子供巡ってカマ掘り合うようなガラクタを雇う意味はあるのかよ?え?恥を知れ」そして指揮官は少年の所に歩み寄る。 「決めた。君はうちで働け」 #少前ログ

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「いや、指揮官?それはおかしいのでは」AK12に露骨に困惑の表情が浮かぶ。指揮官はAK12に向き合い、破壊されたカフェの光景を指差しつつ、「おかしくない。全然おかしくない。ティーンの子供にこんな光景を見せるような連中のところにこの子を預けておけない」 #少前ログ

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「飼い犬くんをどうしようが私の勝手でしょう。それにこれは彼を守ろうとしての行動です」 「こんなやり方が長続きするとでも?いずれ巻き添えで死ぬぞ。それはあなたにとっても良くないはずだ。だからぼくが預かる。危険な所には行かせないしお前らのバカ騒ぎからも遠ざける」#少前ログ

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「おう!あんたホモだったんですの指揮官?」「春田、9A91に蜂の巣にされて鉄血犬のエサにされたくなきゃ黙ってろ」指揮官は少年の手を取り、引き起こす。「君を当社の現地採用社員として登録しておく。給料は出る。専用口座も用意するから、働いて得たカネは自由に使うといい」#少前ログ

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「本当、ですか」「ああ」指揮官は少年の手を強く握る。「あの人に負けたくないっていったろ。そのチャンスを用意してやる。うちの仕事は多岐に渡る、必ずその中で君が強みを出せる場所が見つかるはずだ」 AK12が苛立つ。「私は認めておりませんよ、そんなこと」#少前ログ

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「まあそうだね。でもこれはあなたにとっても良いことだと思うけど?」「どのように?」 指揮官は笑う。「主に好奇心の面で。あなたは変化が何よりの好物なんだろ。彼が今までにない仕事をこなし、そこで鍛え上げられて変わっていくのは興味深くはないか」AK12は言い淀み、足を鳴らす。#少前ログ

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指揮官は椅子に座る。「思うにあなたの観察行為にはひとつ大きな欠点がある。観察者が観察対象に干渉し過ぎる」「それは…」「楽しいことかもしれないけど、それじゃ結果がある程度見えてしまうだろ。あなたは好奇心を満たしたい一方で、自分でその機会を減殺してしまってる」#少前ログ

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「だからこそ、彼にとってはあなたに干渉されない時間と、訓練の機会が必要だ。変化を促す訓練のね。どうしても認めないというのであれば仕方ないさ。手元に置いて、観察を続ければいい。でもそれはあなたが本当に望む変化の形かな?」 AK12は憮然とした表情のまま、椅子に座る。 #少前ログ

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「あの汚い生き物に近づけること。前線に立たせること。この２点だけは絶対に認めません」 「当然それはしない」 「私の身の回りの世話、及び学業。ここも支障がないように」 「約束する」 「では」AK12に微笑が戻る。「ご自由に。多少の放し飼いは認めてあげます」#少前ログ

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「私のどこが汚いっていうんですか。汚れのひとつもありませんよほれ」そう言って自らのスカートに手をかける春田の額にゼロ距離で9A91の銃口が突きつけられる。「お静かに」「あっはい…」 AK12は立ち上がり、少年の脇を通りすぎる。 「センセ…」「期待していますよ」 #少前ログ

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彼の頭を軽く撫で、白髪の戦術人形は廃墟のカフェを去っていった。 #少前ログ

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--次の日。 ぼくと少年は模型の立ち並ぶ、一見奇妙な部屋にいた。 ヨーロッパの情景を模したジオラマは、軍事施設には似つかわしくないもので、少年の顔には明らかに当惑の色が浮かんでいた。 「色々考えたんだけどね、彼女からの条件を満たしつつ働ける場所はここかなと」 #少前ログ

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「模型の掃除や手入れ、ですか?掃除は苦手じゃないですけど…」 「もう少し手間のかかるものの手入れかな。おいで」ぼくは軽く口笛を鳴らす。すると、古城の模型の背後から円盤状の物体が飛来する。「うわ」少年にとっては初めて見るものらしく、好奇心と当惑の混ざった目でそれを見る。#少前ログ

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円盤状の物体が彼の回りを素早く飛び回り、からかうように彼の視線を迷わせる。「良い兆候だ」ぼくは呟き、「ほら、新人さんにご挨拶しな」円盤のひとつを軽く小突く。小突かれた円盤は、小刻みに左右に揺れて、そうして少年の目の前にぴたりとつくと、上部からスクリーンを出す。#少前ログ

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飛行機に乗った小人の映像が写し出され、小人が少年に向かって頭を下げる。「あ、挨拶…?ども、よろしく」少年も律儀にスクリーン上の小人に頭を下げる。「指揮官、これは」「妖精だよ」小人を映す円盤が、ふわふわと天井部分を飛び回る。 「戦術人形の支援機のことさ」 #少前ログ

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「これを、操作するんですか?」 「彼女らは基本的に自律行動が可能だ。手動も出来るが複雑だし、最初のうちは無理だろう。君にはこの妖精たちのメンテナンスを行ってもらう」 「は、はい…」少年の目が、天井をみたまま泳ぐ。 #少前ログ

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「彼女たちの生活の場であるこの模型の整備、それと彼女たちをヒトに慣れさせる訓練。君の仕事はこの二つになるだろう。妖精は基本的に手がかからない奴等ではあるが、より効率的に動いてもらうには、人間の指示に従うようにならないといけない。こちらの戦術意図を理解させるんだ」#少前ログ

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「戦術……ですか。では、そちらも頑張って覚えます」少年はぼくを見て言う。ぼくは苦笑する。「いや、そこまでしてもらわなくてもいい。なんといったらいいのか…やってもらいたいのは感情的な部分の調教かな。こいつらは小難しいことを理解できるAIは搭載している。けど気まぐれでね」#少前ログ

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「人間に慣れていないと、こいつらは自分の考えだけで動く。最低限、作戦遂行にあたっての動きはしてくれるが、こちらや人形たちの意図とは微妙にズレたりもする。だから人間に慣れさせる。そうすることでAIの学習の指向性をこちらに向けさせ、他者の意図を前提とした支援を考案させる」#少前ログ

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「気むずかしいけど頭のいいやつに、味方になってもらう感じですか」少年が腕を組んで頭を捻る。「まあそんなとこだ。一度気に入ってもらえれば、難しいことは全部あっちがやってくれる」 「で、俺はどうすれば」 「定期的にここに顔を出して、コミュニケーションを取り合うのさ」 #少前ログ